独断的JAZZ批評 872.

HELGE LIEN TRIO
「シンプル イズ ベスト」にもう一度立ち返ってもらいたい
"BADGERS AND OTHER BEINGS"
HELGE LIEN(p),FRODE BERD(b), PER ODDVAR JOHANSEN(ds)
2013年11月 スタジオ録音 (OZELLA : OZ 055 CD)

HELGE LIENはノルウェイのピアニストで1975年生まれというから未だ40歳前だ。顔だけみていると50にも60にも見えるけど・・・。
2000年録音の"WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE"(JAZZ批評 228.)ではタイトル曲と"SO WHAT"が強烈な印象を与えてくれた。以来、コンスタントに聴くようにしているが、前回のアブストラクトのソロ・アルバムでは疑問符がついた。
2010年録音の"NATSUKASII"(JAZZ批評 694.)までは不動のメンバーでいずれもリリシズムと躍動感を併せ持ったアルバムだった。
一方、本アルバムではドラムスがKNUT AALFJAERからPER ODDVAR JOHANSENに代わっている。
2006年の"TO THE LITTLE RADIO"(JAZZ批評 342.)を含め3枚の星5つがある。いずれも素晴らしいアルバムで機会があれば是非、聴いてほしいと思う。


@"MOR" クラシカルな曲想だが美しい曲だ。いかにも、ヨーロッパの、北欧のジャズという感じだ。
A"JOE" 
これも似たような耽美的な曲想だ。控え目なドラムスに乗ってベースがソロを執る。あくまでもクールである。
B"HOGGORMEN" 
面白みのない曲だ。やがて、定型パターンのリズムの中でピアノがアドリブを執るのだが・・・。低温度感とまでは言わないが中温度感くらいかな?
C"HVALEN" 
内省的なフリー・テンポのインタープレイ。
D"FOLKMOST" 
心地良いメロディとリズムに乗って徐々に躍動感が増してくる。これは楽しいね。
E"EARLY BIRD" 
これも内省的なテーマ。渦巻くような暗さの中に一筋の光明が見える。決して4ビートを刻むことがない。
F"KNUT" 
交替する以前のドラマー、KNUT AALFJAERのことかも知れない。定型パターンのリズムを刻むが、これがまた難しい。
G"CALYPSO IN FIVE" 
これまた難しいリズムだ。"IN FIVE"とあるから5拍子だろうか?演奏する方も大変だろうけど、聴く方も大変だ。まあ、数えないことだね。
H"THE NEW BLACK" 
アルバム中、一番迫力を感じる演奏だがちょっとおどろおどろしい演奏だ。
I"BADGER'S LULLABY"
 内省的なフリー・テンポの演奏。

全ての曲がLIENの書いた曲だ。
一言で言うと、どの曲も曲想が似ている。そしてどの曲も複雑だ。特に、リズムについては全ての曲が多ビートと変拍子で4ビートを刻むことはない。もっとシンプルにプレイすれば良いのにと思う。これでは聴く側に相当の体力、気力を必要とするだろう。残念ながら、このアルバムを何回も繰り返して聴こうという気分にはなりにくい。
とは言え、本アルバムを20回以上も繰り返し聴いてみた。
かつての名盤"WHAT ARE YOU・・・"や"TO THE LITTLE RADIO"、"NATSUKASII"とも聴き比べてみたけど、何でこんなに複雑で難しい音楽になってしまったのか!「シンプル イズ ベスト」にもう一度立ち返ってもらいたいものだ。
前作はアブストラクトのピアノ・ソロだったので本アルバムに期待するものは大きかったが、残念ながら期待以上のものではなかった。
でも、耽美的なジャズが好きで、ヨーロッパ・ジャズのファンなら受け入れられるかも・・・。   (2014.05.01)

試聴サイト : 
http://www.ozellamusic.com/631.0.html
         
このサイトではすべての曲がフルに試聴できる



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