独断的JAZZ批評 397.

DAG ARNESEN
特に、読書のお供に最適なアルバムだと思うのだけど、いかがだろう?
"NORWEGIAN SONG"
DAG ARNESEN(p), TERJE GEWELT(b), PAL THOWSEN(ds, percussion)
2006年10月 スタジオ録音 (RESONANT MUSIC : RM17-2)

DAG ARNESENといえば、2004年録音の"TIME ENOUGH"を思い起こす。メンバーは今回と同じ。ベースには、CHRISTIAN JACOBとのデュオ・アルバム"HOPE"(JAZZ批評 275.)の名演で名を馳せた、名手TERJE GEWELTが参加している。そして、ドラマーにPAL THOWSEN。このドラマー、ややもすると甘く流れそうな雰囲気をしっかりと受け止めて、グルーヴ感のあるジャズに押し戻していた。
その3人が揃って、今回は自国、ノルウェーのフォーク・ソングに挑んだアルバムだ。ここにあるのは、まさに伝統に根ざしたフォーク・ソングである。美しくも清々しい曲の数々だ。全11曲中、8曲がノルウェイのフォーク・ソングだ。

@"VED RONDANE / BY THE RONDANE MOUNTAINS"
 山々から湧きいずる水の流れの如し。
A"OLA, OLA, MIN EIGEN UNGE / OH, OLE, OLE, I LOVE YOU DEARLY" 最近はドラムスの代わりにパーカッションを使用する例が増えてきた。同じノルウェイのHELGE LIENの"TO THE LITTLE RADIO"(JAZZ批評 342.)あたりの影響を受けているのだろうか?
B"MARGIT HJUKSE" 2ビートのベース・ワークに軽快なブラッシュ・ワーク。
C"ARIETTA" いかにもフォーク・ソングという感じの曲である。美しく清々しい。
D"EG SER DEG UT FOR GLUGGJIN / I SEE YOUR SHADOW YONDER" なかなかグルーヴィな演奏で、4ビートが躍動する。実に気持ちの良い演奏だ。GEWELTのご機嫌なソロを挟んでテーマに戻る。

E"AAGOTS FJELDSANG / AAGOT'S MOUNTAIN SONG" パーカッションの奏でる音が効果的。
F"HAVAR HEDDE" 北欧の冷たく寒い雰囲気はない。むしろ、南国の明るさだ。
G"GJENDINES BADNLAT / GJENDINE'S LULLABY" これはいかにも北欧の子守唄。透明なピアノの音色をバックにベースがテーマを執る。
H"DEN NORSKE DALEVISE / NORWEGIAN VALLEY SONG" メルヘンチックなテーマ。透明感と清々しさの溢れるピアノ・ソロ。
I"FALKVOR LOMANSSON" やっとPAL THOWSENらしいドラミングが聴ける。同時に、ベースもピアノも躍動していく。3者の素晴らしいコンビネーションの高まりとともにクライマックスへ。GEWELTのソロを経て、テーマに戻る。
J"SAETERJENTENS SONDAG / THE CHALET GIRL'S SUNDAY" 

このアルバムはグルーヴ感を期待する人にはあまりお奨めできない。テーマがフォーク・ソングに根ざしているので、どの曲も曲想が優しい。多分、美しさと清々しさを求める方には気に入っていただけるだろう。そんな中でDは気持ちの良いグルーヴ感を味わえる。
よりグルーヴ感や躍動感を求めるなら、先に書いた"TIME ENOUGH"(JAZZ批評 284.)をお奨めしたい。全曲、DAG ARNESENのオリジナルという意欲的なアルバムで最後を締めるピアノ・ソロがさらに素晴らしい。
フォーク・ソング的美しさを求めるならJAN LUNDGRENの"LOCKROP"(JAZZ批評 338.)をお奨めしたい。ノルウェイとスウェーデンの違いがあるが、こちらの方がデュオである分、より濃密なインタープレイが堪能できると思う。

このアルバム、ながら聞き族にはうってつけかも。車の中で聴けばイライラせずに乱暴運転になることもないだろう。特に、読書のお供に最適なアルバムだと思うのだけど、いかがだろう?   (2007.02.24)