独断的JAZZ批評 420.

TERJE GEWELT
全体的には非常にリリカルなアルバム
"DUALITY"
CHRISTIAN JACOB(p), TERJE GEWELT(b, fender jazz bass)
2001年4月 スタジオ録音 (RESONANT MUSIC : RM10-2)

このCRISTIAN JACOBとTERJE GEWELTのデュオは3作が発売になっているが、このアルバムは最も初期のデュオで2001年の録音だ。その後、2002年録音の"INTERPLAY"(JAZZ批評 407.)、"HOPE"(JAZZ批評 275.)と繋がっていく。
2002年録音の"HOPE"とは録音時期も近いし、演奏曲目では2曲が共通している。
@Eがそれだ。あえて違う点を挙げれば、このアルバムでは電気ベースを弾いている演奏が何曲かあることと、片やライヴで片やスタジオ録音。いずれも目指すところは一緒で、2者のインタープレイにおける緊密感と躍動感であり、比類のない美しさでもある。

@
"THE WATER IS WIDE" Traditional。"THERE IS A SHIP"というタイトルでも知られている。美しいテーマで心洗わせる。この曲はこのデュオのテーマ曲みたいなものだ。GEWELTのアコースティックなベース・ソロが素敵だ。JACOBのピアノはタッチが綺麗で全く迷いというものがない。
A"LONELY WOMAN" 
HORACE SILVERの書いた曲。これはなかなか渋くていいね。曲の素晴らしさを再認識させる演奏だ。HENRI TEXIERの"THE SCENE IS CLEAN"(JAZZ批評 274.)でも演奏されている。ただ、このアルバムはピアノが少々力不足。
更には、北川潔が"PRAYER"(JAZZ批評 312.)の中でも演奏しているが、こちらはORNET COLEMANの作曲で同名異曲。北川のアルコ弾きによる重厚さとラテン・タッチの軽妙さがミックスした演奏となっている。
B"SLOW DANCE" 
FENDER JAZZ BASSを使用。
C"CENTRAL PARK WEST" 
JOHN COLTRANEの書いた曲で、しっとりと演奏.。アコースティック・ベースのいい音色だ。地表を芝桜がピンクに染めていくように空間をアコースティックなピアノとベースが埋めていく。
D"THE GENTLEMAN" 
JACOBのオリジナル。まるでタイトルごときの演奏。

E"HOPE" スローバラード。フリーテンポの3分過ぎからベースが絡み始める。
F"WILDER" 
軽快なボサノバ調。今回もエレキ・ベースを使用してテーマをユニゾンで執ったりしている。一方で多重録音をしているようでアコースティック・ベースがベース・ラインを刻んでいる。
G"MUDDY SKIES" 
JACOBのオリジナルだが、GEWELTの力強いアコースティック・ベースのソロを聴くことが出来る。
H"TOUCH HER SOFT LIPS AND PART" 
太い重低音のベースとクリアなピアノの音色がベスト・マッチであるが、多分に叙情的ではある。
I"WESTWOOD" 
エレキ・ベース使用の3曲目。GEWELTのオリジナルであるが、これもリリカルな演奏だ。

このアルバムは"HOPE"に比べると落ち着いた曲調が多い。ガツンと一発!という演奏がないので物足りなく感じる人がいるかもしれない。僕もそういう一人。全体的には非常にリリカルなアルバムとなっている。
この3部作、いずれ劣らぬ秀作揃いであるが、あえて、3枚も揃える必要はないかも知れない。強いて1枚を挙げるとすれば、"HOPE"をお勧めしたい。拍手が沸いてはじめてライヴだということを認識させるほど生々しい録音であり、適度な緊迫感もある。心も躍り、躍動するチューンも入っているので色々な色彩を楽しむことが出来るはずだ。   (2007.06.17)