独断的JAZZ批評 774.

LUIGI MARTINALE
料理でいえば、手間暇掛けた西洋料理というより、
素材の美味しさを生かしつつ独自の味付けを施した
和の料理人の腕前という感じかな
"ARIETIS AETAS"
LUIGI MARTINALE(p)
2012年2月 スタジオ録音 (ALBORE : ALBCD 019)


イタリアのピアニスト、LUIGI MARTINALEは1963年生まれというから現在、49歳。中堅どころとのピアニストと言えるだろう。この人の2005年録音のトリオ・アルバム"LE SUE ALI"(JAZZ批評 549.)はベースにDREW GRESSを迎え、素晴らしいアルバムに仕上がった。MARTINALEはアメリカのベーシスト、DREWとの共演を望み、2年も待ったという。この飽くなき情熱が傑作アルバムを生んだといっても過言ではないだろう。僕は、そのアルバムを2009年のベスト・アルバムとして8枚の中に選んだ。併せて、聴いてほしいアルバムの一つだ。こういっては失礼だが、そのアルバムで「大化け」したピアニストだと思っている。
もう1枚ゲットしていた2001年録音の"SWEET MARTA"(JAZZ批評 108.)はあまりいい出来ではなかったようで、既に、手元には残っていない。

@"ARIETIS AETAS" 最初の数小節を聴いただけで「いいジャズだなあ!」と分かる。もう、心に響くものが違う。素性が良いというか、何というか!本当に「香しいね」 MARTINALEのオリジナルだが、いい曲だ。
A"THE ABSYNTH" ここまでの2曲がオリジナル。どちらも素敵な曲だ。
B"MY ROMANCE" 
RICHARD RODGERSの書いた曲で、BILL EVANSの十八番として有名な曲。でも、この演奏はEVANSを超えていると思うけど、どうだろう?
C"THESE FOOLISH THINGS" 
MARTINALEの左手がポイントになっている。音の広がりを演出しているのはこの左手だ。
D"POR TODA A MINHA VIDA" 
A. C. JOBINの曲だが、ここでの演奏はボサノバ調ではなくて、バラードだ。
E"IF I SHOULD LOSE YOU" 
この演奏が躍動感とドライヴ感に溢れていていいね。素晴らしい!
F"MY ONE AND ONLY LOVE" 大好きなスタンダードのひとつ。さびの部分からイン・テンポに移っていく。ワンコーラスが終わるとテンポも速くなって、ノリの良いリフが繰り返されていく。ウーンと唸ってしまうね!
G"UPPER MANHATTAN MEDICAL GROUP" 
一転して、少しコミカルで楽しげな雰囲気がいいね。
H"EVERYTHING HAPPENS TO ME" フリーテンポで始まるバラード。しっとりと心に沁みる。心が洗われる気分。
I"DARN THAT DREAM" 
これも原曲の美しさが100%表現されている。なんて心地良いのだろう!
J"AKA TOMBO"
 「赤とんぼ」 これもまた素晴らしい。このアルバムの極め付けと言っても過言ではない。原曲の美しさをキープしつつ、オリジナルの味付けを加えているが、まったく違和感がない。というか、この味付けがまた素晴らしいのだ。

僕の採点の基準となっている、「美しさ」、「躍動感」、「緊密感(緊迫感)」のうちソロ・ピアノなので「緊密感」は該当しないが、それ以外が満点。品があって、でも、グルーヴィ。
選曲も素晴らしい。2曲のオリジナルとスタンダード・ナンバーとカバー曲。最後の曲は「赤とんぼ」だ。
どの曲も原曲の美しさをものの見事に歌い上げ、アドリブでは独自の色彩を加味している。料理でいえば、手間暇掛けた西洋料理というより、素材の美味しさを生かしつつ独自の味付けを施した和の料理人の腕前という感じかな。まさに「テーマ良ければ、アドリブも良し」を具現化したアルバムなのだ。
僕はこれまでに何十回聴いただろう?何十回聴いても聴き飽きない。諸手を挙げて素晴らしいと讃えたいということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。

試聴サイト : http://www.alborejazz.com/catalog/albcd019.html



.