独断的JAZZ批評 366.




PAT METHENY / BRAD MEHLDAU
心の通ったデュオはトリオ以上の濃密な時間と空間を提供してくれるものだ
"METHEY MEHLDAU"
BRAD MEHLDAU(p), PAT METHENY(g),
LARRY GLENADIER(b:CとF), JEFF BALLARD(ds:CとF)
2005年12月 スタジオ録音 (NONESUCH 79964-2)

ついに実現、夢のデュオ・アルバム!
*     *     *     *     *     *     *     *     *     * 

前掲のオペラシティ、BRAD MEHLDAU TRIOのコンサートの興奮が未だ醒めやらぬ僕だが、今回紹介するのは時同じくして発売になったMETHENYとのデュオ・アルバム。
ここは右脳のスイッチを切り替えてこのアルバムに取り掛かってみよう。
その前に、ライナーノーツの録音年月日が"RECORDED IN DECEMBER 2006"となっているが、こういうミスは困ったものだ。録音年月日を間違えるなんてレコード会社ではあってはならないことだ。更に言えば、この大きなミスの裏には隠れた沢山の小さなミスがあるということだ。

ところで、このアルバムであるが、ジックリと正面から向き合って欲しいアルバムである。このアルバムの素晴らしさを一音も、更には、二人の感情の機微を片時も逃さずに聴いて欲しいと思うのだ。


@
"UNREQUITED" 最初のギターの一音でこのアルバムの素晴らしさが想像できる。ギターもピアノも音色が綺麗。もう、ここからして他のアルバムと違うのだ。テーマを執るギター、バッキングのピアノで始まるが、交互に役割分担。その絶妙な呼吸が良い。MEHLDAUの"THE ART OF THE TRIO VL..3"(JAZZ批評 2.)にも入っていた曲だが、また、違った味わいがある。えっ!同じ曲?と思ってしまう。邦題「報われぬ思い」と"VOL .3"にあるが、切なく哀しいテーマに心奪われる。
A"AHMID-6" 
躍動感溢れるバッキングに乗ってギターが歌う。半分ほどで攻守ところを替える
B"SUMMER DAY" 
アコースティック・ギターというよりもクラッシク・ギターという方が分かりやすい。

C"RING OF LIFE" 
トリオ演奏。切れの良いドラミングで始まるハード・ドライヴの演奏。僕はこの曲を聴いているとMETHENYの名曲、"QUESTION AND ANSWER"(JAZZ批評 27.)を思い出す。雰囲気が良く似ているというよりも同じようなフレーズが出てくるんだんなあ。この曲もMETHENYの書いた曲なので「さもありなん!」。演奏半ばではMETHENYのギターはシンセサイザーを使用する。
D
"LEGEND" 
E"FIND ME IN YOUR DREAMS" 
なんとも切ないバラードがピアノ〜ギターへと繋がっていく。
F"SAY THE BROTHER'S NAME" 
トリオ演奏。逞しいベースと跳躍するドラムスが入ってアルバムがきりりと締まった。デュオにはないグループとしての躍動感と高揚感を感じる。ピアノかギター、どちらかがソロをとっている時のバッキングは実に控え目。あくまでも主役を立てることに徹している。

G"BACHELORS V" 

H
"ANNIE'S BITTERSWEET CAKE" まさにインタープレイ!
I"MAKE PEACE" 
METHENYの書いた牧歌的な曲。"MAKE PEACE"は如何にもMETHENYの書いた曲のタイトルという気もする。こういう曲を聴くとMETHENYとCHARLIE HADEN(b)の傑作デュオ・アルバム"BEYOND THE MISSOURI SKY"(JAZZ批評 6.)を思い出す。
ここではバリトン・アコースティック・ギターを弾いている。静かな曲想で幕を開け、徐々にゆっくりとテンションが上がっていく。個人的にはこの曲がこのアルバムのベスト。心奪われる演奏だ。

現代ジャズの、ギターの第一人者とピアノの第一人者の織り成す極上のデュオ。ジックリと腰をすえて味わって欲しい。出来れば、「ながら聴き」は止めてもらいたい。正面から向き合って欲しい、そういうジャズだ。一音一音をしっかりと噛み締めたい。「阿吽の呼吸」と言ってしまえば簡単なことだが、それ以上の何かが見つけられるはず。
@DHがMEHLDAUのオリジナル。それ以外はMETHENYの曲。

僕はピアノとベース、ピアノとギターといった、デュオが好きだ。心の通ったデュオはトリオ以上の濃密な時間と空間を提供してくれるものだ。
ピアノとギター・デュオの更なる可能性を示唆したアルバムとして、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
   (2006.09.21)



.