『万引き家族』をめぐって
映画通信」:ケイケイさん
ヤマ(管理人)


ケイケイさんmixiコメント2018年06月22日 01:15 ~2018年07月06日 23:26

ヤマ(管理人)
 ケイケイさん、こんにちは。
 ようやく観て来ました。mixiとFBにはメモったし、日誌はもういいかなぁと思い、拝読に伺いました。思った以上にツッコんでて、笑えました(拍手)。僕も違和感が付きまとって難儀した作品です(笑)。

(ケイケイさん)
 ヤマさん、あの万引きは、ゲーム感覚であって、貧困由来ではないですよね。私も最初は全然ついて行けなくて。。そしてあの家! 掃除しろ、片付けろ!と、スクリーンのなかに入りたくなって困りました(笑)。

-------湧き起こる数々の疑問点-------

ヤマ(管理人)
 ケイケイさんがmixi日記のコメントにお書きの事がバレて、男の子は児相送りになるんですが、その後リリーと会うんです。いや、それはないだろう、万引きを教えた親でもない男は、面会させないと思うのですが、暢気に釣りさせていました(笑)。ですが、これ、僕も思ったんですよ~。で、まさにmixiにも書きかけてて、ふと、今どきのことだから、賢い祥太はケータイ番号を知ってたんじゃないかと思い直してデリートしちゃいました(笑)。

(ケイケイさん)
 携帯ね、それはあり得ますね。でも祥太が治(リリー・フランキー)に連絡したのではなく、治が連絡したんじゃないですか? 治が信代(安藤サクラ)に「その事を言う為に、こいつを呼んだのか?」と言ってましたから。

ヤマ(管理人)
 それは僕も覚えてます。面会に連れてくるために連絡を取ったのは、治だと思います。だから、僕も最初、犯罪者家族から離して地域小規模児童養護施設からの小学校通学措置を取ったのに、万引き指南をしていた養父に連絡先を教えるはずないと思ったんですよ。でも、その後で、警察なり福祉事務所が教えなくても祥太のほうから連絡を取ってきていて、それで治が連絡先を知っていたということはあり得るんじゃないかと思ったんですよ。で、信代から連れてくるよう求められ、祥太から教わっていた宛先に連絡したということかな、と。

 もっともケータイをいじってる亜紀(松岡茉優)の姿はありましたが、治が持ってた場面は直接には出て来なかった気がするのですが、いまどき日雇い仕事こそ、ケータイを持ってなかったらありつけませんからね。さいわい僕は、日雇い仕事じゃないので、ケータイ不所持の我が道を行けてますが(笑)。

 改めて一番の謎は、遺族年金を遺した爺さんが死んだのは一体いつだったのか、だと思い当りました。爺さんの死期については、僕のmixi日記でも触れてますが、そんなに昔じゃありませんよね。それがなければ、亜紀と初枝(樹木希林)が知り合う機会がありませんし、月命日に訪ねてくる初枝に金封を渡すことが何年も続くはずありません。

(ケイケイさん)
 あれ、遺族年金なんですか? 私は初枝婆ちゃんの、国民年金だと思ったんですが。遺族年金は、配偶者が厚生年金を入れていた人しか、貰えないはずなんです。なので、夫が厚生年金を払っていたら、妻は自動的に三号年金となって、国民年金を払っていた事になるでしょう? なら、二ヶ月で11万ちょいと言うのは、少なすぎです。国民年金なら、後期高齢者保険、介護保険を引かれて、ちょうどあの金額くらいかな?
 すごく生活に密着した話になってきましたね(笑)。そもそも監督が、年金は二ヶ月に一回支給や、年金制度をちゃんと理解していないのかしら? それなら、このテーマからしたら、言語道断です。

ヤマ(管理人)
 これは、初枝が「遺してくれた」というようなことを言ってた気がします。国民年金だったとしたら、誰が初枝の掛け金を払っていたのでしょう。ポイントになるのは、初枝の夫が家を出たのは、いつ頃だったのかってことになりそうですね。

(ケイケイさん)
 爺ちゃんと死に別れたのは、そんな昔じゃないと私も思います。死んでから、悔しさと金欲しさに、遺族の下に元夫の命日に託けて、通っていたと私も解釈しています。

