HELGE LIEN
ピアノが語り、ベースが応え、ドラムスが寄り添う
"WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE"
HELGE LIEN(p), FRODE BERG(b), KNUT AALEFJAER(ds)
2000年 スタジオ録音 (CURLING LEGS CLP CD 62) 

僕はこのアルバムを2ヶ月にわたって聴いてきた。どうも聴き方が間違っていたようだ。
昔、アナログLPの時代にはA面とB面が必ずあって、そのどちらかが良ければそれで良しとしていた。両面とも満足というアルバムはそうそうあるものではない。聴く場合も、このアルバムはA面とか、このアルバムはB面とか、大抵はどちらかに決めていたものだ。

で、このアルバムであるが、@〜BをA面、C〜EをB面と仮定すると話が早い。絶対的にB面が素晴らしいのだ!@から順を追って聴いていくと、抽象的表現にうんざりしてくる。何回もこの手順で聴いていた僕はCに行き着く頃は集中力も欠いて、以降はほとんど聞き流していた。
ある時、試しにCから聴いてみて、びっくりした。まるで、別のアルバムを聴いた感動があった。まさに、これはアナログLP時代におけるB面の良さに相通ずるものだと思った。
最近は店頭における試聴制度が定着して、意識的に1曲目や2曲目にそのアルバムの最も高い水準の演奏を配置するアルバムが多いが、こういう例外もあるということか。

@"FALL" 
A"TRUST" しっとりバラード。これは聴けないことはない。
B"SOLAR" 

ここまでをA面とし、以下をB面と仮定すると、B面は別世界。これは凄いぞ。

C"HYMNE" LIENのオリジナル・ワルツ。美しい曲をベースにした、3者のインタープレイが凄い。ピアノが語り、ベースが応え、ドラムスが寄り添う。
D"SO WHAT" ご存知、MILES DAVISの曲。11分超の長尺ものだが、緊張感、躍動感に溢れるインタープレイが凄い。ジックリとこの緊張感と緊密感を堪能いただきたい。5分過ぎからは4ビートを刻む。更には、ピアノは鍵盤楽器であると同時に打楽器であるということを再認識させてくれる。ベースが主役だが、ピアノとドラムスの切れ味も鋭い。

E"WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE" MICHEL LEGRANDのバラード。これも8分強の長尺だが、美しさの中にある心の通い合いを堪能頂きたい。4分過ぎからの高揚感が嬉しい。美しいバラードであってもこういう躍動感がないといけない。このアルバムのベスト。何回も繰り返し聴きたくなる。

C〜Eについて言えば、美しさと躍動感に溢れ、加えて、非常にスリリングである。3人による魂のぶつけ合い・・・こういう演奏こそがピアノ・トリオという3人で創造する音楽の魅力だと思うのだ。
@とBの容認しがたい演奏もあるが、それをもってしても、C〜Eの素晴らしさを損なうものではない。JAZZ批評 210.215.との共通項が見出せるヨーロッパの香りのする好演盤である。「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2004.10.23)



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独断的JAZZ批評 228.