JAN LUNDGREN
このアルバムの美しさと優しさは、むしろ、物足りなさに聴こえてしまう
"EUROPEAN STANDARDS"
JAN LUNDGREN(p), MATTIAS SVENSSON(b), ZOLTAN CSORSZ JR.(ds)
2008年10月 スタジオ録音 (ACT : 9482-2)


JAN LUNDGRENのアルバムには1997年録音の"SWEDISH STANDARDS"というアルバムがあるが、この延長線で企画されたアルバムだろうか?今回はヨーロッパ各国のスタンダート的な曲が列挙されている。曲名の後に、該当する国名を記した。
"SWEDISH STANDARDS"と同様にベースにはMATTIAS SVENSSONが参加している。このSVENSSONはこのレコーディングの2ヵ月後に日本で初リーダー・アルバムである"HEAD UP HIGH"(JAZZ批評 559.)を録音している。今までのイメージを払拭するかのような力強いベース・プレイには驚いたものだ。

@"COMPUTER LIEBE" 
(GERMANY) アコースティック・ベースにエフェクターを噛ましているのだろうが、そういう必然性はあったのだろうか?グルーヴィといっても何故か品が良い。
A"LES MOULINS DE MON COEUR" 
(FRANCE) 邦題「風のささやき」 あくまでも美しい。
B"HERE, THERE AND EVERYWHERER" 
(ENGLAND) この曲はLENON/McCARTNEYの曲だという。これもイギリスのスタンダード?SVENSSONの躍動する4ビートが聴ける。
C"A CSITARI HEGYEK ALATT" 
(HUNGARY)
D"STETS I TRUURE" 
(SWITZERLAND)
E"YO VIVO ENAMORAO" 
(SPAIN)
F"UN HOMME ET UNE FEMME" 
(FRANCE) 邦題「男と女」 ここではFENDER RHODESを弾いているが、これがなかなか良い。上手に電気ピアノを駆使している感じ。似たような曲想の中でこの曲だけは異質な面白さがある。このアルバムのベスト。
G"REJINELLA" 
(ITARY)
H"IL POSTINO" 
(ITARY) これもFENDERを使用。
I"SEPTEMBER SONG" 
(GERMANY) SVENSSONのベース・ソロが良く歌っている。
J"ROSEMARY'S BABY" 
(POLAND)
K"WIEN, DU STADT MEINER TRAUME" 
(AUSTRIA)
L"PAVANE - THOUGHTS OF A SEPTUAGENARIAN"
 (SWEDEN) ピアノ・ソロ。昨年亡くなったESBJORN SVENSSONの書いた曲だという。鎮魂歌。

このアルバムと性格の似ているデュオ・アルバムに2005年録音の"LOCKROP"(JAZZ批評 338.)がある。GEORG RIEDEL(b)とのデュオであったが、聴くもののこころを洗い、沸き立たせてくれる秀逸なアルバムであった。が、こちらの方がデュオにも拘らず、緊迫感、緊密感に溢れていたと思う。
そういう意味で、このアルバムには若干の物足りなさが残ってしまう。言葉は悪いが、「美しいだけ」という印象を免れないのだ。事実、どの曲も美しいテーマであり、美しい演奏なのだ。甘いスウィーツをこれでもか、これでもかと食べさせられる感じなのだ。

話は逸れるが、先日(6/26)、MAGNUS HJORTH(p), PETTER ELDH(b), 池長一美(ds)の御茶ノ水「ナル」でのライヴに行ってきた。これは凄かったね。やはり、「ジャズはライヴ!」だと思った。MAGNUSのプレイは想像以上であったし、ELDHのベース・ワークにはぶっ飛んだね。久しぶりに興奮した。1曲だけデュオのプレイがあったが、ドラムレスでも何の遜色もなかったし、むしろ、僕には魂を揺るがす演奏であった。この二人のプレイに僕はぞっこん惚れ込んでしまった。こういう刺激に満ちた演奏を聴いたばかりなので、このアルバムの美しさと優しさは、むしろ、物足りなさに聴こえてしまう。   (2009.06.29)

試聴サイト :
 http://www.actmusic.com/product_info.php?products_id=271



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独断的JAZZ批評 565.