独断的JAZZ批評 835.

AARON PARKS
無欲恬淡な姿がそこにはある
"ARBORESCENCE"
AARON PARKS(p)
2011年11月 スタジオ録音 (ECM 2338 B0019232-02)


AARON PARKSのピアノ・ソロ。しかも、レコード会社がECMだ。例によって、ジャケットは暗く沈んだモノトーンだ。
"ARBORESCENCE"をネット辞書で引いていみると「亜喬木」とか「樹枝状(グラフ理論)」と出てくるが、何だかよく分からない。
PARKSのCDは2000年録音の"FAIRST ROMANCE"(JAZZ批評 824.)を紹介しているが、素晴らしい演奏内容で、当時、未だ17歳という若さだった。最近ではJOSHUA REDMANを中心とした"JAMES FARM"(JAZZ批評 722.)に参加しているが、どちらかというと温度感の低い演奏ぶりだった。

@"ASLEEP IN THE FOREST" 水滴が零れる如くの静謐な音楽。ジャンルで括るつもりはないが、ちょっと環境音楽のようでもある。
A"TOWARD AWAKENING" 
奥行きのある音と言ったらいいのだろうか?深い音だ。録音の素晴らしさを生かすために是非、大音量で聴きたいものだ。BRAD MEHLDAU(JAZZ批評 278. 219. 684.)にも通じる音宇宙を想起させる。
B"PAST PRESENCE" 
C"ELSEWHERE" 
美しく、儚さをも感じさせるが、一筋の明るさも・・・。
D"IN PURSUIT" 
僕はこのトラックが一番好きだ。美しいアルペジオに絡む重低音の楔。後半にかけてブロック・コードによって積み重なっていく激しさと静寂への回帰。
E"SQUIRRELS" 
「リス」という意味らしい。そういえば、チョコチョコと動き回っているような仕草を感じる。
F"BRANCHINGS" 
G"RIVER WAYS" 
H"A CURIOUS BLOOM" 
「珍しい花」なのか、「不思議な花」なのか、「変な花」なのか?
I"REVERIE" 
幻想曲?
J"HOMESTEAD"
 

名ジャズ・ピアニストと呼ばれるプレイヤーに共通しているのは傑作ソロ・アルバムを有していることだ。BILL EVANS然り、KEITH JARRETT然り、CHICK COREA然り、BRAD MEHLDAU然り、大石学然り。
将来、AARON PARKSもそういう一人に加わるのではないかと推測している。本アルバムも潜在能力に優れたピアニストの記録として記憶に留まるに違いない。
ジャズ、クラシック、環境音楽などのジャンルに括れない音楽でもある。全11曲、全てPARKSのオリジナル。個々のトラックが「森」から始まっていくつもに枝分かれしていくかの如し。だから"ARBORESCENCE"というタイトルが付けられたのかもしれない。有機的に結びついた各トラックが一つの樹木を形成しているかのようである。
ひとりのピアニストがいて、目の前にピアノという楽器があり、それを思いのままに弾いてみた・・・無欲恬淡な姿がそこにはある。
ただし、多少、聴く人を選ぶと思う。
実は、本アルバムを5つ星にするか4.5星にするか迷ったが、迷ったときは辛い点数を付けることにしているので4.5星となった。未だ若いし、これを上回るアルバムを直に提供してくれるだろう。    (2013.11.28)

試聴サイト : http://www.challengerecords.com/products/1377177122/



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