独断的JAZZ批評 775.

HELGE LIEN
アブストラクト!
初めてHELGE LIENを聴くなら、あえて、このアルバムを選ぶ必要はない
"KATTENSLAGER"
HELGE LIEN(p)
2011年10月 スタジオ録音 (OZELLA : OZ 041 CD)


HELGE LIENというピアニストは結構好きなピアニストで、今までに5枚のCDを購入している。
そのうちの3枚がお気に入りだ。
1."WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE"(JAZZ批評 228.)、
2."TO THE LITTLE RADIO"(JAZZ批評 342.) 2006年のベスト5
3."NATSUKASHII"(JAZZ批評 694.) 2011年のベスト10
の3枚がそれで、一発ガツン的な面白さのある1.、美しいリリシズムに溢れた2.、力強く躍動しながらも美しい3.など、どれをとっても素晴らしかった。
そのLIENが放つソロ・ピアノがこのアルバムである。ジャケットから受けるイメージも何やら怪しげだが、一体、どんなソロを聴かせてくれるのだろう?


@"GRUSVEIVANDRER" おおーっと!これはアブストラクト!?残響ばかりが強調されるアブストラクト。弦を引っ掻き、弦を叩く。
A"FURULOKK" シングル・トーンで始まるが、メロディアスというわけではない。
B"UR" 
フリー・テンポのアブストラクト。当然、躍動しない。次っ!
C"BABBEL" 
低音部のシングル・トーンと中高音部のシングル・トーンの組み合わせ。全然、面白いとは思わないけど躍動感がある。
D"STILLE BY" 
ピアノによる擬音。
E"KATTENSLAGER" 
低音部が跳ねて踊るが、これまた、面白くない。
F"KNYT OG KNA" 
低音部が定型パターンを繰り返し、中高音部がインプロ。
G"URO" 
ウーン・・・これが8分40秒も続くのか・・・。勘弁してほしいね!
H"ΦY"
 やっと最後の曲まで来たぞ!早く終わってくれ。そうは言いつつも、この演奏が一番、まともだ


実は、ここまで書くのに、僕はこのCDを何回となく聴いている。正直に言って、こういう演奏というのは疲れるのだ。心地よさがない。ストレスを解消するどころか、ストレスが溜まってしまいそうだ。このアルバムのレビューとか、紹介文を見ても「アブストラクト」とは一言も書いていない。そりゃあ、そうだろう。だって、そんなこと書いたら、全く売れなくなってしまうからね!

ミュージシャンとしては、色々な自分を見せたくなるのは、むしろ当然なことかもしれない。その代り、厳しい評価となっても勘弁してもらいたい・・・と思う。
このアルバムは、先に紹介した、2.と3.の心地よくて美しさに溢れるアルバムからすると180度方向の違うアルバムと言わざるを得ない。しかし、これもHELGE LIENの世界なのだ。
初めてHELGE LIENを聴くなら、あえて、このアルバムを選ぶ必要はない。何故なら、前述したような素晴らしいアルバムが3枚もあるのだから・・・。
近々、新宿のPIT INNでライヴがあるが、残念ながら僕は用事があって行くことが出来ない。出来れば、HELGE LIEN TRIOの生演奏を聴きたいと思っていたのだが・・・、それが残念。   (2012.10.18)

試聴サイト : http://www.linnrecords.com/recording-kattenslager.aspx



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