肩肘張らずリラックスして繰り返して聴きたくなる
いつまでも飽きの来ない1枚
座右の1枚として置いておきたい
"MAGNIFICENT!"
BARRY HARRIS(p), RON CARTER(b), LEROY WILLIAMS(ds) 1969年スタジオ録音(PRESTIGE OJCCD-1026-2)

BARRY HARRISというピアニストは作曲家としてもなかなか才能のある人で、特にブルース・フィーリングを漂わせた曲を作るのが上手い。このCDにおいても8曲中4曲のオリジナルを提供している。

中でも2曲目の"YOU SWEET AND FANCY LADY"はブルース・フィーリングをたっぷりと湛えた、如何にもHARRISの作った曲。1996年録音の"FIRST TIME EVER"(JAZZ批評 20.)の中にある"K.G"と相通じるマイナー調の32小節の歌もの。この1曲だけを聴くために買っても損はないと思う。ベースのRON CARTERもこの頃は若かった。真面目に仕事をこなしている感じで好感が持てる。流石にウォーキング・ベース、ソロとも力強くよく歌っている。演奏時間が4分と短いのが残念だ。

1曲目の"BEAN AND THE BOYS"はいきなり、HARRISの力強いピアノとベースのウォーキングで幕を開ける。LEROY WILLIAMSのドラムスも何時になく元気が良い。このドラマーはHARRISのお抱えドラマーみたいな人でHARRISの「甘いも酸っぱい」も知り尽くした盟友だ。

3曲目は同じくHARRISのオリジナルで"ROUGE"。HARRISはまた、こういう美しい曲も得意としている。なかなかのメロディ・メーカーなのだ。
次はPARKERの"AH-LEU-CHA"。ミディアム・ファーストで丁寧にテーマを奏でる。WILLIAMSの刻むシンバリングが快い。

5曲目の"JUST OPEN YOUR HEART"次の"SUN DANCE"もHARRISのオリジナル。前者は明るい曲想で3人の楽しげな雰囲気が伝わってくる。CARTERのベース・ソロもご機嫌だし、指を鳴らしたくなる1曲。
後者はラテン・ビートの軽いノリの曲。HARRISのオリジナル4曲はそれぞれに曲想を変えており色々な味を楽しむことが出来る。

7曲目、スタンダード・ナンバー"THESE FOOLISH THINGS"。こういう美しい曲にあっても甘さだけに流れない芯のある演奏で、締める所は締めているのが流石。シングル・トーンひとつずつを味わって欲しい。
最後のPARKERの"DEXTERITY"をアップ・テンポで締めくくっている。CARTERのウォーキングも素晴らしい。

このCDもベースとドラムスの好サポートに恵まれ、肩肘張らずリラックスして繰り返して聴きたくなる、いつまでも飽きの来ない1枚。座右の1枚として置いておきたい。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。(2002.08.31.)



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BARRY HARRIS

独断的JAZZ批評 92.