MICHEL PETRUCCIANI
好き放題、やりたい放題に変幻自在の演奏ぶりを見せてくれた"CARAVAN"
"SOLO LIVE"
MICHEL PETRUCCIANI(p)
1997年2月 ライヴ録音 (DREYFUS JAZZ : VACR-2033)
ウィキペディアによると、PETRUCCIANIは生まれながらにして骨形成不全症という病を患っていたという。成長期になっても身長は1ⅿほどだったが、腕は標準的なサイズであったのでピアノを弾くことが出来たとある。
驚異的なテクニックは標準的な腕の長さがあればこその産物であった。足はペダルに届かなかったのでペダル踏み機を使用していたという。PETRUCCIANIは1999年に未だ36歳という若さで他界した。
PETRUCCIANIのアルバムを最初にゲットしたのは、このアルバムと同じ1997年録音でブルーノート東京でのライヴ盤「参」(JAZZ批評 110.)だった。しかし、このライヴ盤の演奏にエレキ・ベースが使用されており、肩透かしを喰らった格好だ。そんな印象もあって少し縁遠い存在だった。
今回、FB友達の勧めもあって、ピアノ・ソロ・アルバムをゲットしてみた。
②と⑩を除く9曲がオリジナル。なかなかのメロディ・メーカーでもある。
①"LOOKING UP" みんなに愛されたPETRUCCIANIの人柄を感じさせるカラッと明るい曲想だ。後に紹介するCHRISTIAN JACOBのアルバムでも最初に挿入されている。オープニングに相応しい曲だ。
②"BESAME MUCHO" 「もっとキスをして」という意味のスペイン語だという。この曲の名演にGONZALO RUBALCABAの"THE BLESSING"(JAZZ批評 99.)を挙げたいと思う。併せて聴いてほしいアルバムだ。
③"RACHID" 美しいバラード。牧歌的な雰囲気も持ち合わせて耳あたりの良い佳曲。イン・テンポになってからも軽快だ。
④"CHLOE MEETS GERSHWIN"
⑤"HOME" この曲も耳にすることが多い佳曲。
⑥"BRAZILLIAN LIKE" PETRUCCIANIはブラジリアン・テイストがお好きなようで。"BRAZIRIAN SUITE"という曲もあるし・・・。
⑦"LITTLE PIECE IN C FOR U" シングル・トーンのピアノ・タッチがきれい!そして、スイングしている。ホント、ベースもドラムスも必要ないわ!
後藤浩二も"HOPE"(JAZZ批評 465.)の中で取り上げている。こちらも素晴らしいアルバムなので機会があれば是非!
⑧"ROMANTIC BUT NOT BLUE"
⑨"TRILOGY IN BLOIS" フランス中央部にあるブロワという都市に因んだ三部作で、副題として"MORNING SUN, NOON SUN, NIGHT SUN IN BLOIS"とある。
⑩"CARAVAN" 何と言ってもこの曲でしょう!イントロから凄い。一体、何が始まるのかと思うほど。好き放題、やりたい放題に変幻自在の演奏ぶりを見せてくれた。溢れんばかりの躍動感が素晴らしい!拍手鳴りやまず!
⑪"SHE DID IT AGAIN / TAKE THE A TRAIN / SHE DID IT AGAIN" 途中から、"TAKE THE A TRAIN"にシフトするが、これが超特急の列車みたいにバリバリ突っ走る。
余談だが、2005年にCHRISTIAN JACOBがPETRUCCIANIへのトリビュート・アルバム"CONTRADICTIONS"(JAZZ批評 360.)をリリースしているが、これも素晴らしいアルバムで、機会があれば、併せて聴いてもらいたいアルバムでもある。
翻って、本アルバムであるが、美しさを湛えたオリジナルのテーマ、珠のようにコロコロと転がるピアノ・タッチ、溢れる躍動感、どれをとっても1級品だ。鬼籍に入ったPETRUCCIANIに新たなアルバムのリリースを期待出来ないのが残念。しかし、本アルバムを始め、まだまだ聴いていないアルバムが山とあるので楽しみは尽きない。
PETRUCCIANIの才能の一つとしてピアノの上手さと同時に、作曲のセンスの良さを挙げたい。本アルバムはそれらを余すところなく伝えたアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
因みに、本アルバムは「manaの厳選"PIANO & α"」の丁度、300枚目に当たる。ここに来るまで13年を要した。永いようで短い13年であった。 (2014.01.01)
試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=agrtxGi0Iy0
http://www.youtube.com/watch?v=zriqhOhfR7w
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