独断的JAZZ批評 340.


GREGG KALLOR
どの演奏もそこそこだけど、それ以上ではない
もう1回聴いてみたいと思わせる心を鷲掴みするようなインパクトに欠ける
"THRE'S A RHYTHM"
GREGG KALLOR(p), CHRIS VAN VOORST VAN BEEST(b) KENDRICK SCOTT(ds)
2001年12月 スタジオ録音 (3G RECORDS 107001)

「インディーズ系の貴重なアルバム」という殺し文句で買ってしまったが・・・
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最近読んだ本に「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(リリー・フランキー著)がある。この本は「2006年本屋大賞」受賞作品である。副題に「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」とある。この本は何気ない日常を淡々と綴った心温まる傑作だと思う。この大賞の選定には全国の書店員368名が参加し、「自分たちが最もお客に勧めたい本」を選んだという。第1回目の2004年の大賞が「博士の愛した数式」(小川洋子著)でこの作品も心温まる本で、いずれ劣らず強い感動を与えてくれた。2005年の大賞「夜のピクニック」(恩田陸著)も近々、読んでみたいと思っている。
ジャズの世界でもこの手の話があってもいいのではないかと思い掲載した。恐らく、一番数多くジャズを聴いているジャズ・ショップの店員の方に、「これはと思う1枚」を推薦してもらえるのは嬉しいことだ。本と同様に、プロの評論家とは違った視点のアルバムが選ばれるのではないかと推測するのであるが・・・。

ところで、このアルバムはHMVの宣伝文によれば、寺島靖国氏が「JAZZピアノ・トリオ名盤500」という本を出版し、その中に選ばれたアルバムだそうだ。名盤500というとちょっと多い気もするが、目線を少し下げて広く遍く聴いてもらいたいという意図だろうか?

@"THE VOICE OF REASON" 
5/4拍子。
A"ON GREEN DOLPHIN STREET" 
B"THERE'S A RHYTHM" 
このアルバムのタイトル曲になっている。僕は知らないが、SEXSMITHという人の書いた曲。ノリの良い3/4のワルツだ。
C"DOUBLE DOWN" 

D"EVERY TIME WE SAY GOODBYE" 
この曲を聴いて、僕はBRAD MEHLDAUのピアノ・プレイを思い出した。音作りやフレージングがMEHLDAUのトリオとよく似ている。ベースやドラムスまで似ているのだ。MEHLDAUのトリオでこの曲を聴いたことがあるような気がしてディスコグラフィーを調べてみたが、リーダー作にはなかった。あくまでもKALLORのピアノ・プレイがMEHLDAUに似ていたということなのだろう。ちょっと驚いた。
E"255" 
F"LOST" 
G"SO IN LOVE" 
Dと同様、これもCOLE PORTERの名曲。
H"YOU'RE MY EVERYTHING" 
ここではO.PETERSON張りのテクニックを聴かせるが・・・。
I"CORAL PEAK" 
J"THE LAST WORD" 
K"255" 

一部の曲でMEHLDAUに似ていると言っても、「似て非なるもの」といわざるを得ない。美しさ、躍動感、緊密感、どれをとっても2〜3割差し引かなければならないだろう。
どの演奏もそこそこだけど、それ以上ではない。もう1回聴いてみたいと思わせる心を鷲掴みするようなインパクトに欠ける。多分、また聴くことはないだろうなあ。   (2006.05.21)