ヤマ(管理人)
 これについての僕の理解は、悔しさはあっても金欲しさではなかったんじゃないかと思ってます。ちょうど魂萌えでそうだったように…。あの作品でもゴルフ場の会員権のことで揉めたりしますが、あれも金欲しさそのものではなかったように、初枝が3万円を繰り返しタカリに行ったのは、おそらくは亜紀のために臍繰りを貯えたかったんじゃないかと思ってます。
 亜紀の父親は、連れ子だから、あのような形になるのであって、初枝の実子じゃないですよね。

(ケイケイさん)
 亜紀の父親は、連れ子じゃないと思います。初枝の「やっぱりあの人(元夫)に似てきてね~」みたいな台詞、ありましたよ。初枝の元夫(山崎努・笑)と、亜紀の祖母との間に出来たのが、亜紀の父親じゃないですかね? ややこしいな(笑)。帰り際にお金を渡しながら、自分の母親があなたの家庭を奪ってしまって…、みたいな台詞がありました。その事に引け目を感じて、疎ましいのにお金を渡していたと解釈したんですが。
 なので、亜紀も亜紀の父親も、初枝とは全く血の繋がりはないと思います。亜紀の母親が「何でいつまでもお父さんの最初の奥さんまで家に入れるの?」と、夫を詰っていましたし。

ヤマ(管理人)
 亜紀の父親が初枝の子供でないことは明白ですが、初枝の夫の実子だとすると、そうとう早くから家を出たか、家を出ないままに隠し子として二股家庭を築いていたかってことになりますが、そのどちらも妙に馴染まない気がして、やむなく女のほうの連れ子かと思っていました。でも、言われてみると、「やっぱりあの人(元夫)に似てきてね~」みたいな台詞、あったような気がします。
 しかし、亜紀の父親が初枝の夫の実子で、初枝の夫が子供を連れて他所の女の元に走ったというのは、かなりかなり特殊なケースでないと想定しにくい気がしますよ。亜紀が亜紀の母親の連れ子で、妹が新しい父親との間の子で、母親が新しい夫に遠慮して二人の間の子であるさやかを大事にして亜紀を蔑ろにするというのはあり得そうですけどね。
 ただ、亜紀と初枝が出会うのが初枝の夫の死後だというのは、我々の意見が一致してますね。そして、死んでから、そんなに何年も経ってはいないという点も。そこで、亜紀の父親が初枝の実子じゃないのだとすれば、遺族年金が出始めたのもかなり最近のことではないかと思わざるを得ません。
 妙に釈然としないことが多いですよね。

(ケイケイさん)
 私は初枝の夫も、国民年金だったと想像しています。国民年金同士は、片方が亡くなると、生活が立ち行かなくなるケースが多いんです。遺族年金がないから、両方の国民年金を合算して生計を立てていたのに、半額になってしまうから。これは身近にもいますね。なので偶然出会った(多分パチンコ屋)、家のない治&信代と、家はあるけど金がない初代と、利害が一致して暮らし始めたのかと。

ヤマ(管理人)
 それだと、初枝の年金を当てにしてたかっているという亜紀の非難は少しズレてることになって来ますが、なんにしても、つくりもの家族の生成自体が一向に釈然としてきませんよね。

(ケイケイさん)
 なんか映画の感想ではなく、年金相談会みたいな感じだわ(笑)。ここを読んだ年金に詳しい方は、ご一報下さい(笑)。
 私は亜紀こそ、亜紀の父親の連れ子なのかと感じました。妹の名前の「さやか」は、普通源氏名にはしませんよね。それか、昔から家族から疎外感を感じていたか。初枝とは、祥月命日通いしている時に、出会ったと思いました。夫を奪われた女→初枝、家族から疎外感を感じている娘→亜紀、と、亜紀の家庭から共通の孤独を見出した者同士として、心を暖めあっていたのかと、感じました。

-------疑問点の整理をしてみた-------

(ケイケイさん)
 えーと、認識にずれがあるので、ちょっと整理しますね。まず私の認識です。
〇初枝(樹木希林)→最初の夫(山崎努)とは、亜紀の父親(緒形直人)の母(当時未婚)が不倫して離婚。
 あの汚い家の仏壇に飾っていたのが、二番目の夫。あの家には二番目の夫と暮らしていた。遠くに実子あり。寄り付かず。「残してくれた年金」とは、国民年金。専業主婦で、夫が払っていた。
〇亜紀の父親(緒形直人)→山崎努と緒形直人の母との間。山崎努の再婚後、または不倫中に身篭って出生。
 初枝とは血縁関係なし。両親の結婚の経緯で、初枝に負い目あり。
〇亜紀(松岡茉優)→祖父は山崎努。祖母は緒形直人の母。父親は緒形直人。母親は森口瑤子。妹あり。
 私の推測では、父の連れ子、または家族の愛は妹の集中し、家庭で疎外感を感じていた。初枝が、山崎努の祥月命日に緒形家に参ったとき、知り合う。

