HARVIE S / KENNY BARRON
主役はベーシストのHARVIE Sで、BARRONは脇役に徹している
BARRONのピアノを期待して購入した僕に満足感はない
"NOW WAS THE TIME"
KENNY BARRON(p), HARVIE S(b),
1986年月 スタジオ録音 (SAVANT SCD 2092)

このアルバムには録音年月日が記載されていない。ライナーノーツを読んでいくうちに1986年の録音らしいということが分かってきた。1986年というとKENNY BARRONがSTAN GETZと不朽の名作といわれた"PEOPLE TIME"(JAZZ批評 231.)を録音した1991年をさらに5年も遡る。とすれば、このジャケットはおかしい。当時の写真を見るとBARRONの頭髪は耳の上にだけは黒々とした髪があったはずだ。このジャケットのようにスキンヘッドになったのは2002年録音の"PEACE"(JAZZ批評 147.)以降のはずである。
僕はこのジャケットを見て2008年の新録だと思って購入したのだが、見事に騙された。ジャケットだけには最近のBARRONとHARVIE S の写真を採用したというのが真相ではないだろうか?こういう騙まし討ちは良くないねえ。道理でこのHARVIE Sというベーシストの名前をいたことがないわけだ。

@"CONFIRMATION" 
最初の出だしを聴いてがっかりする。音がすこぶる悪いのだ。ピアノの音はエコーがかって遠くに聞こえるし、反対に、ベースはボゴボゴの増幅音で前面ででしゃばっている。これはいただけない。2008年の録音とするならばこういう録音にはならなかっただろう。この音をもって、1986年録音と確信した。このアルバムはベースのHARVIE Sがリーダーのようで、あちこちでしゃしゃり出てくる。その度に、聴かされるボゴボゴのベース音に辟易する。
A"ALL OR NOTHING AT ALL" 
ベースがテーマを執る。BARRONのピアノはこの時期でも十分に存在感をアピールしている。
B"BODY AND SOUL" 
言わずと知れた名曲をベースがテーマを執る。
C"TAKE YOUR TIME" 
このアルバム、唯一のHARVIE Sのオリジナル。
D"DARN THAT DREAM" 
ベースによるギター奏法。こういうの聴くと「だからどうした?」って言いたくなっちゃんうだなあ。おまけに、この曲は尻切れトンボのようにフェードアウトで終わってしまう。
E"MIYAKO" 
W. SHORTERの書いたバラード。こういう曲を弾かせるとBARRONのピアノは天下一品だ。
F"ISN'T IT ROMANTIC ?"
 今度もベースがテーマを執っている。それにつけても、ベースが前面にバーンとでしゃばって4ビートを刻んでいるから、ピアノが全然引き立たない。
G"CHELSEA BRIDGE" 饒舌多弁なフリーテンポのベース・ソロ。これが延々と6分以上続く。

このアルバムの主役はベーシストのHARVIE Sで、BARRONは脇役に徹している。BARRONのピアノを期待して購入した僕に満足感はない。まさか、相方がこんなにアンプの増幅に頼ったベースを弾いているとは思わなかった。確かに、20年くらい前のアルバムでは、ベースがギターのように早弾きをするのが流行ったが、これって、ベースの本分ではないよね。ギターのように弾きたいならギターを弾けばいいのだし、そのほうがコードも弾けるし表現力は百倍もアップするはずだ。
このアルバムは録音バランスとベースの過剰な増幅で多分に損をしている。2008年リリースなら、CD化に際してもう少し手の施しようはあったのではないだろうか?   (2008.10.01)



独断的JAZZ批評 505.