TIZIAN JOST
澤野工房らしからぬお手軽、気軽ピアノ・トリオ
聴き込むというよりは聞き流すという方が的確かもしれない
"OUR REFLECTIONS"
TIZIAN JOST (p), THOMAS STABENOW(b), KLAUS WEISS(ds)
2003年12月 スタジオ録音 (ATELIER SAWANO AS 040) 

澤野工房は日本のレコード会社の中にあっては良心の塊みたいなレコード会社と思っていた。何といっても、プレイヤー主体のポリシーあるレコード制作でマニアからも一目置かれてきた存在だ。
例えば、JAZZ批評 66.のJOERG REITER"SIMPLE MOOD"やGIOVANNI MIRABASSIの一連のアルバム(JAZZ批評 60. 67. 88. 164. 229.)を世に知らしめた功績は大きい。

しかし、このアルバムはクエスチョン・マークが付く。演奏が何ともお手軽、気軽で緊迫感がない。澤野工房でもこういうアルバムを出すんだということで話題になりそうなアルバムだ。
このアルバムは「ジャズをもっと身近に」というテーマと同時に、新人ピアニストTIZIAN JOSTの紹介の場にもなっているそうだ。新人という割りに老練のピアニストのような枯れた演奏で沸々と沸きあがる期待感は残念ながらあるとは言えない。若手の演奏する曲目にしてはスタンダードや聞き古された曲が多い上にオリジナルが全くないのが寂しい。ほどほどスウィングしているし丁寧に演奏した感じはあるのだが・・・。この際、たまには御気楽に肩の力を抜いて聴いてみるのも良いかも知れない・・・そういうアルバムだ。


@"REFLECTION" RAY BRYANTの曲。オープニングに相応しい調子の良い曲。
A"SWEET GEORGIA FAME" 
B"BESAME MUCHO" 
C"THE GOOD LIFE" 
D"WALTZ" 
E"COME RAIN OR COME SHINE" 
数多くのジャズメンが採りあげてきたスタンダード。

F"RECADO BOSSA NOVA" 
G"THE OLD COUNTRY" 
NATADDERLEYの書いた佳曲。テーマの良さとミディアム・テンポの快さでこのアルバムのベスト。ベース・ソロも良く歌っている。指でも鳴らしながら聴いて欲しい曲だ。
H"LAURA" 
I"CORCOVADO-QUIET NIGHTS" 
J"DARN THAT DREAM" 

何回繰り返し聴いてみてもお手軽、気軽ピアノ・トリオであることに変わりはない。新人とか若手と言われる人たちが持っている尖がった部分や上滑りするかのような意気込みが感じられないのが残念だ。聴き込むというよりは聞き流すという方が的確かもしれない。今、流行の人気ラーメン店とかホテルのラウンジのBGMに適当と言うのでは少し酷だろうか。

ところで、このページで紹介したJOERG REITER"SIMPLE MOOD"のベースと太鼓は、このアルバムの奏者でもあるTHOMAS STABENOWとKLAUS WEISSというのも面白い巡り合わせだ。多分、このアルバムを聴いて、前述の"SIMPLE MOOD"を聴くと、その音楽性の違いに驚くだろう。これがピアニストの違いによるものか、18年という歳月がサイドメンをして変わらしめたのかは分からない。    (2005.03.17)



独断的JAZZ批評 258.