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『恋は放課後』['73] | |||||
監督 広瀬襄 | |||||
合評会の課題作として『黒部の太陽』を観た際に、僕が松坂慶子贔屓と見てか、主宰者の映友が併せて提供してくれた作品だ。四十五年前に地元の劇場でのケイコ三本立て『祭りの準備』『成熟』『夜の診察室』を観た時点での僕の一番贔屓は、『ラブレター』['81]の前年でありながらも関根恵子だった。松坂慶子にぐっと魅せられたのは、関根恵子の『ラブレター』と同年作の『青春の門』で、ノックアウトされたのが『道頓堀川』['82]だったから、彼女が三十路になってのことだ。 それからすれば、二十歳過ぎで高校教師を演じている本作では、まだまだだし、お話があまりにも安っぽくて、まぁそういう映画ではないと弁えながらも些か参った。♪わたしの青い鳥♪を歌っていた車椅子少女の桜田淳子や、パブとスナックの中間のような店のステージで♪ちぎれた愛♪を歌っていた西城秀樹というのは、いったい何だったのだろう。三村靖子(松坂慶子)が最初は反発しながらも惹かれていくという定番で辿る半グレの祐吉(沖雅也)との恋が描かれるのだが、弘(石田信之)をはじめとする不良グループから「兄貴」と呼ばれ、慕われている祐吉の有様も、不良グループの半端さ同様に釈然としなかった。 教師たちも校長をはじめとして当時の学園ものにありがちだったいい加減さが目立ち、ある意味、彼らに限らず、出鱈目加減という点では、何もかもが出鱈目な映画として徹底しているという感じを残すような作品だったような気がする。「あの頃アイドル映画であり、スター映画ですねぇ。」とのコメントとともに映友が教えてくれたポスターを観ると、当時の人気ドラマ青春学園シリーズのラグビーと『おれは男だ!』の剣道と、寅さんのいでたちを混ぜ合わせたあやかりポスターだった。いい加減もここまで徹底していると半ば芸術的だと笑わせてもらった。 すると高校の新聞部の先輩から「『祭りの準備』『成熟』『夜の診察室』の三本立て?お兄さんも好きねー。」とのコメントを貰った。「関根恵子のあのイモ姉ちゃんのように見えるおぼこい顔で、大胆に脱ぐのが好きなんでしょ。胸もお尻も大きいし。このスケベ。」とも添えられていて笑ったが、『朝やけの詩』['73]の日誌に綴っているように「映画公開時の平凡パンチやプレイボーイのグラビアがまだ手元に残っている」。勿論ヌードだ。そして、参照テクストに挙げた小説版の感想には「公開当時に話題となった関根恵子のヌード写真は、いくつかの雑誌のグラビアを切り取って今も手元に残している僕の十代の大事な記録なのだが、驚いたのは、単行本の半分域を占める大きな帯に、春子を演じた関根恵子と朝夫を演じた北大路欣也が揃って裸の胸を曝け出している写真が大きく映し出されていたことだ。納屋で伸ばした脚の腿の上に載せた朝夫の瞼を閉じた頭を撫で包みながら優しい眼差しで笑みを浮かべて見下ろす春子の姿が、その美しく豊かな乳房と相俟って、柔らかく綺麗な二人の関係を湛えた、実に素敵なショットなのだが、今やこういう装丁が許容されない時代になっている嘆かわしさを痛感させられた。この“ほぼ絶対的とも言うべき美”を猥褻という感性で捉えることのほうが常識化している心の貧しい時代に一体いつからなったのだろう」と記している。 | |||||
by ヤマ '25.10.10. スカパー衛星劇場録画 | |||||
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