ジャズ的な面白み
・・・あえて言うと、のめり込むような躍動感・・・
に欠ける
"PLAY MORRICONE"
ENRICO PIERANUNZI(p), MARC JOHNSON(b), JOEY BARON(ds)
2002年6月 スタジオ録音 (CAMJAZZ CAMJ 7763-2) 

ENNIO MORRICONEと言えば映画音楽。そして、すぐに思い出すのがマカロニ・ウェスタンの「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」かな。まっ、歳が分かるというものだが・・・。
最近では、昨年のNHK大河ドラマ「武蔵」の音楽を担当したのがこのMORRICONEだった。このMORRICONEの縁と所縁のある曲を選んだアルバムだ。このアルバムの評価は結構難しい。良いアルバムだとは思うのだが、ジャズ的な面白み・・・あえて言うと、のめり込むような躍動感・・・に欠ける。ひとつにはMORRICONEの書いた曲がジャズとして、本当に相応しいかという点だ。もともと曲に馴染みが少ないということは分かっていることだが、どうも、ジャズには不向きな印象を覚えずにいられない。表現がとても難しいのだが、簡単に言うと、「スカッとしない」のだ。理屈をこね回したような余韻が残ってしまうのだ。
それと、イタリア人がイタリアの映画音楽を素材にジャズ・アルバムを作るというのは、日本人が「八木節」や「荒城の月」を演奏するのに似ていると思うが、いかがだろう。ややもするとプレイヤーの自己満足で終わってしまう危険性を孕んでいると思うのだが。

@"IL CLAN DEI SICILIAN" 最初からいきなり理屈っぽいテーマだ。最後の2小節のエンディングがイケテル。
A"NINFA PLEBEA" バラード。JOHNSONのベース・ソロとバック・アップは太くて良い音がしている。イン・テンポになってからが良い。
B"I MALAMONDO" やっときましたスカッとしたテーマ。ノリも良くてこのアルバムの中では一番印象に残る曲。指を鳴らして聴くのが一番。エンディング・テーマの後にフリーになるのが余分か。
C"I MALAMONDO" Bと同名のタイトルがついているがテーマは違う。ミディアム・テンポで楽しげな演奏。ブラッシュはサクサク、ベースはゴリゴリしていて3者のバランスも良い。

D"THE NEXT NIGHT" MARC JOHNSONは年をとる毎に、円熟味も増して良く歌うベーシストになった。
E"LA DOMENICA SPECIALMENTE" いかにも哀しい恋愛映画にでも出てきそうなワルツ。
F"IL VIZIETTO" クラシック的なイントロで始まる。
G"NINFA PLEBEA" イントロから一転してボサノバ調に変わる。
H"IL PRATO" イタリアン・叙情詩。
I"WALTZ FOR A FUTURE MOVIE" これもイタリアン・叙情詩。
J"I MALAMONDO" Bの別テイク。JOEY BARONのドラミングが存在価値を見せ付けている。

PIERANUNZのアルバムとしては既にJAZZ批評 141.で1996年録音盤を紹介しているが、そちらの方が僕の好みだ。このアルバムはトリオとしてのアンサンブルの良さや個々のプレイヤーの技量の高さは感じるものの、やはり、出来上がった音楽がジャズとしての躍動感に欠けるのが物足りない。あくまでも、理知的でクール。魂を熱くするほとばしりがない。   (2004.06.19)



ENRICO PIERANUNZI

独断的JAZZ批評 203.