独断的JAZZ批評 870.

PHRONESIS
ハードコア・アコースティック・ピアノトリオとでも呼びたくなる唯一無二のピアノ・トリオ
"LIFE TO EVERYTHING"
IVO NEAME(p), JASPER HOIBY(b), ANTON EGER(ds)
2013年11月 ライヴ録音 (EDITION : EDN1050)


前掲は癒し系美メロトリオだったので、今回は対照的な剛腕トリオでお口(お耳)直しをしてみよう。
PHRONESISはベースのJASPER HOIBYが率いる北欧のグループだ。今までに3枚のアルバム("ORGANIC WARFARE"JAZZ批評 541.、"GREEN DELAY" 567.、"WALKING DARK" 765.)を紹介しているがいずれも星5つを献上している。他に類を見ない個性的なグループであり、その躍動感とドライヴ感はヨーロッパ・ジャズの中にあって傑出している。
本アルバムは2013年のLONDON JAZZ FESTIVALでのライヴ盤だ。
このグループ、初代ピアニストにはMAGNUS HJORTH(JAZZ批評 609.)が参加していたが、2枚目以降はIVO NEAMEに交替している。ドラムスも、最近、BRAD MEHLDAUとの共演で話題になったMARK GUILIANAが一時、参加していたことがあるが、現在はANTON EGERに戻っている。

@"URBAN CONTROL" 出だしからベースの逞しい音色で度肝を抜かれる。このグループのリズムは変拍子であったり複雑怪奇だったりするので数えないことだ。あるがままに耳を傾けよう。美メロに浸った耳には超刺激的だ。
A"PHRATERNAL" 
静かな出だしで始まるが徐々に高揚感を増していく。バラードなのだが常に躍動しているところがいいね。
B"BEHIND BARS" 
ベースのイントロで始まり、ピアノとのユニゾンとともに一気呵成にリズミックな演奏にシフトしていく。これはもう痛快としか言いようがないね!
C"SONG FOR LOST NOMADS" 
穏やかなピアノで始まるが飛び跳ねるようなリズミックな演奏にシフトしていく。EGERのドラミングは手数が多いが、それが邪魔にならないのが不思議だ。
D"WINGS 2 THE MIND" 
超弩級ヘビー・サウンズだ。これがうねるように躍動するのだから堪らない!
E"NINE LIVES" 
テーマも一つとしてメロディアスなものがない。難しいテーマばかりだ。美メロとは180℃正反対の演奏だ。
F"DEEP SPACE DANCE" 
G"HERNE HILL" 
怒涛の攻撃とでも言いたくなってしまう圧倒的な迫力こそこのグループの持ち味。ライヴでこんな演奏を聴かされたら背筋がゾクッとくるに違いない。やんやの喝采鳴りやまず!
H"DR BLACK" 
スリリングな展開とこの躍動感が堪らない!複雑だけどピタリと寸分の狂いもなく収まっている。最後は傍若無人とでも言いたくなるEGERの剛腕ドラミングにスカッとする。

このトリオは1曲として4ビートを刻むことはない。ベース、ドラムス、ピアノ、どれをとっても一級品であるが、むしろ、三位一体のアンサンブルを楽しむのが良い。弾けるリズム、一体となった躍動感とアンサンブル。
毎日聴くには聴き疲れするけど、美メロ演奏のアルバムの後に聴くと脳天を強烈に刺激して目を覚ましてくれるだろう。
ハードコア・アコースティック・ピアノトリオとでも呼びたくなる唯一無二のピアノ・トリオということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2014.04.25)

試聴サイト :
 http://store.editionrecords.com/album/life-to-everything
          このサイトでは冒頭の3曲がフルに聴ける。



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