独断的JAZZ批評 701.

PAT METHENY
METHENYならもっと凄い感動を与えてくれるに違いないと信じてやまないのだ
"WHAT'S IT ALL ABOUT"
PAT METHENY(g)
2011年2月 スタジオ録音 (NONESUCH 527912-2)


僕は普段からピアノ・トリオ以外のアルバムをあまり聴かない。ギターも然り。そういう中で唯一聴くのが、このPAT METHENYだ。過去のアルバムをみても、CHARLIE HADENとの傑作デュオ・アルバム"BEYOND THE MISSURI SKY"(JAZZ批評 6. & 686.)やBRAD MEHLDAUと組んだ"METHENY MEHLDAU"(JAZZ批評 366.)や"QUARTET"(JAZZ批評 406.)ではいずれも素晴らしいパフォーマンスを聴かせてくれた。
このアルバムと同じくソロ・アルバムとしては"ONE QIET NIGHT"(JAZZ批評 137.)があったが、残念ながら高い評価はしていない。「人間臭さや熱っぽさ」が伝わってこないクールで静謐なアルバムという印象だった。
今度のアルバムは3曲を除く全てがバリトン・ギターのソロ演奏である。なおかつ、一切のオーバー・ダビングがないという触れ込みだ。このバリトン・ギターっていうのは通常のギターより長いスケールで、低い音域が特徴であるらしい。通常のギターよりも1オクターブから4度下げて調律もされているようだ。

@"THE SOUND OF SILENCE" このトラックは42-STRINGS GUITARで演奏されていると注釈が付いている。この42弦ギターがどんなギターかというのは次のURLを参考にされたい。
(参考:http://www.youtube.com/watch?v=Wp1wHZfZz9s )ちゃんとベース・ラインまで弾いている。このギターを弾きこなすってことだけでも凄いことだ。

A"CHERISH" 
B"ALFIE" 
BURT BACHARACHの書いた名曲。しっとりと歌い上げた。
C"PIPELINE" 
6-STRING GUITARの注釈があるけど、何故わざわざ?普通、ギターって6弦の筈だけど?そうか!これはバリトンでない普通のギターで弾いているってことか。ところで、この曲は昔、日本でグループ・サウンズが大いに流行った時代の「パイプライン」である。
D"GAROTA DE IPANEMA" 
これはA. C. JOBIMの「イパネマの娘」 原曲の爽やかで軽快なイメージは皆無で、スローで幻想的な演奏。
E"RAINY DAYS AND MONDAYS" 
カーペンターズで流行ったポップス。
F"THAT'S THE WAY I'VE ALWAYS HEARD IT SHOULD BE" 
G"SLOW HOT WIND" 
H"BETCHA BY GOLLY, WOW" 
I"AND I LOVE HER"
 注釈にNYLON-STRING GUITARと書いてある。なんとも優しい音色だ。曲のよさと相俟って、超癒し系のトラックとなっている。 

昔のヒット・ポップスを中心に誰でも楽しめる選曲になっている。ギター、一本でMETHENYの真髄を見せ付けた感じ。テクニックも申し分ないし、歌心も・・・。しかし、前述したMETHENYの傑作アルバムと比較すると何か物足りなさが残ってしまう。CHARLIE HADENと組めば、あるいは、BRAD MEHLDAUと組めば、もっと凄いアルバムにならんであろうことを僕らは知っている。そういう意味において、物足りなさを感じてしまうのかも知れない。
良質なアルバムであることを否定しない。が、METHENYならもっと凄い感動を与えてくれるに違いないと信じてやまないのだ。   (2011.06.24)

試聴サイト : http://www.nonesuch.com/media/videos/pat-metheny-and-i-love-her
         http://www.nonesuch.com/media/videos/pat-metheny-cherish




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