独断的JAZZ批評 400.

ROBERT ROOK
やはり、ジャズはコード進行でしょう!
"HYMN FOR FALL"
ROBERT ROOK(p), THOMAS WINTHER ANDERSEN(b), DICK VERBEECK(ds)
2005年4, 5月 スタジオ録音 (TWA MUSIC : CD0306)

ROBERT ROOKのアルバムは以前から一度聴いてみたいと思っていた。再発盤の"INTRODUCING"が出たので購入しようというその矢先に、このアルバム(新譜)が発売となった。同じ買うなら新譜にしようということでこのアルバムをゲット。ROOKはオランダのピアニストだという。ホームページではこのアルバムの試聴が出来る。興味のある方は試聴してみると良いと思う。"ROBERT ROOK"で検索できる。

オランダのピアノ・トリオというとPETER BEETSの"FIRST DATE"(JAZZ批評 182.)や"PAGE TWO"(JAZZ批評 133.)、JURAJ STANIKの"SHAKEN NOT STIRRED"(JAZZ批評 170.)などが思い浮かぶ。甘さだけに流れないしっかりとしたグルーヴ感が共通している。

@"HYMN FOR FALL" タイトルとは裏腹に泥臭いモーダルな曲だ。テーマに続きANDERSENのベース・ソロが用意されている。なかなか力強いベース・ワークが聴ける。一方、ピアニストのROOKであるが、結構、ハードなピアノ・プレイをする。そういえば、HERBIE HANCOCKの影響を受けているような印象も受ける(JAZZ批評 65.)。それに呼応してドラムスも遠慮会釈がない。
A"DRAINED FEELINGS" 
B"ROVING ROOK" アップ・テンポの気持ちの良い4ビートを刻んでいく。これもモーダルな演奏だ。どちらかというと「弾き倒す」というハードな演奏だ。

C"INSINUATION" 表現が上手くないが、「少々、落ち着きがない」という感じ。しっくり収まるところに収まるという感じがない。こういう感じってGEORGE COLLIGANの"PAST-PREZENT-FUTURE"(JAZZ批評 263.)に似ているなあ。
D"MAGIC MOMENTS" 少々重たいドラムスのソロで始まる。が、これがずーっと尾を引いていく。すっきりと軽妙に躍動しないところが不満だ。無機的な饒舌ピアノ・プレイが聴ける。長尺の10分強。
E"KITTA'S BOP TIC" ラテン・リズムに乗った饒舌なピアノ。「間」がないなあ。聴き疲れする。
F"GLOBAL PERSPECTIVE" しっとり系のバラードだが、ワン・パターンの左手のコードに色気がまるでない。全て、このパターンだ。

このアルバムは全ての曲がベーシストのTHOMAS WINTHER ANDERSENの書いた曲らしい。ライナー・ノーツもANDERSENが書いている。主役はANDERSENかな?強いビートの持ち主で要チェックのベーシストだ。コンポーザーとしての評価も高いようだ。このベーシストは別な機会にもう一度聴いてみたいと思った。

アルバム全体としてはモーダルな演奏が印象に残った。僕は、モーダルな演奏というのはあまり好きでない。やはり、コード進行があって、そのコードという範疇の中でアドリブを執るほうが色々な味わいが出て好きだ。スケールの制約だけでは演奏の幅があるようで、実はないような気がする。結果として、モード手法の演奏というのは皆似たような演奏になってしまう。そして艶っぽさのない無機的な演奏になってしまう・・・モード演奏からはそういう印象を払拭することが僕には出来ない。演っている方は自由度が高い分、面白いともいえるのであろうが・・・。好き嫌いと言ってしまえばそれまでだが、やはり、ジャズはコード進行でしょう!
尤も、モード・ジャズが好きだという人には満足のいくアルバムかもしれない。   (2007.03.15)