『花と沼~一花の秘密の性癖~』['21]
監督・脚本 城定秀夫

 映友提供の『みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ』のうちの特集テーマ「ビニ本」の回のディスクに入っていたオマケを観てみたら、城定秀夫のピンク作品だった。

 城定作品を観た最初は、十一年前にちゃんねるNecoで観賞した『渚のマーメイド』。その次は、二年前にあたご劇場で観た愛なのにまで飛ぶ。脚本と監督を交代し合った今泉力哉は、僕のお気に入り作家で、作風に相通じるところがあるように感じられる城定は、ユーモアを越した笑いを誘ってくるところが今泉よりも強い気がしている。以後扉を閉めた女教師アルプススタンドのはしの方人妻恋のいばら『江戸女刑罰史~女郎雲~』私の奴隷になりなさい 第2章 ご主人様と呼ばせてください』『私の奴隷になりなさい 第3章 おまえ次第と観てきた。

 おとなしく地味で真面目なOLの一花(七海なな)が、キャラの全てが気持ちの悪い沼田課長(麻木貴仁)に、それゆえ情欲を掻き立てられるという倒錯物語で、劇中に突如挿入される蛇のカットを待つまでもなく、団鬼六の花と蛇をもじった『花と沼』というタイトルを冠しているわけだが、緊縛も羞恥責めも出て来ない。むしろあっけらかんとした性の享楽を描き、変態を温かく笑っている風情があり、不同意性交の場面は一切なかったように思う。

 団鬼六の描く世界では、身体的苦痛や羞恥に官能を煽られたり、おぞましさに震える姿が描かれはするけれども、気持ち悪さそのものに興奮する性癖は、直截的には描かれていない気がする。だが、変態の変態たる核心はそこにあるのではないかという提示があるように感じた。そのうえで変態の哀感を描出し、決して変態を蔑視するのではなく、いまどき風の“個性として捉える”造りにしてあるところに、その「個性」なる浅薄な捉え方を笑っている感じがあって感心した。
by ヤマ

'24. 8.29. スカパー衛星劇場録画



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