氷河の探検

旅行会社が企画するツアーコースには殆ど含まれることがない氷河の末端現場を訪れ探検して参りました。      通常の観光コースではユングフラウヨッホで氷河の中をくり抜いて作られた「氷の宮殿」の見学や車窓からの氷河の展望を体験出来ますが、実際に氷河の末端に足を運んでの体験は格別のものでした。           その時に撮った写真の一部をご紹介します。

    日本国内では見ることが出来ない氷河ですが、スイスの屋根といわれるベルナー・オーバーランドの山々には多くの氷河が散在しており、アルプスの写真でご紹介しましたアレッチ氷河もその一つです。 雪渓のようにも見えますが表面から数十センチ下は深さ1000mにも及ぶ高密度の氷の層から出来ているのです。

 ユングフラウへの登山鉄道は、アイガー北壁の中をくり抜いてトンネルが掘られ、その中程にアイガーヴァント駅があります。地中の駅ですがアイガー北壁に2カ所の窓が開けられ、ガラス越しに外の景色が展望出来るようになっています。 

 窓の近くに崩落した氷河の破片が累々と積み重なり、その割れ目が青色に輝いて見えるのが印象的でした。

 登山のメッカ、グリンデルワルトの町から急な坂道をバスで30分程登るとオーバラーグレッチャー村に着き、バスを降りるとグリンデルワルト氷河が目前に見えます。19世紀頃には氷河の末端がグリンデルワルト近くまで延びていたが今では1300m以上も後退して現在位置になったとのことでした。

 バスを降りて20分程歩いた所に氷河への登口があり、そこから岩肌に設けられた木製の階段を伝わって氷河の末端を目指して登りました。

 この地点からは氷河は岩場の向こう側にあって見ることは出来ません。

 木製の階段は延々と続き、写真では緩やかなようにも見えますが実際は可成りの急勾配で、場所によっては直立のハシゴになっている所もありました。

 高所恐怖症の私にとっては厳しい道程で、周りを見ずにただひたすら足下だけを見つめて歩きました。

 階段の幅は数十センチと狭く下山者とすれ違うのがやっとの状態です。

 途中、余りの恐怖心に登るのを諦めて、後ろ向きの姿で震えながら下りてくる何組かの老夫婦にも出逢いました。

 木製階段を伝って岩場を登り詰めた所にやや平坦な地面が広がり、その向こうに見上げるばかりの氷河の末端が押し寄せてきておりました。

 幾千年もの長い歳月をかけて山上から徐々に下り降りてきた氷の最後の姿を目の当たりし感無量でした。

 氷河の末端に掘られた観光用トンネルを通じ氷河の内部へ入りました。入口付近の氷にはには大小の割れ目が見られ、妖しい青色の色彩を放っていました。

 全長数十メートルのトンネルの中には氷の彫刻を展示した部屋も設けられていましたが、何よりも印象的だったのは壁面に刻まれた細かな年輪模様が長い歳月の地球の歴史を物語っているように思え感動しました。

 氷河の氷は光の透過率が良いためかトンネル内部は意外に明るいのに驚きました。トンネルの壁面は入口付近が淡い空色で、奥に進むにつれて濃いコバルトブルーに変化していくのが極めて幻想的でありました。

 この写真はトンネルの奥の方から入口に向けて壁面を撮影したものですが、ほぼ忠実に色彩が表現されているように思います。

 氷河末端付近の岩石にに刻まれた氷河の傷跡を見て自然の偉大さに畏敬の念を抱きました。

 この場所は近年まで氷河の底にあったと思いますが、年に僅か数センチという緩やかな氷河の移動によって、硬い安山岩の表面に悪魔の爪痕のような傷跡が残されているのを見て自然の力の偉大さを実感しました。

                                         

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