KENNY BARRON
ソロ・アルバムだけで5枚も出しているのだから、その実力のほどは推して知るべし
"LIVE AT MAYBECK RECITAL HALL, VOLUME TEN"
KENNY BARRON(p)
1990年12月 ライヴ録音 (CONCORD JAZZ : CCD-4466)
2013年のベスト・アルバムにBARRONのソロ・アルバム"MY FUNNY VALENTINE"(JAZZ批評 836.)とデュオ・アルバムの"PARIS 2012"(JAZZ批評 837.)を選んだ。調べてみると、それ以前に3枚のソロ・アルバムを出していることが分かった。そのうちの現在入手できる2枚を注文した。そのうちの1枚がこのアルバム。
1990年から1991年にかけてBARRONは数多くのアルバムをリリースしている。STAN GETZとの傑作デュオ・アルバム"PEOPLE TIME"(JAZZ批評 231.)や人気トリオ・アルバム"THE MOMENT"(JAZZ批評 26.)などもこの時期のアルバムだ。
本アルバムは同じ時期のソロによるライヴ録音盤。
@"I'M GETTING SENTIMENTAL OVER YOU" こういう歌モノを弾かせるとBARRONのピアノは絶品だ。イン・テンポになると軽妙洒脱。奇を衒うわけでなし、気負いがあるわけもない。こういうのはBARRON節と言ってもいいかもしれない。
A"WITCHCRAFT" こちらも軽快なタッチ。ミディアム・テンポで実に心地よい。
B"BUD-LIKE" この曲はBARRONのオリジナル。左手は定型のパターンを連続させながら右手でアドリブをとっていく。ちょっとハードで無機質な感じの曲で、BARRONらしい潤いのある歌心を発揮しているとは言い難い。この曲は余分だったかな?
C"SPRING IS HERE" CHARLIE HADENとのデュオ"NIGHT AND THE CITY"(JAZZ批評 16.)でも演奏されているRICHARD RODGERSの曲。テンションが徐々に高まっていくその様が良い。
D"WELL YOU NEEDN'T" T. MONKの曲。BARRONはMONKがお好きなようで、"BLUE MONK"や"SHUFFLE BOIL"など、結構MONKの曲を演奏している。少し剽軽で癖のあるテーマがお好きかな?
E"SKYLARK" 大好きな曲の一つ。最初はフリー・テンポのテーマで始まり、2コーラス目からイン・テンポに。しかし、こういう歌モノ弾かせると抜群に上手い!右手と左手の役割分担が見事!このアルバムの白眉。
F"AND THEN AGAIN" BARRONのオリジナル・ブルース。アップ・テンポのピアノ・ソロであっても運指に乱れはない。キレてる!
G"SUNSHOWER" これもオリジナル。いい曲だ。BARRONは名ピアニストであると同時に名コンポーザーでもある。最後を締めるに相応しい好演だ。
いぶし銀のピアニスト・KENNY BARRONは大好きなピアニストのひとり。
ソロ・アルバムだけで5枚も出しているのだから、その実力のほどは推して知るべし。1枚のCDをピアノ一人で埋め尽くすというのは相当の実力が必要だ。世に名ジャズ・ピアニストと呼ばれるプレイヤーは必ず1枚以上の傑作ソロ・アルバムを持っているものだ。
BILL EVANS然り、KEITH JARRETTE然り、CHICK COREA、BRAD MEHLDAU、LUIGI MARTINALE、YARON
HERMANなどなど・・・。
ソロは誤魔化しが効かないので「素」の実力がそのまま表れてしまう。そういう意味では、傑作ソロ・アルバムを持っているということは超一流の証とも言えるだろう。
本アルバムも素晴らしい出来であるが、先日、紹介した"MY FUNNY VALENTINE"(JAZZ批評 836.)のしっとり感と比較すると星半分減らさざるを得なかった。でも、良いアルバムであることに間違いはない。 (2013.12.27)
試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=YA51U7ceSKg
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