独断的JAZZ批評 700.

DANNY GRISSETT
目覚めよ!GRISSETT!
"STRIDE"
DANNY GRISSETT(p), VINCENTE ARCHER(b), MARCUS GILMORE(ds)
2011年1月 スタジオ録音 (CRISS CROSS JAZZ : CRISS 1337 CD)


DANNY GRISSETTのリーダー・アルバムとしては今までに二つのレビューを書いているが、いずれも星4つで、まあまあという評価だった。その2枚はこのアルバム同様にCRISS CROSSから発売になっている。
ベストは北川潔のアルバムに参加した"I'M STILL HERE"(JAZZ批評 448.)であろう。全曲に漲る躍動感と緊迫感が良かった。このアルバムはATELIER SAWANOである。メンバーが違うのは当たり前で、澤野のそれは北川潔がリーダーでドラムスにはBRIAN BRADEという豪華なキャスティングだった。
本アルバムはベースは前2作と同じVINCENTE ARCHERが参加しているが、ドラムスにはKENDRICK SCOTTに替わって新進気鋭のMARCUS GILMOREが参加している。

@"STRIDE" 期待感を抱かせるピアノのイントロで始まるが、テーマに入ってからのしっくり感、一体感がない。それとテンション低目と言いたくなってしまう高揚感のなさは一体どうしたことか?
A"VIENNESE SUMMER" 
前曲に続くGRISSETTのオリジナル。ヨーロッパ人が書いたような可憐な曲だ。黒人らしいアーシーなテーマを期待したくなるのは無理な注文なのだろうか?
B"ETUDE OPUS 10: NO.6 IN E-FRAT MINOR" 
そういうことの象徴的な演奏のひとつとしてこの演奏がある。何ゆえ、ショパンなのか?こんな演奏、誰も期待していないと思うのだけど・・・。GILMOREの参加は凶と出たようだ。
C"TWO SLEEPY PEOPLE" 
タイトルのように眠くなる演奏。こういう演奏を期待してこのアルバムを購入したわけではない!欠伸が出てしまう。
D"CLOSE QUARTERS" 
GRISSETTのオリジナル。つまらないテーマだ。全2作のアルバムでもGRISSETTのオリジナルは面白くなかったけど、今回もそれを引きずっている。テーマがつまらないからアドリブも面白くないのか?多分、そうだ。
E"SCENE" 
頼りないベースのイントロで始まる。これが全て。こういうの聴いていると北川潔って凄いベーシストだと思う。自信が漲っているもの。
F"IT TAKES TWO TO KNOW ONE" 
GILMOREのソロが長目にフィーチャーされている。
G"SOME OTHER TIME" 

北川潔の"I'M STILL HERE"でみせた躍動感と緊迫感はどこへ行ってしまったのか?次への期待が大きく膨らんでいただけに、この現実は実に哀しい。自分の突き進む道に迷いを生じているという印象を持たせてしまう。
ARCHERとのコンビネーションはまあ良しとしても、荒削りなGILMOREとのコンビネーションは決して良いとは言えない。これはミス・キャストの類だろう。北川潔とBRIAN BRADEとの格の違いを見せ付けられた感じだ。「役者が違う!」と。
DANNY GRISSETTの溌剌としたプレイが聴きたければ"I'M STILL HERE"(JAZZ批評 448.)をお勧めしよう。
もう一度言う、目覚めよ!GRISSETT!   (2011.06.18)

試聴サイト : http://www.crisscrossjazz.com/album/1337.html




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