FLORIAN ARBENZ
ある意味、誰にも妥協しない信念の音楽といえるかもしれない
"OUTSTAGE"
MICHAEL ARBENZ(p), THORMAS LAHNS(b),FLORIAN ARBENZ(ds, cymbalon)
2008年2月 スタジオ録音 (METARECORDS : meta 046)

僕の最近のお気に入りにはドイツのグループの活躍が目立つ。例えば、MARTIN TINGVALLの"SKAGERRAK"(JAZZ批評 473.)やSEBASTIAN STEFFANの"LOOK AT THE DOORKEEPER"(JAZZ批評 485.)やOLIVIA TRUMMERの"WESTWIND"(JAZZ批評 498.)がそれで、ヨーロッパ的な緻密さに踊るような躍動感が加味されていずれも味わいアルバムであった。
このアルバムはスイスで活躍するグループがドイツのマイナー・レーベルから発売したアルバムだというので、オーストリアのTRIOTONICの"HOMECOMING"(JAZZ批評 424.)などとも共通したクールで躍動感溢れる演奏が期待できるものと思っていた。

試聴する前にオーダーを入れたわけであるが、ネットを良く調べたら試聴も可能だった。参考までに記しておくと、MySpaceのミュージック検索で"MICHAEL ARBENZ"と入力するとアルバム"VEIN"から2曲ほど試聴が出来る。興味のある方はお試しいただきたい。

@"LIGETI EATS SPAGHETTI" おちゃらけたジャズらしくないテーマ。メロディの美しさなんて微塵もない。二度と聴きたくない1曲目。
A"GROOVE DEFECT" 一筋縄も二筋縄もいかない難解なテーマ。疲れる!
B"TRANSUBSTANTIATION" 深く沈むベースの音で始まる幽玄、静謐な演奏。ピアノに絡むアルコ奏法。徐々にテンションを高めていくが強烈な躍動感に襲われることもなく終わってしまう。

C"FUNKY MONKEY" 何も楽しくないドラムがメインの演奏。アヴァンギャルドともフリーとも言える演奏に途中で投げ出したくなる。演奏者たちの自己満足以外の何モノでもない。小難しいテーマを難なく弾いているその技量は凄いと思うけど、音楽は技術が全てではない。
D"MENTOR" ピアノを人工的な電子音で加工している。
E"CROSSING LINES" 無機質な演奏が延々と続く。演奏に艶っぽさとか色気というものが全くないので聴き疲れする。
F"FACE TIME WITH A BLUES" ベース・ソロにはアコースティックな音色と力強いビートがある。その能力の生かし方が間違っているような印象を与える。これだけの技量と才能があればもっと異質な音楽でもその才能を十分に生かせるだろう。もったいない。ある意味、誰にも妥協しない信念の音楽といえるかもしれない。

全曲、彼らのオリジナルでMICHEL ARBENZが3曲、残る4曲をFLORIAN ARBENZが提供している。どの曲も凝りに凝っていて、小難しい。とても、口ずさめるものではない。唯我独尊。
ここまでいくと「頭でっかちで無機質な演奏」と言われても仕方あるまい。聴くほどに楽しくなっていく音楽ではないので、心してかかること。僕としては、できれば回避したかった。
こういうアルバムの口(耳)直しにはGERRY MULLIGANの"NIGHT LIGHTS"(JAZZ批評 501.)あたりがぴったりだろう。   (2008.10.07)



独断的JAZZ批評 506.