虚心坦懐に聴き直した結果、
"AVANTI!"や"DAL VIVO!"に勝るとも劣らない作品であることが確認できた
"ARCHITECTURES"
GIOVANNI MIRABASSI(p), DANIELE MENCARELLI(b), LOUIS MOUTIN(ds), PIERRE DURAND(g:6曲目のみ) 1998年スタジオ録音(SKETCH SKE 333010)

"DAL VIVO!"(JAZZ批評 67.)と同じメンバーによるピアノ・トリオ盤。"DAL VIVO!"に遡ること3年、1998年の録音。しかも、全9曲中、"CAFE FRANCAIS","PLACE DE LA MAIRIE","28 RUE MANIN","REQUIEM"の4曲がダブっているので似かよった印象は拭いきれない。
全体を通して感じるのは"DAL VIVO!"ほどには情念的でないということ。抑制が効いている。一方、"DAL VIVO!"の方はライヴ盤である分、より激情的であり情念的である。

2曲目の"CAFE FRANCAIS"は哀愁を帯びた曲。半ばを過ぎたあたりから4ビートになるが、最後にまた哀しいテーマに戻る。
5曲目"ONE MORE BLUES"では一癖あるテーマからアップテンポのアドリブで始まり、ベース・ソロと同時にフリーなテンポに変化する。ここでは野太いベースのソロが聴ける。ヨーロッパのベーシストにありがちなダボついた音ではない。硬く引き締まったいい音色だ。このグループらしかぬ1曲。
6曲目にはこのアルバム中、唯一、ギターを加えた演奏が含まれている。PAT METHENY張りの牧歌的なフィーリングを漂わせたギター演奏がこのアルバムに斬新さを吹き込んでいる。
7曲目は"LULLABY"。ドラムスのブラッシュ・ワークが軽快だ。この LOUIS MOUTINというドラマーはなかなかメロディアスなドラミングをするプレイヤーで面白い。
8曲目はお得意のリリカルな曲"LA FIN DE QUELQUE CHOSE"。切なく美しい曲ではあるが甘すぎることはない。
最後は"REQUIEM"。ベースのアルコ弾きで始まり徐々にテンションが高まっていく。

このアルバムの全体的な印象も「MIRABASSIの清冽にして情念的な美の世界」であることに変わりない。これがこのピアニストのコンセプトだから。
2000年録音のピアノ・ソロ・アルバム"AVANTI!"(JAZZ批評 60.)から2001年録音"DAL VIVO!"に至るプロローグ的存在がこのアルバムだ。以降、グループとしての成熟度や完成度を高めていくことになる。

これはこれで、このピアニストのコンセプトで良いと思うのだが、ブルース・フィーリグ溢れる曲とかメジャーな曲を演奏させるとどういう音楽になるのか聴いてみたい気がするのは僕だけだろうか。                                   (2002.08.13)

<追記>
この批評を書いた後、実は、わだかまりが残った。先入観や既成概念を拭い去って虚心坦懐に聴き直した結果、"AVANTI!"や"DAL VIVO!"に勝るとも劣らない作品であることが確認できた。むしろ、後に出た作品の方がより情念的で、枠に嵌った感じさえするのだ。

いずれにしてもこのユニットはKEITH JARRETTのユニットに匹敵するようなユニットになるだろう。いや、今既に肩を並べるほどの存在かもしれない。ベースといい、ドラムスといい、GARY PEACOCKやJACK DEJOHNETTEと肩を並べるほどの存在感を示している。
とくとお聴きあれ!   (2002.08.16.)




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GIOVANNI MIRABASSI

独断的JAZZ批評 88.