 緒形直人は、一般より裕福な暮らしぶりでしたよね。自分の今の境遇との落差から、初枝は僻みを持っていたと思います、あのまま夫婦が継続していたら、私もここの住人だったんじゃないかと…。緒形直人と、疎遠な自分の子供を比べる気持ちもあるでしょう。お金を引き出す云々ではなく、松岡茉優を引き込んだのは、相憐れむが主ですが、緒形直人の家庭に、不幸の陰を刺してやりたい気持ちもあったと思います。お金目当てもある、と書きましたが、恨みや僻みの代償としての、お金だったと思います。だから使わずに、取っておいたんじゃないかなぁ。淡々と演じていましたが、腹にはいっぱい詰め込んでいた女性ですよ、初枝は。

【年金問題】
 年金に関しては、遺族年金だと厚生年金を夫が払っていたという事。それなら初枝は現行の年金制度だと、国民年金も払っていたという事で、この金額では二か月分で少な過ぎます。11万ちょっとなら、後期高齢者、介護保険を引いて、ちょうどこれくらいです、国民年金のみなら。
 多分ね、これは作り手が「年金」とだけ、描きたかったと思います。アリエルさんが仰るように、リアルなようで手抜きですね。

【祥太の件】
 治と祥太のコンタクトが祥太から教わっていた宛先に連絡したということかな、と。ということなら、施設にかかりますよね。個人の携帯は持たせて貰えないはずです。治は素性を福祉の人に聞かれるはずですよね。祥太は、家族不明と個人情報では把握されているはずだし、担当者は訝しく思いませんか? 治が嘘をついたとして、すぐばれると思います。病状説明と同じで、この場面で他人と外出させるのを許可するのは、考えづらいです。ここは非常にいい加減だと思いました。

【信代の台詞】
 ヤマさんご指摘のこれだと、初枝の年金を当てにしてたかっているという亜紀の非難は少しズレてることになって来ますが、なんにしても、つくりもの家族の生成自体が一向に釈然としてきませんよね。ですが、亜紀のこの台詞も謎。当時夫婦は働いていたわけで、当てにする金額ではありません。焦点として、死後の年金としていたなら、解釈できますが。自分たちが世話してやっているのに、初枝はそう思っていない、との信代の台詞がありました。祥太を連れて逃げ込める家としては、あそこ格好ではあったと思います。

 こうやって整理すると、人物描写は長けていますが、設定はいい加減過ぎですね。ではヤマさん、どうぞ(笑)。

ヤマ(管理人)
 では、僕もケイケイさんに倣って…
〇初枝(樹木希林)→夫(山崎努)とは、亜紀の父親(緒形直人)の母(当時未婚)の元への家出により別居。
 あの汚い家の仏壇に飾っていたのが、夫。あの家には独りで暮らしていた。つまり、遠くにいる実子も二番目の夫も想定外(聞き逃しかも)となります。「残してくれた年金」とは国民年金、専業主婦で夫が払っていた、も想定外です(もしそうなら、二番目の夫は自営ってことですか。扶養家族での三号被保険者なら、遺族年金が発生しますよね。)。亜紀の父親の実父を山崎努にしようとすれば、初枝に二人の夫がいたことにする必要が生じて来るように思いますが、そうすると亡き夫とも言えない柴田の家を月命日に訪ねるのも、再婚した夫の扶養を受けながら初枝が柴田の姓を名乗っていることにも、違和感が生じます。
〇亜紀の父親(緒形直人)→山崎努が身を寄せた女の連れ子(ただし、山崎努の家出の時期によって異なってくる)。
 初枝とは血縁関係なし。両親の結婚の経緯で、初枝に負い目あり。⇒同感
〇亜紀(松岡茉優)→義理の祖父は山崎努。祖母は緒形直人の母。父親は緒形直人もしくは母親の前夫。
 母親は森口瑤子。妹あり。ケイケイさんの「私の推測では、父の連れ子」は想定外(父(緒形直人)の連れ子の場合、母親は森口瑤子ではなくなるわけですよね?)。「家族の愛は妹の集中し、家庭で疎外感を感じていた。」は同感。「初枝が、山崎努の祥月命日に緒形家に参ったとき、知り合う。」も同感。問題は、山崎努がいつ死んだかで、それによっては、亜紀の家出前から知ってた可能性も。

