いやな予感・・・・的中!
"IMPRESSIVE & ROMANTIC"
ERIC REED(p), RON CARTER(b), AL FOSTER(ds)
2003年12月 スタジオ録音 (M & I JAZZ MYCJ-30281) 

いやな予感@、ジャケットを見た瞬間、日本プロデュースのアルバムだと思った。この手の写真をジャケットに使用するのは日本盤しかない!中に刻まれた音楽とジャケットは何の脈絡も関係もない。「売らんがため」のアイキャッチャーとしての役割を担っているのだろう。

いやな予感A、SJ誌のゴールドディスクだそうだ。ケースの帯にもそのマークがこれ見よがしに印されていた。最近はSJ誌そのものを読まないから事情は知らぬが、昔、このゴールドディスクというのは「???」いうのが多かった。この雑誌がレコード会社の広告収入で成り立っていることを思えば、ある程度は仕方がないとは思えるが、納得は行かない。「ゴールドディスクを斬る」というネット上のサイトが無くなって久しいが、もし今もあれば、何とコメントしていたのだろう。あのサイトは楽しみのひとつだった。

いやな予感BベースがRON CARTERだ。もう、過去の人というべきだろう。AKIKO GRACEの2作品を聴き比べると良く分かる。JAZZ批評 125.のRON CARTERと、JAZZ批評 101.のLARRY GRENADIERのベースを聴き比べれば一目瞭然だ。確かに、RON CARTERも良い時代はあった。その好例はJAZZ批評 92.だろう。35年も前の録音だが、若く一途なものを感じさせる演奏だった。

いやな予感C、ERIC REEDというピアニストはいつも試聴どまりで購入するまで行き着いたことがなかった。

というような、いやな予感がする中で敢えてこのアルバムを購入したそのわけは、ERIC REEDを最後まで聴き通してみようと思ったのと、最近のゴールドディスク事情を久しぶりに検証してみたかったという理由からだ。

@"OUT OF THE PAST" 
A"I LET A SONG GO OUT OF MY HEART" 
象徴的な1曲。ベースがテーマをとるが、音程が実に怪しい。随所で、フラット気味なのが気に掛かる。3連符や和音の多用もいかがなものか。「過ぎたるは及ばざるが如し」で、躍動感を犠牲にしてまでやることではないだろう。自己顕示欲の塊みたいなベースはピアノ・トリオには不要だ。

B"I WANT TO BE HAPPY" 
C"CAN'T HELP SINGING" 
D"MILES AHEAD" 
E"JOHNNY GUITAR" この曲のテーマは兎も角、アドリブはこのアルバムのベストだ。
F"LOOSE BLOOSE" 
G"SO IN LOVE" 
H"BLUES IN THE NIGHT" 
I"BLAH,BLAH,BLAH"
J"IT'S EASY TO REMEMBER"

「グレートコンポーザーに捧ぐ」というサブタイトルがついているが、こういう企画そのものがいかにも日本的だ。ミュージシャンのやりたいことよりもレコード会社のやりたいことが優先されている感じを否めない。
10日以上にわたりこのアルバムを聴いてきたが、この人選はERIC REED、その人が選んだものだろうか?という疑問が湧いてきた。完全なミスマッチだと思う。RON CARTER という選択肢は、最近のピアニストにはないのではないかと思うのだ。音程が悪く、躍動感を犠牲にし、更に、自己顕示欲の塊みたいなベーシストをピアニストが選ぶ理由はない。ERIC REEDはむしろ被害者ではないかというのが、僕の今の偽らざる心境だ。機会があれば、もう一度、メンバーを替えたERIC REEDのトリオにチャレンジしてみたいと思う。   (2004.08.05)



ERIC REED

独断的JAZZ批評 211.