CARSTEN DAHL
悪く言えばやりたい放題、
良く言えば、自由奔放
ライヴのその場で聞くのが一番
"GINMAN BLACHMAN DAHL!"
CARSTEN DAHL(p), LENNART GINMAN(b), THOMAS BLACHMAN(ds)
2003年1月、2004年1月 ライヴ録音 (VERVE 9866854) 


このジャケット、いかにも曲者風ではないか・・・。という、期待感を裏切らないアルバム。ライヴという条件も手伝い、悪く言えばやりたい放題、良く言えば、自由奔放。
型に嵌らない、むしろジャズの原点としての即興性をみなぎらせている。実力があるからこそ出来るジャズとも言える。
LENNART GINMANのベースの録音のセッティングが良くなくて、音色がチープなのがいただけないが、DAHLのピアノが吼え、BLACKMANのドラムスは跳躍している。3人とも相当の使い手だ。その3人がライヴというシチュエーションで思う存分のノリを披露した。ブローといっても良いかも知れない。

ライヴという演奏現場をCDというメディアに記録し、しらふのリスナーが何回も繰り返し聴けてしまうというのは、ある意味、不幸であると言える。ライヴの聴衆はその一瞬を切り取って聴く訳であるから、その刹那に良きも悪きも闇に消えていってしまうわけだ。が、記録媒体はそうは行かない。何回も繰り返し聴ける故に、見えないところが段々と見えてきてしまうことが「不幸」と言ってもいいだろう。
こういうライヴ盤は自らをライヴに近いシチュエーションに身を置いて聴いてみたいものだ。アルコールでも口にしながらリラックスして、ライヴ会場の雰囲気を想像しながら聴くのが一番だろう。

@"WELL,YOU NEEDN'T" T.MONKの曲。最近、あちこちでMONKの曲が取り上げられるケースが多い。その場の雰囲気、その時のノリで一挙にテンポ・アップになったり、戻ったり。緩急自在。ライヴでこんな演奏されたら唸るね!一方で、かなりアレンジされているという印象も拭えない。

A"ALL BLUES" 今度はM.DAVISの曲。名盤"KIND OF BLUE"(JAZZ批評 70.)がすぐに想起される。この演奏は"COOL !"というよりは"HOT !"だ。
B"BLUE IN GREEN" この曲も"KIND OF BLUE"に収録されている名曲。次の選曲もMILES作であることをみると、相当、MILES DAVISを意識したアルバムなのか。
C"MILESTONES" 一転、超高速の4ビート。シンバリングが流れてしまうのが惜しい。

D"HOW DEEP IS THE OCEAN" このシチュエーションにしっとり系のバラードは似合わない。
E"CARAVAN" これも超高速の4ビート。
F"SONNYMOON FOR TWO" 今度はSONNY ROLLINSの書いたブルースだ。ミディアム・スローでブルージーに演奏している。

CARSTEN DAHLというピアニストはイマジネーションもテクニックも豊かなプレイヤーだと思う。ただし、この、組み合わせが必ずしもベストとは言い切れないだろう。違うサイドメンとの演奏も聴いてみたいものだ。
やっぱり、こういう「悪ノリ」とも「曲者風」のもいえるライヴはライヴのその場で聴くの一番だ。CD化によって、その分、採点が辛くなるのもある程度仕方がない事とご勘弁願いたい。もし、ライヴの場に立ち会っていたなら、5つ星を献上しただろう。   (2004.09.23)



独断的JAZZ批評 221.