独断的JAZZ批評 475.

GIOVANNI MIRABASSI
MIRABASSIを喰ったLEON PARKER
"GIOVANNI MIRABASSI TRIO"
GIOVANNI MIRABASSI(p), GIANLUCA RENZI(b), LEON PARKER(ds)
2008年4月1日 武蔵野スイングホール

ジャズ狂の友人から4月6日のKEVIN HAYS TRIOのお誘いをもらったのが2月の中旬だった。2006年の"DREAMER"(JAZZ批評 439.)で酷評した後だけに躊躇するものがあった。ちょうど、その5日前の4月1日にMIRABASSIのコンサートがあることを知り、こちらなら行ってみようという話しになった。2月の初めに"TERRA FURIOSA"(JAZZ批評 464.)のレビューを書いたばかりで、ドラムスのLEON PARKERを生で聴いてみたいと思っていたところだ。
ほぼ1年前にMIRABASSIのソロを同じ武蔵野市民文化会館の小ホールで聴いた。そのときの印象を「甘ーいスウィーツばかり食べていると、塩辛いポテトチップスでも食べたくなる」(JAZZ批評 402.)と書いた。MIRABASSI自身も今の枠から飛び出るようなチャレンジをしてみたいと思っていたのだろう。程なくして、トリオの一角にLEON PARKERを据えていた。その初レコーディングが先の"TERRA FURIOSA"だ。
MIRABASSIはデビュー以来、毎年のようにメンバーを入れ替えているという。それはグループのマンネリズムを打破するためと、新しい血を入れることによる新境地へのチャレンジを求めたものだろう。最初、LEON PARKERの参加を聞いたときに、一種の違和感を感じた。事実、その2006年6月録音の"TERRA FURIOSA"は熟成度満点とまでは行かなかった。それから10ヶ月。LEON PARKERがどのようにこのトリオに溶け込んでいるか興味津々であった。今回のコンサート目的はLEON PARKER、その人であった。

ベースのGIANLUCA RENZIは何とヤマハのフレットレス・ベースを弾いていた。「これはないでしょう!」と思った。アコースティック・ベースの運送が大変なので、日本で調達したのか?借りたのか?案の定、これは電気ベースの音色でアコースティックな音色はひとつもしない。せいぜい、家庭での練習用に留めておいて欲しいと思った。「騙された!」
ドラムスのPARKERのドラム・セットも日本製のパールだ。帰り際にセットを盗み見たら、新品のように新しかった。もしかして、これも借り物?彼らは手ぶらで来たのか?が、PARKERの場合は自前のものであろうが借り物であろうが、凄腕ぶりを発揮できていたのでよしとしよう。
そのPARKERのドラムセットは太鼓が4点、シンバルが3点の計7点セット。このシンプルなセットから繰り出される多彩なドラミングに魅了されてしまった。その多彩なドラミングを紹介すると・・・
・スティックを両手で持つ(これは当たり前か)
・両手でブラッシュを持つ
・片手にスティック、左手にブラッシュ
・片手にスティック、あるいはブラッシュ、左手にマレット
・両方のてのひらで叩く
・片手にスティック、左はてのひらで腿を叩く
・スティックの根元で叩く、ブラッシュの先っちょで叩く、ブラッシュの根元のリングで叩く
・ドラムスの縁を叩く、シンバルの裏を叩く
・シンバルをブラッシュの根元のリングでこする
などなどの多彩なドラミングが歌うように、時に熱く演奏された。このとき、PARKERはMIRABASSIを喰っていた。
このPARKERの熱いドラミングは先のアルバムでは聴くことが出来なかった演奏だ。
本当にPARKERのドラミングを生で聴けてよかった。これだけでコンサート・チケットの4000円の元は取れた。
しかし、トリオとしてみると辛口にならざるを得ない。珍しくブルースなども演奏されていたが、MIRABASSI BLUESともいうべき独特のブルースであった。MIRABASSIのピアノは今回も饒舌多弁でどの演奏も似たような印象の演奏になっていたし、ベースは電気ベースで評価する気にもならなかった。LEON PARKERの凄さばかりが目立ったコンサートであった。   (2008.04.03)



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