独断的JAZZ批評 686.

PAT METHENY & CHARLIE HADEN
東日本大震災の被災者に捧ぐ

ふるさと復興の願いを込めて・・・
"BEYOND THE MISSOURI SKY"
CHARLIE HADEN(b), PAT METHENY(g)
1996年月 スタジオ録音 (VERVE : POCJ-1365)

未曾有の大地震が東日本を襲ったのが丁度、1ヶ月前。それから丸々1ヶ月の間、僕はジャズを聴きたいという想いをなくしていた。正確に言うと、このアルバムを除いてジャズを聴く気にはなれなかったのだ。この1ヶ月間、このアルバムのみを聴き続けていた。
ホームページを開設してから10年が経とうとしているが、1ヶ月もの間、更新をしなかったのも初めてのことだ。
あっという間の1ヶ月が経ち、被災地も復興に向けた確かな一歩を歩み始めた。僕も心を新たにしてジャズを聴き始めようと思っている。
このアルバム"BEYOND THE MISSOURI SKY"(JAZZ批評 6.)はホームページを始めた当初に「厳選」に選んだアルバムだ。従って、これがセカンド・レビューにあたるが、5つ星というその評価に変わりはない。
PAT METHENYとCHARLIE HADENのデュオという形式にオーケストレーションやシンセサイザーを加味し、新たな息吹を与えている。

@"WALTZ FOR RUTH" C. HADENが奥さんに捧げた曲。
A"OUR SPANISH LOVE SONG" 
これもHADENの曲。METHENYのアコースティックなギター音が素晴らしい。優しさと慈しみに溢れた曲。
B"MESSAGE TO A FRIEND" 
METHENYのオリジナル。JOHN SCOFIELDとの競作"SUMMERTIME"(JAZZ批評 7.)の中でも演奏されている。
C"TWO FOR THE ROAD" 
HENRY MANCINIの書いた曲で、ここでもアコースティックなギターの音色が心に沁みる。
D"FIRST SONG (FOR RUTH)" 
"FOR RUTH"とあるので、これもまたHADENが奥さんに捧げた曲なのだろう。STAN GETZ & KENNY BARRONの"PEOPLE TIME"(JAZZ批評 231.)にも収められている。
E"THE MOON IS A HARSH MISTRESS" 
オーケストレーションが加わる。
F"THE PRECIOUS JEWEL" 
多重録音のリズム・ギターをバックにHADENがテーマを奏で、METHENYがエレキ・ギターを奏でる。
G"HE'S GONE AWAY" 
H"THE MOON SONG" 
10年間聴いても聴き飽きない佳曲。この曲は"THE SHADOW OF YOUR SMILE"や"A TIME FOR LOVE"を書いたJOHNNY MANDELの曲。録音当時にはまだ一度もレコーディングされていなかった曲らしい。この1ヶ月、このメロディが頭から離れなかった。シンプル アンド ナチュラル。心癒される。
I"TEARS OF RAIN" 
METHENYは、ここでアコースティック・シタール・ギターを弾いているが、この楽器での初めてのレコーディングだったという。
J"CINEMA PARADISO (LOVE THEME)" 
ENNICO MORRICONEの息子、ANDREA MORRICONEの作。アコースティック・ギター。
K"CINEMA PARADISO (MAIN THEME)" 
ENNICO MORRICONEの作。こちらはエレキ・ギター。 
L"SPIRITUAL" 
HADENの息子に捧げた曲。HADENのベースがメロディを奏でる。最後を締めるように昂揚感が増して終わる。

このアルバムに集められたどの曲も愛する人と愛するふるさとに捧げられた曲である。愛と慈しみに溢れていて聴くものの心に安らぎと勇気を与えてくれるに違いない。
僕はこのアルバムを東日本大震災の被災地の皆さんに捧げたいと思う。そして、その皆さんのふるさとが一刻も早く復興されることを願っている。   (2011.04.10)

試聴サイト :  http://www.youtube.com/watch?v=f92FliQ-V6g&feature=related



.