OLIVIER ANTUNES
チョイ悪風なGINMANのベースとセンシティブなLUNDのドラムス、端正なANTUNESのピアノが揃ったら、想像もしなかった新しい世界が開けたという感じで・・・・・参った!
"1'st SKETCHES"
OLIVIER ANTUNES(p), LENNART GINMAN(b), MORTEN LUND(ds)
2005年12月 スタジオ録音 (CALIBRATED : CALI043)

OLIVIER ANTUNESのアルバムというと、このアルバムと同じ2005年に録音されたデュオ・アルバム"ARCHING"(JAZZ批評 346.)が思い出される。大ベテランのベーシスト、JESPER LUNDGAARDとのデュオは優しさと品性に溢れており瑞々しい作品だった。それから3ヵ月後の12月にこのアルバムが吹き込まれた。
ベースにはCARSTEN DAHLとの共演が多くチョイ悪オヤジ風のLENNART GINMAN(JAZZ批評 221.226.など)、ドラムスにはSTEFANO BOLLANIの共演やセンシティブなドラマーとして人気上昇中のMORTEN LUND(JAZZ批評 210.264.など)が参加している。一見、ミス・マッチングとも思える異色の組み合わせだ。実は、アルバムが届いてみるまでベースはJESPER BODILSENだと思っていたのだが、それは来年の来日メンバーだったことを後で知った。(KASPER VILLAUMEを加えた2ピアノ・トリオでの来日公演は何を置いても行かねばならないでしょう!)
でも、この勘違いが幸いした。異色の組み合わせで想像を超える演奏に大満足。全9曲、演奏時間は47分弱と短めだ。
FHを除く7曲がANTUNESのオリジナルで、彼の作曲能力の高さをうかがい知ることが出来る。「いいテーマに、いいアドリブ」が体現できるでしょう。
ANTUNESは1973年生まれというから、現在、34歳。これからが楽しみなピアニストの一人だ。

@"NIGHT WALK" 
メランコリーな雰囲気を醸し出した佳曲。重厚なベース音にセンシティブなシンバリング。その間を縫うグルーヴィなピアノ。"ARCHING"ではみせなかったANTUNESの新しい一面を堪能できる!音の切れとノリのよさで「ウ〜ム!」と唸ってしまう。このアルバムの一押し。
A"OLLI'S OLIVE" 
ミディアム・ファーストのテンポで4ビートを刻んでいく。ここでは多彩なLUNDのドラミングに傾聴したい。後半にはミディアム・テンポの4ビートに切り替わり、「おっ!」と思ったところでフェード・アウトしてしまうのがまことに惜しい!
B"BLUE ORANGE" 
なかなか味わいのある曲で「間」がいいね。センスの良さが感じられる。
C"CUT AWAY" 
躍動するLUNDのドラミングで始まる。ANTUNESの軽やかな右手としなやかな左手のバッキングを堪能いただきたい。

D"TURNING YELLOW" 
これもテーマがいいね。GINMANの太いベース・ソロがフィーチャーされている。
E"ABYSSINIAN LOVE AFFAIR" 
フリー・テンポの叙情派的演奏。
F"THE DUKE " DAVE BRUBECKの曲。ここではアメリカ西海岸のように明るくて物憂げな風が頬をよぎる・・・そういう感じ。メランコリックなミディアム・テンポのシンバリングに眠気を催してくるような・・・。
G"OFFSHORE RIG" 
チョイ悪風なベース・ワークに乗ってピアノが踊ってる。
H"MY ONE AND ONLY LOVE" なんと味のあるアレンジなのだろう!超スローな演奏で1コーラスに4分半をかけた。僕はこの演奏を聴いてJOHN COLTRANEの"BALLAD"を想い起した。地味ながら強く印象に残るLUNDのドラミング!是非、スポット・ライトを当ててお聴き願いたい。

このアルバムをトレイに載せるまで、この組み合わせではミス・マッチングで期待薄と思っていた。ところが、トレイに載せた瞬間にミス・マッチな面白さに心躍らせた。
チョイ悪風なGINMANのベースとセンシティブなLUNDのドラムス、端正なANTUNESのピアノが揃ったら、想像もしなかった新しい世界が開けたという感じで・・・・・参った!ANTUNESとLUNDとは水と油ほど演奏スタイルの違うGINMANの参加が二人の内なる野生に火をつけたという感じ。だから、ジャズは面白いということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2007.11.19)



独断的JAZZ批評 447.