【年金問題】
 年金額は遺族年金であったにしても加入期間ほかの条件によって額が違ってくると思いますが、確かに2ヶ月11万では、ちょうど国民年金と金額的に見合いそうですから、少なすぎますよね。

【祥太の外出許可の件】
 携帯所持はないだろうと僕も思います。ですが、治の携帯番号を知っていれば、公衆電話からも掛けられます。祥太は、妹ゆり【本名:樹里?】(佐々木みゆ)を庇うためとはいえ、やはり自分が下手を打って捕まったことが露見の端緒になっていることに後ろめたさがあって、治に連絡を取らずにはいられなかったろうと思います。上にも書いたように、いまどき、雇用が不安定な人のほうがケータイ必需ですから、治はケータイを持っていたんじゃないでしょうかね。

【信代たちが初枝と同居し始めた時期】
 「祥太を連れて逃げ込める家としては、あそこ格好ではあったと思います。」とお書きのこれも、一体いつからのことだったんでしょうね。亜紀の来る前なのは間違いないですが、家出した初枝の夫が死ぬ前なのでしょうかね、やはり。国年のみで遺族年金の支給前からですよね。

【信代の台詞】
 信代の「自分たちが世話してやっているのに、初枝はそう思っていない」との台詞は、普通にありがちな話であって、カネを出してもらってると、世話してるほうは、カネを出しているほうに対して、こういう思いを抱きがちのように思います。

 ところで、これだけの談義を交わしていただいたら、こちらの頁をいずれいつもの直リンクに拝借したいので、その台紙となる拙日誌を綴っておかないといけないと思い始めました(笑)。

(ケイケイさん)
 そのほうがいいかも? まだまだ続きそうだもん(笑)。

ヤマ(管理人)
 とりあえず台紙としての日誌は用意したので、先行上映ならぬ先行掲載です(笑)。

(ケイケイさん)
 先行掲載、拝読しました(笑)。巧みな演出と演技で“実在感(リアリティ)”満点なのに、“現実感(アクチュアリティ)”を欠いているという何ともヘンな感じがしてならなかった。は流石ヤマさん、的確な表現ですね。

ヤマ(管理人)
 ありがとうございます。

(ケイケイさん)
 ここに悶々としているわけですよ、アタクシたちは(笑)。お書きになっているように、外国の人には違和感なかったんでしょうね。ネットで読みましたが、欧米は養子を迎えることが多いので、血の繋がらない間柄で、真の家族が作れるのか?に、フォーカスして観たようです。
 ヤマさんの説、了解しました。では、煮詰めて参りましょう(笑)。

-------【汚い家の仏壇に飾っていた遺影】-------

(ケイケイさん)
 山崎努じゃなかったですよね? 普通のおじいさん。山崎努と離婚後に、再婚して10年から数年前に死亡したと推測していました。その後、初枝は一人暮らし。治家族が入ってきたのは、それ程昔ではないように思います。二年前後前ですかね? 根拠はないです。

ヤマ(管理人)
 “万引き家族”の暮らす家の仏壇にあった写真が山崎努だったか否かは判然としてません。少なくともその時点で直ちに山崎努とは気づかずに、後の場面で、あ、山崎努だったのかと思った覚えはあります。

(ケイケイさん)
 これは山崎努ではありません。ウン、自信ある(笑)。全く名前も知らない人でしたから、余計覚えています。

-------【遠くにいる実子と二番目の夫】-------

(ケイケイさん)
 遠くにいる息子は、民生委員みたいな人が訪ねてきたとき、「息子さんは遠くだった?」と、聞いていました。二番目の夫という私の解釈は、年金を引き出し、お土産にお餅を買ってきて、仏壇に供えたときに、高齢男性の遺影が飾ってあったので夫だと思った後、緒形邸でのシーンがあったので、山崎努とも結婚していて離婚後、再婚したのだと思いました。

