「木綿漉しの豆腐」のような素朴さがある
"EVERYTHING I LOVE"
NIKKI ILES(p), DUNCAN HOPKINS(b), ANTHONY MICHELLI(ds)
2002年1月 スタジオ録音 (BASHO RECORDS SRCD 5-2) 

このアルバムを最初に聞いたのは御茶ノ水のDISKUNIONの店内BGMだった。もう、1ヶ月も前のことだ。その間に、色々とほかにも入手したアルバムが重なって今日になってしまった。初めて聴くピアニストだった。後で調べるとイギリスの女性ピアニストだった。(録音はカナダのトロント)
その時も何か心に留まるものがあった。だから購入したわけであるが、どうもそれはBの"ORBIT"という曲が原因らしい。何とこの曲はBILL EVANSの曲であった。購入後も、この曲ばかりが聴きたくなるという症状が治まらない。こうしてキーボードを打っている今もこの曲を中心に聴いている。
ピアノ・トリオとしてのバランスもまずまずだ。美しいタッチではあるけれど、ヨーロッパの透明感のある美しさとは少し違う。少しの温かみと泥臭さがあるといった方が良いだろうか。
EVANSの曲が2曲。JOHN TAYLORの曲とオリジナルがそれぞれ2曲。そのほかにCOLE PORTERやENRICO PIERANUNZI、GERSHWINなどの曲が入っている。

@"EVERYTHING I LOVE" COLE PORTER作。
A"AMBLESIDE DAYS" いきなり始まる躍動感溢れるイントロが良い。
B"ORBIT" BILL EVANSの曲。EVANSも美しいだけではない、こんなに良い曲を書いていたんだ。ピアノのブロックコードに乗ってベースがソロをとる。泥臭さがスパイスとなって効いている。ノリの良い演奏で何回も繰り返し聴きたくなる。このアルバムのベスト。

C"I LOVES YOU PORGY" GERSHWINの書いた美しい曲。甘さに流されず、一音一音を丁寧に紡ぎ上げた。味わい深い1曲。
D"SO TO SPEAKE" NIKKIのオリジナル
E"FLY'S DILEMMA" オリジナル。これも泥臭いテーマ。
F"YOUR STORY" これもBILL EVANSの曲。JAZZ批評 142.でも演奏されている美しくも哀しい曲だ。

G"EVANSONG" 
H"DON'T FORGET THE POET" PIERANUNZIのワルツ。
I"REMEMBER HYMN"

このNIKKI ILESのピアノは煌びやかで流麗なスタイルというには程遠い。むしろ、「木綿漉しの豆腐」のような素朴さがある。ほんの少しの泥臭さを併せ持ち、それがスパイスとしてユニークな味わいを出している。ジックリと聴き込んで欲しいアルバムだ。
このBASHO RECORDSというのはイギリスのレコード会社らしいが、何故か、相撲取りが土俵の上で蹲踞の姿勢をとった絵柄がトレードマークになっている。また、なかなか洒落たジャケット・デザインで僕は気に入っている。   (2004.08.12)



NIKKI ILES

独断的JAZZ批評 213.