いわゆる4ビートジャズとは全然違うが
新たなジャズの方向性を示唆する意欲的な快作。
"THE NEW STANDARD" HERBIE HANCOCK(p), MICHAEL BRECKER(ts,ss), JOHN SCOFIELD(g), DAVE HOLLAND(b), JACK DEJOHNETTE(ds), DON ALIAS(perc)
(一部にブラスやストリングスが入る)1995年〜96年録音

先ず、7曲目から聴きたい。"SCARBOROUGH FAIR" 。
おなじみの3/4の原曲を4/4で演奏する。ピアノのイントロのあと、HOLLANDの力強いベースラインの上でBRECKERのソプラノ・サックスによるテーマが始まる。DEJOHNETTEのドラムスといいベースといい、皆が力強いフレーズを刻む。続くSCOFIELDのギターは何と言えぬ独特の匂いを発散させる。まさに、曲者の味わいなのだ。 HANCOCKのピアノもブロー気味に煽り立てる。
ベースの強いビート感と前ノリのドライブ感、センシティブなドラムスのシンバリングの合間に入るおかず、全てが強烈なドライブ感となってプレイヤーに連鎖の輪を広げていく。しかも、それぞれが強烈な個性を表現しながら、全体としての統一感はまとまっている。
残念なのはエンディングの途中でフェードアウトしてしまうこと。

2曲目の "MERCY STREET" はテーマが良い。非常に乗りやすく覚えやすい佳曲。パーカッションが効果的。その上でピアノが楽しげにスウィングする。
3曲目がBEATLESの「ノルウェーの森」。ブラスとストリングスも入ったビックバンド風。
6曲目 "LOVE IS STRONGER THAN PRIDE" はSCOFIELDお得意のこすれ気味のギターが印象的な役割を果たしている。都会的雰囲気の洒落た曲。
10曲目の "MANHATTAN" はHANCOCKのオリジナル。ピアノ・ソロでしっとりと歌い上げる。

"THE NEW STANDARD" のタイトル通り、JAZZというジャンルの枠を離れて、 STEVIE WONDER の "YOU'VE GOT IT BAD GIRL"、PRINCEの "THEVES IN THE TEMPEL" などにも挑戦している。どの曲も非常に密度の高い演奏だ。
いわゆる4ビートジャズとは全然違うが、新たなるジャズの方向性を示唆していると同時に意欲的な快作だと思う。    (2002.04.29)


HERBIE HANCOCK

独断的JAZZ批評 65.