ヤマ(管理人)
 訪ねてきた人が「息子さんは遠くだった?」と訊いた場面の記憶は残ってませんが、問うたのが民生委員ならまだしもではあるものの、訪ねてきた人がそう問うだけで、実際に遠隔地に実子が住んでいるとも即断しかねる気がします。息子がいるいないを不承知の上でのただの問いとしても成立し得る問いですからね。

(ケイケイさん)
 あれは民生委員だったと、私は解釈しました。ケースワーカーではないと思いますし、親しい隣人というのでもない。なので、子供たちは隠れたんじゃないかなぁ。独居老人となっているので。息子の件は、ヤマさん説もありますね。

ヤマ(管理人)
 遠くに息子がいるのか、居ないのかは、お話にあまり影響ないですしね。

-------【亜紀の父親(緒方直人)の実父および初枝の再婚問題】-------

(ケイケイさん)
 夫が二人いたのじゃなくて、離婚して、再婚したんだと思っていました。確かに柴田姓を名乗っているのは、おかしいですね。失念していました。

ヤマ(管理人)
 初枝自身が再婚していたのなら、血縁者の誰もいない家に、前の夫が死んだからってわざわざ訪ねていくことに違和感がありますよ、僕的には。前夫の生前から付き合いのある家になっていたのなら別ですが、それも考えにくいし。

(ケイケイさん)
 でも緒形直人については、確かに「段々あの人に似てきて」との台詞はあったので、最初の夫の子だと思います。

ヤマ(管理人)
 それで言えば、血の繋がりはなかろうとも、緒形直人は山崎努とともに生活してたわけだから、血の繋がりはなくとも(再婚相手の連れ子なのに)「段々あの人に似てきて」と言ったとは考えられませんか?

(ケイケイさん)
 私にはないです。

ヤマ(管理人)
 僕には、初枝の再婚説よりもむしろそのほうが自然な気がします。

(ケイケイさん)
 そういうケースもありですが、緒形直人は山崎努の実子だと思うのが自然だと思います。

ヤマ(管理人)
 年齢からして僕はそこにこそ無理があるような気がしてますね。勿論いろいろなケースが想定されはするのですが、僕がケイケイさんの唱える初枝の再婚説への疑問を抱くのも、緒形直人が家出した夫の実子なら、夫の家出は一体いつだったのか、という疑問が湧いてくるのも、全ては、そこにあるわけです。

(ケイケイさん)
 私はもう、大昔の事だと思っていますよ。初枝が亜紀を愛おしんだのは、元夫の実の孫となる亜紀を通じて元夫を観ていたというのも、理由の一つかと思います。

ヤマ(管理人)
 僕は、亜紀とその妹の関係については、実の妹、異父姉妹のいずれもあり得るとは思ってますが、どちらかというと、亜紀の家出の件からも異父姉妹のように感じてますから、僕的には、連れ子(緒方直人)の結婚相手(森口瑤子)の連れ子くらいに観ているので、初枝が亜紀を通じて元夫を観るなんてのは、全くの想定外でした。

(ケイケイさん)
 二番目の夫が亡くなったことだし、人前では偽名で「柴田」を名乗っていたと、考えられませんか? 祥太が病院に入院した時、名前を聞かれて「柴田祥太」だと信代が言っていたのと同じで。

ヤマ(管理人)
 なぜ、そんなことをする必要があるんですか?

(ケイケイさん)
 みんな偽名だから。

ヤマ(管理人)
 うーん、少し弱い気が…(笑)。

(ケイケイさん)
 ゆり→じゅり→りん と、改名させていったでしょう? 彼らには「家族」になるための、儀式だったんじゃないかなぁ。

ヤマ(管理人)
 でも、亜紀が別名を使っていたのは、お店のほうで、あの家では亜紀のままだったんじゃないですか?

(ケイケイさん)
 そうですね。私には「初枝にとって思い入れが強い名前の“本物”が偽家族に特別待遇で入っていた」的に思っていました。この子だけ、生活費を入れない約束だと、初枝が言っていたでしょう?

