独断的JAZZ批評 722.

JAMES FARM
知的で観念的
だからHARLANDのドラミングが浮いて聴こえる
"JAMES FARM"
JOSHUA REDMAN(saxophone), AARON PARKS(p), MATT PENMAN(b), ERIC HARLAND(ds)
2010年8月 スタジオ録音 (NONESUCH : 526294-2)


久しぶりにワンホーン・アルバムを購入してみた。丁度、注文を出しているピアノ・アルバムが未入荷の状態で、その穴を埋めるべく注文したアルバムだ。こういうときに、在庫があれば翌日には届いてしまうamazonプレミア会員は本当に便利。
このアルバムは、発売当時の5ヶ月前にはかなりネットでも話題になったアルバムで、高評価されているケースがほとんどだった。ならばということで、聴いてみる気になった。普段ピアノを中心に聴いている僕には目新しい名前が多い。話題のAARON PARKSも初めて聴くのではないかと思ってデスクトップ検索をしてみたら、ANDERS CHRISTENSEN(b)の"DEAR SOMEONE"(JAZZ批評 596.)に参加していた。★2つという低評価だったので記憶はもちろん、CDさえも今は手元にない。PATT PENMANも縁が薄くてJORIS ROELOFSの"INTRODUCING JORIS ROEFLOFS"(JAZZ批評 523.)で聴いただけだ。でも、このアルバムはPENMANの図太いベースが滅茶苦茶に素晴らしかった。ERIC HARLANDの僕にとっての代表作はHOLLAND/RUBALCABA/POTTER HARLANDによる"LIVE AT THE 2007 MONTEREY JAZZ FESTIVAL"(JAZZ批評 584.)であることに間違いはない。

@"COAX" 重厚なテーマの後にPARKSがフリーで彩を添える。HARLANDのスネアがパタパタと矢鱈耳に付く。
A"POLLIWOG" 
ドラムの録音バランスが少し良くない。スネアの音と左チャンネルから聴こえるハイハットを刻む音色が少々耳障り。
B"BIJOU" 
カントリー風のテーマ。このアルバムの中では異色の存在。
C"CHRONOS" 
ここでは躍動するHARLANDのドラミングに耳を傾けたい。ピアノがシングル・トーンをずーっと弾き続け、そこに彩を添えていくという形でテナーやベース、ドラムが絡み合っていく。
D"STAR CROSSED" 
気だるさを伴う変拍子。定型パターンをベースが刻んでいく。途中からアップテンポに変わり元に戻る。
E"1981" 
このグループは定型パターンがお好きなようで、今度はピアノが延々と定型パターンを繰り返す。こういうパターンはアドリブ奏者の自由度を上げるのだろうけど、そのことが、逆に、非個性的な演奏に陥ってしまうというリスクを抱えているように思えてならない。
F"I-10" 
やはりね!HARLANDの曲。手数は多いけど多彩なドラミングだ。この人のドラミングはやたらとスネア・ドラムの音が目立つね。最後はワーッと来てピタッと止まる。
G"UNRAVEL" 
物憂い午後には紅茶でもどうぞ。
H"IF BY AIR" 
この曲の最後はフェード・アウトしてしまうね。
I"LOW FIVES"
 幻想的なバラード。REDMANはこの曲ではソプラノ・サックスを握っている。美しい音色だ。

このアルバムを聴いた後に"LIVE AT THE 2007 MONTEREY JAZZ FESTIVAL"(JAZZ批評 584.)を引っ張り出して聴いてみた。最近のジャズの傾向としてもモーダルな演奏が多いのだけど、そういう意味でこの2枚は良く似ている。しかし、RUBALCABAの迫力ある演奏に対して、PARKSのそれは知的で温度感が低い。テナーも同様だ。そして、"2007"はみんなが一丸となって演奏を楽しんでいる感じ。ライヴという環境がより一層の躍動感とか一体感を演出しているのかもしれない。"2007"が野性的でビッショリ汗を掻くジャズなのに対して"JAMES FARM"は知的で観念的。だからHARLANDのドラミングが浮いて聴こえる。   (2011.10.25)

試聴サイト : http://www.nonesuch.com/albums/james-farm



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