JAN LUNDGREN TRIO
今もって、「黄金のトリオ」に惹かれてしまうのは、ないものねだりなのかもしれない
"FLOWERS OF SENDAI"
JAN LUNDGREN(p), MATTIAS SVENSSON(b), ZOLTAN CSORSZ JR(ds)
2013年7月 スタジオ録音 (AGATE : AGIP-3535)
スウェーデンのピアニスト、JAN LUNDGRENのトリオではベースにJESPER LUNDGAARD、ドラムスにALEX RIELというメンバーが黄金トリオとも言うべきものだった。因みに、そのトリオでは1994年録音の"CONCLUSION"(JAZZ批評 185.)、2003年録音の"LES PARAPLUIES DE CHERBOURG"(JAZZ批評 204.)や2007年録音の"A SWINGING RENDEZVOUS"(JAZZ批評 433.)が星5つだった。2005年のGEORG RIEDELのとのベース・デュオ"LOCKROP"(JAZZ批評 338.)も優れたアルバムであった。この頃からLUNDGRENの音楽に少しずつ変化の兆しが現れ始めた。
元々、美メロ系のピアニストで、同時に心地よい躍動感にも溢れていたのだが、より美しさを追求したアルバム作りになってきた。
2008年の"EUROPEAN STANDARDS"(JAZZ批評 565.)は今回と同じメンバーでヨーロッパのフォークソングをモチーフに美しさと優しさに包まれたものだった。以来、5年ぶりのリリースだという。
@"PARFAIT AMOUR" 温かさと優しさに溢れた美しいメロディの2ビートで始まる。人柄をしのばせる慈しみに溢れた演奏でもある。窓を開け放って風を感じながら聴きていたい。
A"MELANCOLIA" ゆったりとしたテーマからイン・テンポになる。まるで嫌みのない、作為のない美しさなのだ。
B"FLOWERS OF SENDAI" ピアノ・ソロ。メルヘンチックな愛らしい演奏ではあるが、小気味よく躍動している。
C"TRANSCENDENCE" ベースのSVENSSONが書いたグルーヴ感のある曲。このSVENSSONには自己のリーダーアルバム"HEAD UP HIGH"(JAZZ批評 559.)があるが、ピアニスト・BILL MAYSを迎えグルーヴ感溢れるベース・ワークを披露している。どちらかというとグルーヴ感と土臭い匂いを持ったプレイヤーだ。
D"WALTZ FOR MARION"
E"FELLINI" 音数少なめの切ないバラード。美しい曲を美しく弾いているのは間違いがないが、やはり、美しいだけでは物足りない。
F"ALONE FOR YOU" 同じような曲想の曲が続く。躍動感とかグルーヴ感を忘れてしまったかのようだ。
G"MULGREW" 昨年、脳卒中で突然に亡くなったアメリカのピアニスト、MULGREW MILLERへのオマージュか。軽快なワルツ。
H"LUSH LIFE" スタンダード化したBILLY STRAYHORNの書いた佳曲。これもしっとり感溢れるピアノ・ソロ。
I"MAN INTHE FOG" ベースが太くて重い定型パターンを踏んで、その上に透明感のあるピアノが被る。
J"YESTERDAYS" (日本盤のボーナストラック)本アルバム3つ目のピアノ・ソロ。角のないまろやかな演奏だ。
JAN LUNDGRENのピアノは一貫して美メロ系であったし、さらに躍動感やピアノ・トリオとしての緊密感も加わって、常に洗練されたアルバムを提供してきた。特に、前述したLUNDGAARDとRIELのトリオは「黄金のトリオ」と呼ぶに相応しく、「JAN
LUNDGRENここにあり!」を強く印象付けた。
翻って、本アルバムは躍動感やグルーヴ感が影を潜め、美しさが前面に出ている。にもかかわらず、リスナーに迎合したり、媚びを売っているという印象は全くない。己がスタイルを貫いたという感じだ。
そうは言いつつも、今もって「黄金のトリオ」に惹かれてしまうのは、ないものねだりなのかもしれない。 (2014.04.28)
試聴サイト : http://www.beejazz.com/en/album/flowers-of-sendai/
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