ヤマ(管理人)
 「この子は、生活費を入れない約束」っていうのは、確かに初枝が言ってましたね。僕は、その言葉から、特別待遇は未成年ゆえだと解してました。

(ケイケイさん)
 離婚前の苗字を使うのこそ、初枝の元夫への屈託ではないでしょうか? 民生委員が、柴田さんと呼んでいたのかは、記憶にないです。

ヤマ(管理人)
 僕は、上にも書いたように、問うた人のことはあまり覚えがないのですが、なんとなく朧げに表札がそうだったような気がしてます。

(ケイケイさん)
 でも、治が事故をしたとき会社の人は、「柴田さん」と呼んでいた記憶があります。「柴田さん、家族がいたんだ」って。

ヤマ(管理人)
 そんなら、やはり柴田を名乗ってたのに違いありませんね。やっぱ、再婚説は釈然としないなぁ。

(ケイケイさん)
 もう一度整理しますね。
 山崎努と初枝は、山崎の不倫が元で離婚。その後、山崎と不倫相手の間に、緒形直人誕生。程なくして、初枝も二度目の夫と再婚。その後息子出産←これが民生委員の言う、「遠くの息子」。
 どこから元夫が亡くなったの知ったのかは、定かではありませんが、初枝は今の自分の境遇と比べて、僻みも恨みもあったと思います、山崎努や緒形直人に対して。だから、嫌がらせのように、お参りしているんだと思いました。

ヤマ(管理人)
 これには、やはり強い違和感が僕にはあります。初枝の再婚と、再婚もしていた初枝が大昔に離婚した夫の姓を名乗り、元夫の死後に家に乗り込んでいくことが了解しがたいからです。緒形直人の年から考えて50年くらい前のことになるんですよね。でもって、亡くなったのは比較的最近なわけでしょ? しかも初枝は再婚もしてたってなると、やっぱヘンじゃありませんか? 別な男と同居してたって、それはいいんだけど、“妻でありつつ妻の座を奪われている”という形そのものがなくなっていると、緒形直人の家との関わりが奇異に思えてしまいます。
 僕的には、籍が残っていたことで思わぬ遺族年金が入ることになって初枝も、昔(といっても50年も前じゃありません。せいぜいで2~30年くらい前。)家を出て行ってしまっていた夫の死を知ることになり、遺族の家を訪ねたのではないですか。そのように考えるほうが自然な気がしますし、そうなると、緒形直人は山崎努の実子ではないということになります。
 また、初枝には山崎努【元夫】や緒形直人【義理の関係さえもない息子】に対して僻みも恨みもあったとのことですが、50年前の離婚に対する僻み恨みではなく、今の境遇に対するということならまだしもではありますが、僕にはそうは見えませんでした。おそらく亜紀からも聞いているであろう家のなかの状況からは、むしろ作りものの“万引き家族”のほうが、ずっと温かいという自負があったでしょうし、ケイケイさんが元々のmixi日記にもお書きのように、そんなに貧しくもなさそうでした。
 僕は、最初は三人から始まったであろう“万引き家族”に祥太を加えたのは初枝ではないかという気がしていますし、その後、居場所を失った亜紀を引き取ったのも初枝の意思が大きかった気がしています。その初枝の感化が治(リリー・フランキー)にも及び、祥太と馴染み、りんを引き取ることに繋がったのではないでしょうか。亜紀を引き取ったのは、せいぜいで一年前、まぁ半年くらい前というのが妥当な気がします。

-------【亜紀の母親】-------
    (ケイケイさんの推測では、亜紀は「父の連れ子」で、森口瑤子は実母ではない

(ケイケイさん)
 この辺は、疎外感を感じる元はどこだ?と考えて、妹に愛情が集中しているのは確かなので、そうかなと。「留学先から帰らないんです。お父さんは寂しそうなんですが」の森口瑤子の台詞で、あぁ実父なんだなと。大して寂しそうでもないのに(笑)。母親の連れ子なら、この台詞、あえてあるかな?と。母親の連れ子なら、帰らないんです、だけだと思います。
 どちらにしても、連れ子を連れて再婚したら、再婚同士の子に愛情が集中して、連れ子は浮く家庭が多いです。

ヤマ(管理人)
 ですよね、だから僕は、上にも書いたように、亜紀の家出の件からも異父姉妹のように感じています。

-------【初枝の夫(山崎努)の死期】-------

(ケイケイさん)
 亜紀の家出前でしょうね。なので、死んだのは、そんなに昔じゃない。貰った金封を覗いて「前と金額は同じ」という初枝の台詞があったので、初枝と亜紀が知り合ったのは昨年の命日という説も浮上しますね(笑)。

