KLAUS IGNATZEK
「嘘でしょう!」
と言いたくなるような気の合った演奏に思わずニンマリしてしまう
"SONGS WE DIG"
KLAUS IGNATZEK(p), JEAN-LOUIS RASSINFOSSE(b), HANS DEKKER(ds)
2006年2, 4月 スタジオ録音 (NAGEL HEYER : CD 101)
年に何回も行くことのない御茶ノ水のDISK UNIONではあるが、幾たびに、良いCDをゲット出来るという不思議な店なのだ。前回、行ったのが1月。その時は店内の平積みであと1枚となっていたMATEJ
BENKOの"UNIVERSALITY"(JAZZ批評 391.)を幸運にもゲットできた。その他にもたまたま居合わせたその時に掛かったCDが気に入って即ゲットしたアルバムがある。NIKKI
ILES "EVERYTHING I LOVE"(JAZZ批評 213.)とか、GEORGE ROBERT "SOUL SEARCHING"(JAZZ批評 269.)等がそうだ。
今回の、このアルバムもその類。店内にいたのは15分だったけど、その間に、このアルバムの1曲目が流れて、即、購入というわけ。何か良いめぐり合わせのある不思議な店なのだ。所用を済ませて、帰りには中古フロアーに寄って、昨年の話題作、KASPER
VILLAUMEの"HANDS"をゲット。大いに満足しながら帰ってきたものだ。
@"INVITATION" いつもながら、良いピアノトリオというのは3者のバランスが良い。このバランスとは力量も含めての話だ。そして、ピアノもベースもドラムスも音色が良いね。粒立ちのはっきりしたピアノ、アコースティックな木の音色のベース、サクサク、チンチカ・チンチカのドラムス。
A"TWO FOR THE ROAD" これもいい曲だ。ピアノの右手も良いが、左手のバッキングが渋い。ベース・ソロも良く歌っている。HENRY
MANCINIの書いた曲。この曲が気に入った方はPAT METHENYとCHARLIE HADENのデュオ・アルバム"BEYOND
THE MISSOURI SKY"(JAZZ批評 6.)もお聴きいただきたい。
B"FOOLISH DOOR"
C"EL GAUCHO"
D"502 BLUES" RASSINFOSSEのベース・ソロが配置されているが、ふくよかでアコースティックな音色と良く歌うベース・ラインで十分に聴かせてくれる。
E"VOYAGE" KENNY BARRONの曲。アップ・テンポで生き生きとした演奏。こういうのを聴くと同じドイツのピアノ・トリオであったJOERG
REITAERの"SIMPLE MOOD"(JAZZ批評 66.)を思い出す。質実剛健というか、ジャーマン魂というか、切れのあるピアノを中心にストレートな演奏でクライマックスへと上り詰めていく。
F"WHEN SUNNY GETS BLUE" 僕の大好きな曲のひとつ。しっとりと3コーラス。
G"BEAUTIFUL, BUT WHY?" 今度はMICHEL PETRUCCIANIの曲だ。DEKKERがサクサクと気持ちの良いブラッシュ・ワークを見せた後は4ビートでシンバルを刻んでいく。続くRASSINFOSSEのソロも良いね。DEKKERはまた、ブラッシュに持ち直してソロを執り、テーマに戻る。
H"STAR EYES" ブラッシュ・ワークも軽快に。
I"IF I SHOULD LOSE YOU" ミディアム・テンポでおなじみのスタンダードを心地よく演奏。指でも鳴らしながら聴いて欲しい。
J"WOODY'N' YOU" こういうアップ・テンポの演奏をさせても一糸乱れることがないし、鍵盤を駆け巡る右手はあくまでも流麗だ。磐石の演奏なのだ。
K"CARAVAN" ベースがテーマを執る。ピアノのバッキングもスリリングで良いね。10分以上の長尺だが時間を忘れさせる変幻自在のインタープレイが堪能できる。
KLAUS IGNATZEKにとって、このアルバムは19年ぶりのピアノ・トリオだという!?「嘘でしょう!」と言いたくなるような気の合った演奏に思わずニンマリしてしまう。
個々のプレイヤーの質の高さに加えて、トリオでのプラスαが感じ取れる秀作。バラードから急速調まで、幅広く上手にこなした力量に敬服した。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2007.04.20)