PAT METHENY

「一服の清涼剤」的な存在感はあっても、
人間臭さや「熱っぽさ」といったものが感じられない
"ONE QUIET NIGHT"
PAT METHENY(BARITON GUITAR)
2001年自宅で録音(WARNER BROS. 9362-48473-2)

METHENYのソロ・アルバム。
多分、意見の分かれる作品となろう。全編、アコースティックなバリトン・ギターのソロということ、そしてタイトルにあるようにQUIETな作品が多いということ。ともすると同じ雰囲気が連綿と続き飽きる。起伏が少ないことは否めない。BGMとなってしまう恐れもある。

一方、PAT METHENYの最近のアコースティック作品ではベース(CHARLIE HADEN)とのデュオ"BEYOND THE MISSOURI SKY"(JAZZ批評 6.)が印象深いが、これが録音されたのは1996年でかれこれ7年も前に遡ってしまう。このアルバムはアメリカン・フォーク的な牧歌的作品集であったがジャンルを超えた美しさと瑞々しさに溢れていた。今も時として聴きたくなる僕のお気に入りである。

この作品と比較してギター・ソロという点で変化の乏しさや起伏感のなさに思いが行ってしまう。非常に真面目に音楽に対峙していると思うのだけど、それだけで満足できないのが貪欲なリスナーというものだ。「一服の清涼剤」的な存在感はあっても、人間臭さや「熱っぽさ」といったものが感じられない。この辺は好き嫌いの分かれるところだろう。

@"ONE QUIET NIGHT" アルペジオ主体のクールな演奏。
A"SONG FOR THE BOYS"
B"DON'T KNOW WHY"  NORAH JONESのベスト・セラー"COME AWAY WITH ME"の1曲目に入っていた曲。この曲の挿入は本人の意思らしいが?
C"ANOTHER CHANCE" この辺まで来ると正直、「またかア」と思ってしまう。

D"AND TIME GOES ON" METHENYのオリジナル。いい曲だ。
E"MY SONG" KEITH JARRETTのオリジナル。
F"PEACE MEMORY" 
G"FERRY CROSS THE MERSEY" 

H"OVER ON 4th STREET" このアルバムの中にあってはリズミカルな曲となった。
I"I WILL FIND THE WAY" 
J"NORTH TO SOUTH, EAST TO WEST" ギター・ソロで12分という演奏時間はいかにも長い、長すぎる。また、その長さに耐えられる曲ではない。
K"LAST TRAIN HOME" 
全編を聴き通すのは結構骨が折れる。

確かに、後から多少のミキシングはあるものの一人で全編をギター一本で埋めたのは凄いと思う。でも、凄いという事だけでは感動は少ない。残念ながら、METHENYの本当の凄さを表現できているアルバムとは思わない。METHENYの凄さはこんなものではないと今も思っている。
因みに、この後聴いた"BEYOND THE MISSOURI SKY"(JAZZ批評 6.)は感動と満足感をたっぷり与えてくれた。   (2003.06.07)



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独断的JAZZ批評 137.