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『愛なのに』 | |||||
監督 城定秀夫
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九年前に「そーか、これがウワサのJOJOテイストなのか~(笑)。」とmixi日記に残した、タイトルの冠に「シリーズエロいい話」と付いているオリジナルビデオ作品『渚のマーメイド』['12]しか、城定監督作品は観ていないが、けっこう面白かった覚えがある。本作もまた、そんな馬鹿な!の“なさそでありそうな話”を、もしそうなれば如何にも起こしてしまいそうな心情として写し取り、巧みに描き出していたように思う。人間なるものの実に可笑しくて奇妙で困った真摯さを造形していて、なかなか面白かった。 それにしても、女子高生(河合優実)だろうが、マリッジブルー期の花嫁(さとうほなみ)だろうが、風俗あがりのウェディングプランナー(向里祐香)だろうが、女性たちの威勢の良さとその勢いに振り回されてばかりの流され男たちの掛け合いがなかなかユーモラスで、微苦笑を誘われた。『偶然と想像』で印象深かった中島歩の演じていた慢心男の脆さぶりが、なかなか効いていたように思う。 そして、珍妙話をおふざけやコメディに向わせず、ユーモラスな可笑しみに仕立て上げ、表面的な上っ面だけでレッテルを貼るような世の振る舞い全てへの異議申立てとも取れるような決め台詞「愛を否定すんな!」が光っていた。そういう意味では、先ごろ観たばかりの秀作『流浪の月』にも通じているわけだが、そのテイストの違いの大きさに改めて感心させられた。 多田浩司(瀬戸康史)が店主を務めていた古書店の名前が「上々堂」となっていて、「城定どぉ?」の洒落かと思っていたら、エンドロールに記された撮影協力がそのままの店名になっていて驚いた。よもや実際の店名だとは思わなかった。こんなところまで“なさそでありそうな話”だったのかと恐れ入った。 | |||||
by ヤマ '22. 6.12. あたご劇場 | |||||
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