ENRICO PIERANUNZI
ENRICO PIERANUNZIを、これほどの熱気溢れる演奏をするピアニストとはこれっぱかしも思っていなかった
脱帽である
"LIVE IN PARIS"
ENRICO PIERANUNZI(p), HEIN VAN DE GEYN(b), ANDRE DEDE CECCARELLI(ds)
2001年4月 ライヴ録音 (CHALLENGE RECORDS CHR 70126)
ジャズ・ピアニストの宝庫イタリアから,、今度はベテラン・ピアニスト、PIERANUNZIの登場だ
スタンダードを中心とした2枚組みライヴ盤
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PIERANUNZIの2001年、パリでの白熱ライヴだ。これは素晴らしい!文句のつけようがない良い出来だ。恐らく、今年の十指に入る傑作だと思う。
今まで紹介した3枚のアルバム(JAZZ批評 141. & 203. & 282.)はいずれもスタジオ録音だったが、今度はライヴ盤ということと、メンバーも今までとは違うということで一味も二味も違ったアルバムとなった。
既掲載の3枚のアルバムではいずれも5つ★は献上していない。また、辛目の採点だったと思うのだが、それで良かったとつくづくと思ったものだ。このアルバムはそれらとは比べ物にならないほど群を抜いて良い。いつもの「テーマ崩し」は健在だが、何と言っても、ドライブ感と躍動感に溢れている。いやあ、素晴らしい!白熱のPIERANUNZI・ワールドを堪能頂きたい。
ベースのHEIN VAN DE GEYNは1986年録音のオランダの名手、JACK VAN POLL "TREE-OH IN ONE"(JAZZ批評 191.)での共演にもみられる、1956年生まれのベテラン・ベーシスト。堅実さと太い音色で安心して聴いていられる。
ドラムスのANDRE DEDE CECCARELLIは僕の記憶にないプレイヤーだが、これは良いドラマーだ!JACK
DE JOHNNETTEやBILL STEWARTと肩を並べるといっても過言ではないだろう。良いドラマ-というのは、例えば、4ビートを1、2、3、4と叩くにしても、そこから生まれる躍動感が全然違う。加えて、おかずの入れ方も絶妙となれば、歴然とした音の違いが表れるものだ。このドラマー、シンバリングといい、おかずの入れ方といい、並みのドラマーとは違う。ピアノ、ベースとよく絡んで配慮も利いている。軽快なブラッシュワークがあるかと思えば、あるときは豪胆なスティック捌きをみせる。何と言っても、よく歌うドラマーだ。聴いていて楽しい!一度は、全ての曲をドラムス中心に聴いていみるのも乙なものだ。このCECCARELLIなしに、この傑作は生まれなかったと確信する。
これだけのアルバム、個々の解説は必要としないでしょう。あとは、ご自分の耳で確かめて欲しい。
DISK 1.
@"INTRODUCTION"
A"OUVERTHREE" 3人の競作によるこの曲からDまで、一気に切れ目なしで進む。いずれも緊迫感、躍動感に富んでおり、ジャズの楽しさを満喫できる。
B"BODY AND SOUL"
C"I HEAR A RHAPSODY"
D"FOOTPRINTS"
E"I FALL IN LOVE TOO EASILY"
F"BUT NOT FOR ME"
G"HINDSIGHT"
DISK 2.
@"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" Bまで連続演奏。
A"WHAT IS THIS CALLED LOVE"
B"JITTERBUG WALTZ"
C"ONE LONE STAR"
D"UNA PICCOLA CHIAVE DORATA"
E"AUTUMN LEAVES"
A、G、C、Dがオリジナル。
正直に言うと、僕はこのPIERANUNZIを世間で言うほど高く買ってはいなかった。少々、理屈っぽいと思っていた。これほどの熱気溢れる演奏をするピアニストとはこれっぱかしも思っていなかった。脱帽である。このアルバム、全編に共通するのは熱い波動が瞬時の反応を呼び起こしていること。ライヴならではの熱気とスリルを感じる。
先に紹介したMADS VINDING TRIOのライヴ盤(JAZZ批評 322.)と比較するのも面白い。動的でアグレッシブなアプローチをみせるCARSTEN DAHLに対して、PIERANUNZIのアプローチは静的で内省的だ。しかし、どちらもクライマックスの演奏は白熱し、濃密で深淵な時間を提供してくれることだろう。
この2枚はピアノ・トリオのライヴ演奏における傑作として甲乙点け難い。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2006.02.18)
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