CHRISTIAN JACOB
だって、エレキ・ベース(というのは間違いで、ウッド・ベースだった!)のピアノ・トリオなんて僕には全然興味がないもの
"LIVE IN JAPAN"
CHRISTIAN JACOB(p), TREY HENRY(b), RAY BRINKER(ds)
2007年10月 スタジオ録音 (DSD : XQAM-1506)

C. JACOB TRIOのアルバムは今までに2枚紹介している。1枚が2003年録音の"STYNE & MINE"(JAZZ批評 244.)で、もう1枚が2005年録音の"CONTRADICTION"(JAZZ批評 360.)だ。いずれも切れと歌心溢れるアルバムだった。しかし、JACOBといえば、TERJE GEWELT(b)とのデュオ3部作を忘れてはなるまい。その代表作が"HOPE"(JAZZ批評 275.)で、あとの2枚が"INTERPLAY"(JAZZ批評 407.)と"DUALITY"(JAZZ批評 420.)。いずれも「美しさ、躍動感、緊密感に溢れるデュオ・アルバムの絶品」と言いたくなるアルバムであった。

翻って、このアルバムは2007年10月に東京TUCでライヴ・レコーディングされたアルバムである。アルバムをトレイに載せて最初に思ったのは、ベースがエレキであったことだ。このTREY HENRYというベーシストはアコースティックもエレキ・ベースもこなす両刀使いらしい。しかし、何故にエレキで通したのか?最近は日本に来るミュージシャンで自分の楽器を持ってこない人たちが増えたのか?今年の4月にあったGIOVANNI MIRABASSIのコンサート(JAZZ批評 475.)でもベースのGIANLUCA REZIはYAMAHAのフレットレス・ベースを借用して演奏していたようだし、このHENRYも運搬の楽なエレキ・ベースだけ持ってきたのだろうか?それとも借り物?物見遊山じゃあるまいし仕事道具はきちんと持ってきてもらいたいものだ。というわけで、もうこれだけで大減点モノだなあと思ってしまう。

このアルバムの話題性は日本の四季に題材をとり、日本人なら誰でも知っている4曲に挑戦したことだろう。こうした一見、リスナーに媚びたような選曲は意見の分かれるところだろう。結果として、演奏が良いと認められれば、それはそれで良いと思うのだが・・・。

@"TOO CLOSE FOR COMFORT" 
A"IT NEVER ENTERD MY MIND" 
B"LITTLE EYES" 

C"HANA
(SPRING)" これは"HANA"であって、「花」ではない。必ずしも日本人の好む演奏に合わせる必要はないと思うのだが、聴く側には違和感が残る。
D"NATSUNO OMOIDE
(SUMMER)" これも"NATSUNO OMOIDE"であって、「夏の思い出」ではない。ここには尾瀬の湖面を渡る風の清々しさない。むしろ、都会的な暑苦しさだ。
E"AKATONBO
(AUTUMN)" これは「赤とんぼ」になっているね。
F"YUKINO FURU MACHIO
(WINTER)" サービス精神のつもりで日本の四季の歌を取り上げたのだろう。むしろ、ライヴで1回だけ聴けたということに集中したほうが価値があったかもしれない。CDとなって何回も繰り返し、繰り返し聴くものではないね。努力は買うけど、結果的に満足感はない。

G"STATE OF MIND" 
H"ALL OR NOTHING AT ALL" 
I"AT LAST" 
J"MUDDY SKIES" 

日本の四季4曲を除く残りの7曲は特にコメントの必要性を感じない。だって、エレキ・ベースのピアノ・トリオなんて僕には全然興味がないもの。
レコード会社にお願いしたいのは、エレキ・ベースは(el-b)と記述してほしい。それが分かれば最初から買わなかった。   (2008.08.03)

<後日談>
当HPの訪問者から、当日のライヴはエレキ・ベースならぬアコースティック・ベースで演奏されていたと連絡を受けた。当日のリスナーからのご指摘なので、これは間違いない事実として訂正させていただく。あるブログを確認したら、前日の渋谷JZ Bratではアコースティック・ベースで演奏されている模様がアップされていた。
そうか、これがアコースティック・ベースの録音とは!ちょっとショック。録音の取り方次第でアタック音のないピチカートの音色もあり得るんだと再認識。   (2008.08.10)



独断的JAZZ批評 495.