GERRY MULLIGAN
シンプルで美しいテーマと見事なアンサンブルをたっぷりと堪能いただきたい
"NIGHT LIGHTS"
@〜EGERRY MULLIGAN(bs ,p:@), ART FAMER(tp, fl-horn), BOB BROOKMEYER(tb), JIM
HALL(g), BILL CROW(b), DAVE BAILY(ds) 1963年 スタジオ録音
F:GERRY MULLIGAN(CLARINET), PETE JOLLY(p), JOND GRAY(g), JIMMY BOND(b),
HAL BLAINE(ds), TEN -PIECE STRING SECTION 1965年 スタジオ録音
(PHONOGRAM : MERCURY 818 271-2)
独断的JAZZ批評が500を数えた。2001年にHPを立ち上げてから7年と4ヶ月(88ヶ月)が過ぎた。目標とするのが1000レビューであるから、今のペースで行くと目標達成が2016年の1月ということになる。そのときまで、今までがそうであったように健康で意欲も衰えずという条件付ではあるが・・・。
過日、ネットのジャズ仲間のdoraさんとお会いする機会があり、それが縁でこの"NIGHT LIGHTS"を聴いてみた。このアルバムをゲットしたのが7月だから、丸2ヶ月聴いてきたことになる。正直に言えば、最初の印象は「眠たいなあ」だった。少々大人しい感じで安眠子守唄として打ってつけだと思っていた。事実、寝る際にこのCDをかけるとぐっすりと深い眠りについたものだ。しかしながら、このアルバムの凄いところは、2ヶ月間たっぷり聴いても全く聴き飽きることがなかったことだ。これって、いいアルバムの絶対条件だと思う。
@"NIGHT LIGHTS(1963VERSION)" ここではMULLIGANはピアノを弾いているらしい。BROOKMEYERの良く歌うトロンボーンが印象的。
A"MORNING OF THE CARNIVAL FROM BLACK ORPHEUS" お馴染みのBLACK ORPHEUSをボサノバ調で。哀愁を帯びたFAMERのフリューゲルホンがいいね。MULLIGANの吹くバリトン・サックスはあくまでも柔らかい。
B"IN THE WEE SMALL HOURS OF THE MORNING" 美しいバラード。こういう曲を聴くとついつい口笛を吹きたくなる。ピアノがいなくてもコード楽器のギターが入っているので安心だ。
C"PRELUDE IN E MINOR" 僕の友人は何十年も前、毎夜、この曲を子守唄として聴いていたそうだ。確かに!
D"FESTIVAL MINOR" ミディアム・テンポの軽快なテーマ。FAMERのテーマの後に続くHALLのギターが歌っているね。続いて、BROOKMEYERが登場。FAMERに戻って、MULLIGANが引き継ぐ。オーソドックスな展開だが、最近のアレンジに凝った演奏ばかり聴いていると、むしろ、新鮮に聞こえる。
E"TELL ME WHEN" これも口ずさみたくなるテーマ。いいなあ!最近のジャズはこういうシンプルな美しさを忘れているよね。人との差別化を図ろうとするあまり難しい方、難しい方へと向かっている。
F"NIGHT LIGHTS(1965VERSION)" @の別録音。ストリングスが入っている。MULLIGANもここではクラリネットを吹いている。実に、メランコリーな演奏だ。
このアルバムにはMULLIGANのオリジナルが3曲(@、D、E)入っているが、これを含めてどの曲もいい曲だ。近頃、無機的で口ずさむのが困難なテーマが跋扈する中、ホッとする心地よさだ。このアルバムではシンプルで美しいテーマと見事なアンサンブルをたっぷりと堪能いただきたい。
話は変わるが、僕がBRAD MEHLDAU TRIOを凄いと思うのは、このアンサンブルの見事さなのだ。一見、MEHLDAUのワンマン・ピアノトリオのように見えるかもしれないが、さにあらず。3者の奏でる楽器が見事に調和して、プラスアルファの効果をもたらしているのだ。丁度、協和音で倍音が発生し音に厚みと奥行き現れるように。その結果があの名盤、"LIVE
AT THE VILLEGE VANGUARD"(JAZZ批評 479.)になっているのだと思う。
ピアノ・トリオであれ、2管編成であれ、ジャズの原点は同じだろう。「美しさ、躍動感、緊密感」はその結果として、アンサンブルの美しさに帰結するのだ。
ジャズとは何かをもう一度考えさせるアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2008.09.09)