ヨーロッパの香りが色濃い
「MIRABASSIの清冽にして情念的な美の世界」
"DAL VIVO!" GIOVANNI MIRABASSI(p), DANIELE MENCARELLI(b), LOIS MOUTIN(ds) 2001年ライヴ録音(SKE 333021)

ピアノ・ソロ・アルバムの傑作 "AVANTI!" (JAZZ批評 60.)に続くMIRABASSIのライヴ盤。今度はピアノ・トリオだ。
MIRABASSIの創り出す音楽はテーマ自体が甘美な香りのする曲が多い。しかしながら、アドリブまで甘美かというとそうではない。清冽にして情念的な美の世界を創り上げている。ベースもドラムスもメンバーに恵まれ、MIRABASSIの意図を充分に理解しながらその美の世界を構築しているようにみえる。

@"JEAN-PAUL CHEZ LES ANGES"
A"PLACE DE LA MAIRIE"
B"28. RUE MANIN"
C"DES JOURS MEILLEURS"
D"REQUIEM"
E"MEMENTO MORES"
F"CAFE FRANCAIS"
G"EL PUEBLO UNIDO JAMAS SERA VENCIDO"

4曲目はワルツの軽快な曲。トリオとしての完成度の高さを窺わせるノリの良い演奏が聴ける。ドラムスの LOIS MOUTINはなかなか素晴らしいドラマーで、シンバルの入れ方といいスティックの使い方といい、非常にメロディックなタイプのプレイヤーという印象がする。

5曲目はベースのアルコ弾きとピアノで始まるが、こういった美しいメロディーのテーマにはアルコも良く似合う。まさにクラッシクという印象を与えるが、その後に続くアドリブとピチカートによるベース・ソロはビート感のある良い音がしている。
7曲目の "CAFE FRANCAIS" も情念的な美しい曲。こういう曲想のバラードは今までのジャズにはなかった。如何にもヨーロッパ的な香りのする、知的な印象の曲だ。
背筋にゾクッとくるような清冽さが印象的。中間部からのベースとピアノのインタープレイと高揚感が素晴らしい。

"AVANTI!" で冒頭を飾った美しい曲 "EL PUEBLO UNIDO JAMAS SERA VENCIDO" は最後の8曲目に入っている。マレットを使用し抑制の効いたドラミング、美しさを綴ったベース・ソロといい美しいテーマを更に活かした心憎いまでの情念の世界だ。高揚感の後に来るベース・ソロは聴き物だ。ハイトーンのメロディラインが美しい。ドラムスのシンバルを入れるタイミングも絶妙!

一概にソロ演奏との比較は出来ないが、甲乙つけ難いほどの絶妙な演奏とだけは言える。このCDはヨーロッパの香りが色濃い「MIRABASSIの清冽にして情念的な美の世界」と言えるだろう。

ついでに付記しておくと、前ページで紹介した JOERG REITER(JAZZ批評 66.)とは好対照に位置付けられる。REITERの「動」に対して「静」という印象ではあるが、どちらも完成度が高く、「深い」という共通点も挙げられる。   (2002.05.01)



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GIOVANNI MIRABASSI

独断的JAZZ批評 67.