「酸いも甘いも噛み分けた」円熟の演奏を堪能いただきたい
"TREE-OH IN ONE"
JACK VAN POLL(p), HEYN VAN DE GEYN(b), DRE PALLEMAERTS(ds)
1986年4月 スタジオ録音 (SEPTEMBER CD 5102)
録音は少し古めの1986年だが、いいものは、やはりいい。僕は仙台のDISKNOTEの推薦でゲットしたが、今も入手が可能かどうかは分からない。
先ず、トリオとしてのバランスが良い。ピアノ、ベース、ドラムスのそれぞれのレベルも高く、プラスアルファを創り出している。やはり、ピアノ・トリオはこうでないといけない。
JACK VAN POLLというピアニストは1934年にオランダで生まれている。現在、丁度70歳。録音時、52歳。オランダといえばPETER
BEETSやJURAJ STANIK、そして、REIN DE GRAAFF (INDEX A TO Z) といったきらりと光るピアニストを輩出している。このVAN POLLもきらりと光るピアニストの仲間に入れてもなんら問題はないだろう。BEETSやSTANIKの大先輩といったところだろう。ヨーロッパのピアノ・トリオにありがちな叙情的で透明感のある演奏というのは存在しない。バップ色の強い土の匂いのする演奏だ。演奏曲目もスタンダード・ナンバーやブルースがたっぷり。「酸いも甘いも噛み分けた」円熟の演奏を堪能いただきたい。
@"STRAIGHT NO CHASER" T.MONKの作ったブルース。「水なしで飲むストレート・ウィスキー」のこと。ブラッシュ・ワークで始まるがスティックに持ち替えたあたりからドライブ感満載のハード・プレイに転じていく。よく歌うベース・ソロへと繋ぎ、ドラムスのソロを経てテーマに戻る。
A"OLD FOLKS" スタンダード・ナンバーをスローでしっとり歌う。ピアノの一つ一つの音に味わいがある。前曲ではないが、"STRAIGHT
NO CHASER"が飲みたくなるというものだ。ベース・ソロ〜ドラムスのソロを経てテーマに戻る。じっくり味わいたい曲。
B"SOMEDAY YOU'LL LEAVE ME" ベースのHEYN VAN DE GEYNのオリジナル・ワルツ。テーマの後のGEYNの太く優しいソロが終わると、一転、ハード・ドライブに変わる。
C"NIGHT IN TUNISIA" 言わずと知れたD.GILLESPIEの名曲。DREのスティック・ワークも見事。強靭なバックアップを得て、ピアノが楽しくドライブ。アレンジもグッド。やるねえ!
D"YESTERDAYS" センスの良いピアノ・ソロ。ソロにこそ、そのプレイヤーの実力が遺憾なく発揮される。
E"HI-FLY" 図太いベースのウォーキングと軽快なブラッシュ・ワーク。これだけあればノリが悪かろうはずがない。
F"THINGS AIN'T WHAT THEY USED TO BE" 邦題「昔は良かった」。@とともにブルースの定番とも言えるD.ELLINGTONの曲。スタジオ録音にも拘わらずライヴ録音のようなノリノリの演奏を披露している。
G"HEY THERE" ベースのGEYNは良く歌っている。スローのときこそ、その実力が発揮されるというものだ。このベース・ソロはいいぞ!このベーシスト、要チェックだ。
H"SUICIDE IS PAINLESS" 8ビートの演奏ではあるが、途中で16ビートに転ずる。じっくり味わいたい好演曲。
I"TEMPORARILY OUT OF ORDER" 最後を締めるに相応しいVAN POLLのオリジナル。
ジャズの楽しさを満喫させてくれる1枚。スタンダード・ナンバーあり、ブルースあり、その上、バラードも8ビートもある。てんこ盛りにも拘わらずアルバムとしての統一感もあり、何よりも、その演奏が上質である。「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2004.04.11)
JACK VAN POLL