独断的JAZZ批評 776.

MARTIN TINGVALL
とても素性の良い音楽で、あえて言えば、ジャンルで括れない音楽なのだ
"EN NY DAG"
MARTIN TINGVALL(p)
2012年5月 スタジオ録音 (SKIP : SKP 9117-2)


前々掲のLUIGI MARTINALE(イタリア)からHELGE LIEN(ノルウェイ)に続いて、またしても、ピアノ・ソロのアルバムに当たってしまった。このMARTIN TINGVALLはスウェーデンのピアニストで、今までに4枚のピアノ・トリオ・アルバムを紹介している。特に2005年録音の"SKAGERRAK"(JAZZ批評 473.)と2011年録音の"VAGEN"(JAZZ批評 717.)はお気に入りで5つ星を献上している。この間、このグループのメンバーは不変で,、キューバ人のベースとドイツ人のドラムスで構成されてきた。
翻って、今度のアルバムはTINGVALLのソロ・ピアノである。ジャズはもとより、ロック、フォーク、クラシックの影響を感じさせる演奏で、むしろ、ジャンルで括らない方が良いかもしれない。
このアルバムでは曲目に(多分)スウェーデン語と英語が併記されているので、ここでは英語の曲名を採用した。

@"A FALLING STAR" メルヘンチックなフレーズで始まる。とても素性の良い音楽という感じ。ロックでもフォークでもクラッシクでもジャズでもない・・・。ジャンルで括ろうとしないのが良いのかも。
A"A BEGINNING" 
水面に映える光の乱反射のようにキラキラと輝き、水の雫のように清々しい。
B
"DEBBIE AND THE DOGS" リズミカルでエモーショナルな演奏。TINGVALLの真骨頂ともいうべき演奏だ。
C"AFTER WE HAD PARTED" 
美しさと哀しみを湛えた演奏。ジャズらしくないと言えばジャズらしくない。
D"A NEW DAY" 
これもリリカルな演奏。
E
"THERE'S THUNDER IN THE AIR" トリオの時のように躍動感とダイナミズムを前面に押し出した演奏で僕の好みだ。
F"HOISTING THE FLAG ON MIDSOMMAR" 
まるで日本の小学校唱歌のような素朴な曲。
G"NO ELECTRICITY IN HARARE" 
リズミカルでフォークっぽい。
H"FOR THE LOVED ONES AT HOME" 
クラッシク・ピアノのプレリュードをを聴いているよう。
I"THE LAST DANCE OF THE EVENING" 
これもまた。
J
"THE MOSQUITO THAT WOULD'T DIE" リズミカルな左手の動きに合わせて右手が「蚊」のように飛び回る。トリオ・アルバムと同様のダイナミズムに溢れている。
K"WHEN THE CHILDREN ARE SLEEPING" 
子守唄を連想させるタイトルからクラシカルな子守唄のフレーズが挿入されている。
L"AT THE END OF THE DAY" 
一日の終わりを告げる静かな曲。
M"THE BIG DIPPER"
 「北斗七星」

TINGVALLのアルバムは、今までに紹介した4枚のアルバムを通してみても、スタンダード・ナンバーやカバー曲といったものが皆無に等しい。全ての曲がTINGVALLのオリジナルで構成されてきた。このアルバムも然り。全ての曲がTINGVALLのオリジナルなのだ。加えて、このアルバムはピアノ・ソロである。
とても素性の良い音楽で、あえて言えば、ジャンルで括れない音楽なのだ。しかし、とても心地よい音楽であることは間違いない。とは言え、僕の中では
BEJのようなダイナミズムに溢れるトラックが好みだ。
星5つにするか否かで迷ったが、迷った時は辛い点数を付けることにしている。   (2012.10.25)

試聴サイト : http://soundcloud.com/moonlightrecords-1/05-en-my-dag-en-ny-dag-martin



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