独断的JAZZ批評 834.

MAGNUS HJORTH TRIO
次は"SOMETHING NEW"で"SOMETHING SIMPLE"なアルバムを期待したい
"BLUE INTERVAL"
MAGNUS HJORTH(p), LASSE MORCK(b), SNORRE KIRK(ds)
2013年5月 スタジオ録音 (CLOUD : DDCJ-4011)


初めに断わっておくと、僕はかなりのMAGNUS HJORTHのファンである。
きっかけはファースト・アルバムの"LOCO MOTIF"(JAZZ批評 537.)だ。このアルバムは松山のジャズ友から紹介された。ほとんど無名なピアニストだったが、ゲットして聴いてみたら、煌めくようなパッセージを難なく弾きこなすテクニックとソリッドな感じのジャズに北欧の若手ミュージシャンもなかなか凄いなあと感心したものだった。それが4年前。
その後、"OLD NEW BORROWED BLUE"(JAZZ批評 555.)をリリースして、北欧の若きピアニストとして不動の地位を固めたと言っていいだろう。
本アルバムはこのアルバムの延長線上に位置するものだと思う。今回はベースがPETTER ELDHからLASSE MORCKに替わっている。双頭トリオともいえるMAGNUSの盟友・PETTERが抜けたことがどう出るのか、その点も興味深い。

@"GREEN REPOSE" 静かな出だし。ピアノの音色が深くてとてもいい音だ。メランコリックなミディアム・スロー。数えてはいけない。
A"LION'S ROUTE" 
MORCKのベース・ソロが用意されているが、知性的なベーシストという感じ。ELDHのような野性味や規格外の面白さはない。
B"BARBADOS" 
C. PARKERの書いたブルース。ブリッジを入れたり、テンポを何回も変えたり、何かと忙しい。テンポの変化も自然発生的なものというよりも意図的に最初からアレンジされていたもののようだ。何でこんなにアレンジに凝らなければいけないのか???単純明快に12小節のブルースで聴いてみたいと思うのは僕だけではないだろう。
C"MELLOWED" 
ベースのソロで始まる。太くてアコースティックないい音色だ。数えてはいけない。ポリリズムか?はたまた、変拍子か?
D"MOONLIGHT SERENADE" 
高音部からオクターブ毎に落ちていくテーマ。ここでも倍テン!凝り過ぎだなあ。
E"YANTOON" 
F"BLUE INTERVAL" 
ブルースであるが、MAGNUSのピアノがいかにも古臭いフレーズのオン・パレードなのが残念。頼むからシンプルに演奏してよという気にさえなってくる。"LOCO MOTIF"の最後の曲"T. N. T"のように!
G"ICY BLAST" 
H"AMERICAN PATROL" 
ここまで来ると、何でこのマーチング・バンドみたいな曲が挿入されているのか理解できない。あまりにも古過ぎるのだ。
I"LOST AND FOUND" 
J"LET IT GO" 

K"IN MEMORANDUM-REMEMBERING TOHOKU" 
ピアノ・ソロ。恐らく、このトラックはボーナス・トラックといった位置づけで挿入された曲だと思う。他の11曲とコンセプトが全然違う。しかし、これが素晴らしい!タイトルの通り、東日本大震災の被害を受けた東北への鎮魂歌である。ナチュラルでシンプルそしてビューティフル!これには感動した。僕はひたすらこの曲ばかりを聴いている。

リリースされた日からもう3週間以上聴き続けているが、期待が大きかっただけにちょっとがっかりしている。"SOMETHING OLD"の割合が多すぎるし、さらに言うと、アレンジに凝り過ぎていて「作為」みたいなものまで感じてしまう。全体に古臭い匂いのする演奏となってしまった。
救いは最後の「東北への鎮魂歌」で、これが一番のお気に入り。ナチュラルにしてシンプル。それだけで十分。
最初にも書いた通り、僕はMAGNUS HJORTHのファンである。「可愛さ余って憎さ百倍」って気分も否めないけど・・・辛口なレビューとなってしまった。
次は"SOMETHING NEW"で"SOMETHING SIMPLE"なアルバムを期待したい。
最後に、録音の素晴らしさにも触れておこう。ピアノもベースもドラムスも皆いい音色で鳴っている。これは文句ない!   (2013.11.17)

試聴サイト :
 http://www.catfish-records.jp/product/16849



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