独断的JAZZ批評 341.


ERIC REED
今や、JAZZはヨーロッパの土壌にこそ定着しつつあるといったら言い過ぎだろうか?
"HERE"
ERIC REED(p), RODNEY WHITAKER(b) WILLIE JONES V(ds)
2005年7月 スタジオ録音 (MAXJAZZ MJX 216)

ERIC REEDのこのアルバムの前評判はすこぶる良いようだ
全11曲中8曲がREEDのオリジナルだ
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僕が今までに「厳選PIANO & α」で紹介したアルバムの中に、黒人だけのピアノ・トリオ・アルバムが4枚しかないことが分かった。以前から「黒人だけのトリオ・アルバム」というとかなり少ない感じを持っていたが、いざ、調べて見ると120枚の「厳選」アルバムの中にたった4枚しかなかった。WYNTON KELLYの"PIANO"(JAZZ批評 11.)、KENNY BARRONの"LIVE AT BRADLEY'S"(JAZZ批評 22.)、JUNIOR MANCEの"JUNIOR"(JAZZ批評 57.)、あと1枚はBARRY HARRISの"MAGNIFICENT"(JAZZ批評 92.)だ。特に、最近録音のアルバムではほとんど購入すらしていないことも分かった。
だから、久々に前評判の高いこのアルバムに対する期待感は絶大なものがあった。で、蓋を開けてみると期待感は穴のあいた風船の如く萎んでしまった。
ERIC REEDというピアニストは、僕にとってはなかなか購入に結びつかないピアニストの一人で、試聴段階でいつも終わっていた。唯一、ピックアップしたのが"
IMPRESSIVE & ROMANTIC"(JAZZ批評 211.)で、このアルバムには酷くがっかりしたものだ。

最近、感じているのは、どうも僕は黒人サイドメンのアルバムと相性が良くないということ。特に、ベースは感性というか嗜好が合わない。ひとつにはヨーロッパのベーシストを良く聴いているので、どうしてもそれとの比較になる。クラッシクの基礎を学んでいるヨーロッパのベーシストは正確な運指と正確な音程で僕らを魅了する。和声的にもぴったりと嵌るんだけど、黒人ベーシストのそれはディスコードしているように僕には聴こえる。音の納まりが良くないのだ。それとモーダルな演奏が多いこともその一因になっているだろう。加えて、黒人特有のアグレッシブさやグルーヴィさを、白人ベーシストも同様に、あるいは、それ以上に表現できるようになったことも大きい。
ドラムスについてもヨーロッパには良いドラマーが一杯輩出してきた。よく歌い、配慮も利いているのでピアノが良く引き立つ。だから、耳に心地よい。
ピアノもベースと同様でクラッシクの薫陶を受け、高い技術と豊富なアイディアで黒人のそれを圧倒しているように思う。リスナーの質を含め、今や、JAZZはヨーロッパの土壌にこそ定着しつつあるといったら言い過ぎだろうか?


@"STABLEMATES" 
饒舌で冗漫なシングル・トーン。メリハリがなくて切れがない。
A"KOKOMO" 
2分と短い。
B"I C H.N." 
C"HYMN" 
1分と半。
D"WHY?" 
E"26-2" 
COLTRANEの書いた曲も冗漫なシングル・トーンが最初から最後まで。
F"WISH" 
しっとり系のテーマ。こういうバラード演奏でもシングル・トーンが饒舌であり平淡である。
G"IT'S EASY TO REMEMBER" 
色気のないベース・ワークで興が醒める。
H"I GOT NOTHIN'" 
I"IS THAT...?" 
J"ORNATE" 
約13分の長尺もの。前半はJONES Vが活きの良い4ビートを刻んで楽しませてくれるが、ピアノのソロ以降の後半はとってもダレる。でも、前半はこのアルバムのベスト。後半のスロー・プレイにおいては、REEDはもう少し歌心のあるピアニストと思っていたのだが、少々がっかりした。

久しぶりの黒人トリオに、期待感が大きすぎたのかも知れない。その反動で少々辛辣になってしまった。  (2006.05.27)