HENRI TEXIER
このアルバムはジャズ・ジャイアンツの名曲集だ
オリジナルが全くない分、個性に乏しいと言えるかもしれない
"THE SCENE IS CLEAN"
ALAIN JEAN-MARIE(p), HENRI TEXIER(b), ALDO ROMANO(ds)
1991年1月 スタジオ録音 (LABEL BLUE , LBLC 6540 HM 83) 

HENRI TEXIERという名前を聞いてフランスのジャズ・ベーシストとひらめいた人は35年前にも相当、ジャズを聴きこんでおられた方と推察する。
私事で恐縮だが、僕の学生時代にジャズ喫茶に良く流れていたアルバム、PHIL WOODS & EUROPEAN RHYTHM MACHINEの"ALIVE AND WELL IN PARIS"(JAZZ批評 52.)が強く印象に残っている。ヨーロッパのジャズもこんなに凄いことになっていたのかと感心したものだった。その時のベースがHENRI TEXIER。当時としてはかなり斬新なベースでフリーでのメロディックなソロや良く歌うベース・ソロが印象的で、当時、僕もベースを弾いていたものだからコピーさせてもらった記憶がある。そんなこともあって、少し古い録音であるが購入してみた。

@"STOLEN MOMENTS" 前述の"ALIVE AND WELL IN PARIS"でも演奏されていたOLIVER NELSONの印象深い曲。テーマの素晴らしさとWOODSの咆哮とも絶叫とも言えるアルト・サックスが凄かった。
この曲のテーマは16小節であるが、アドリブは12小節のマイナー・ブルースで演奏されている。ROMANOの軽快なブラッシュ・ワークに乗ってブルース・フィーリングたっぷりのベースが4ビートを刻みピアノが歌う。

A"THE SCENE IS CLEAN" TADD DAMERONの曲。何故か、この曲と次の曲だけスネア・ドラムがバタバタとうるさい。
B"ARRIVAL" HORACE PARLANの曲。
C"SKATING IN CENTRAL PARK" JOHN LEWISの書いた曲で、都会的センスの溢れるワルツ。
D"SOUL EYES" 今度はMALWOLDRONの曲。
E"LOTUS BLOSSOM" KENNY DORHAMの曲。アップ・テンポのシンバリングに乗ってベースが唸る。

F"LONELY WOMAN" HORACE SILVERの曲。
G"MINORITY" GIGI GRYCEの曲。最近ではCARSTEN DAHLが"BLUE TRAIN"(JAZZ批評 267.)の中でも演奏している。
H"STABLEMATES" BENNY GOLSONの曲。軽快なROMANOのブラッシュ・ワークに乗ってベースが唸る。。
I"LAMENT" J.J.JOHNSONの曲。

欲を言えば、ピアノのALAIN JEAN-MARIEがもっと個性的であれば、なお良かった。印象としてはいかにも平凡。サイドメンが前述のHENRI TEXIERであり、ドラムスは今をときめくALDO ROMANOとくれば、致し方ないか!御すべきはROMANOだったかも知れない。
一方、ALDO ROMANOは名ドラマーであると同時に名コンポーザーでもある。古くは
1989年録音のSTEVE KUHN"OCEANS IN THE SKY"(JAZZ批評 82.)の中にある"DO"、最近では2003年録音のROMANO自身のリーダー・アルバム"THREESOME"(JAZZ批評 215.)は全曲、ROMANOの作曲であった。とくとその実力のほどを以上の2枚でご確認あれ!
今回の主役、HENRI TEXIERは残念ながら、昔の独創的なアイディアと力強いピチカートがあるとは言えない。

このアルバムはジャズ・ジャイアンツの名曲集だ。
オリジナルが全くない分、個性に乏しいと言えるかもしれない。   (2005.06.04)



独断的JAZZ批評 274.