ヤマ(管理人)
 昨年かどうかはともかく、ここのところは、見解が一致しています。

-------【年金の件】-------

ヤマ(管理人)
 年金額は遺族年金であったにしても加入期間ほかの条件によって額が違ってくると思いますが、確かに2ヶ月11万では、ちょうど国民年金と金額的に見合いそうですから、少なすぎますよね。

(ケイケイさん)
 でしょう~。

ヤマ(管理人)
 実際のところを問うてみるのが一番かと、隣家に住むおふくろに訊ねたところ、国民年金も遺族年金も同時に振り込まれるので、僕がチラッと思った映画での引き出し場面は国年部分のみの支給があったのではないかとの予測は外れました。でも、以前は10万ちょっとあった国年部分は、介護保険も導入され負担増の制度改正が加えられた今では、9万あるかないかになっているそうです。

(ケイケイさん)
 でしょう? 私は父親の年金を管理しているので、ちょっとだけ詳しいんです(笑)。

ヤマ(管理人)
 70%支給の遺族年金部分がわずかに2万というのは、いかにも少なくはありますが、もしかすると公共料金等の引き落とし部分を残せば、そのくらいにしかならない程度に遺族年金部分もそう多くはなかったのかもしれませんよね。

(ケイケイさん)
 これも異議有り。公共料金の引き落としは、15日にあるのは記憶にないです。光熱費は、もう少し後だと思います。大阪の場合ですけど。是枝は、年金括りでアバウトに描いていただけで、私たちがここで年金問題にカオスになっているのは、想定外なんですって(笑)。雑なだけですよ。

ヤマ(管理人)
 論点がよく判りません。国民年金だけでは今や11万もはないらしいということと公共料金の引き落としの日が関係してくるのですか?
 引き落とし日の如何によらず、もし引き落としがあるのであれば、その分だけは残しておかなければいけないはずだから、年金額自体は11万円よりも更に大きいのではないかと問い掛けなのですが…。つまり、国民年金だけが支給されていたわけではないのではないか、ということです。死亡保険を掛けることにしたってな話もしてましたよね、初枝。しかも、治や信代の失業後のことじゃありませんでしたか? やはり、あの引き出していた11万円が二ヶ月分の年金の支給額全額ではない気がします。

(ケイケイさん)
 では整理しますね。お母様の国民年金は、後期高齢者・介護保険を引くと9万円。初枝は11万ちょっと。残りの2万円は、ヤマさんは遺族年金から、光熱費を引いた額だと考えているのですよね?
 で、私の説は、大阪の場合ですが、年金支給日は毎月15日、光熱費の引き落としは、電気・ガス・水道全てだいたい20日~25日前後。なので、光熱費が支給日と同時に引き落とされることは、有り得ない、という意味です。あくまで大阪の場合で、東京が同じならという仮説です。
 今思いましたが、お母様は国民年金と遺族年金の総支給額が、割と多いのではないですか? 後期高齢保険・介護保険は、総収入によって金額が決まるので、人によって収めるお金はバラバラです。そして遺族年金ではなく、基本的には厚生年金・国民年金から引かれる事になっているはずです。お母様と初枝の差額二万円は、後期高齢者保険と介護保険の収める額が、初枝のほうが少ないからじゃないですか?
 それと、引き落としが何度も不可であれば、自動的に公共料金は振り込み形式になるんです。この家庭を見る限り、その可能性は高いです。光熱費を口座に残しておかなきゃという概念は、ないんじゃないですかね?

ヤマ(管理人)
 うえにも書いたように、遺族年金が最近加わったとすると、すっきりしてくるように思います。ケイケイさんは、亜紀と一緒にATMを訪れた初枝が11万円を引き出したとき、預金残高の全額を引き出したとお考えのようですが、そうでない場合も普通にあるのではありませんか。また、そのとき引き出した11万が受け取り年金額の全額とは限らないというのも、普通にあることのような気がします。もっとも、よくよく考え直してみないと、映画のなかであのような描写で11万引き出す様子を描かれると、それがそのまま二ヶ月分の年金額だと解されやすくなるのは尤もな気がします。僕もそうでしたし。
 それに、手元にヘソクリ現金が残っていたり、新たな保険を掛けたりする余裕があるのであれば、光熱費等の引き落とし額を口座に残さないことで面倒な振込形式に変更されてしまうような愚は避けて当然のような気がするのですが。

-------【祥太の外出許可の件】-------

ヤマ(管理人)
 治はケータイを持っていたんじゃないでしょうかね。

(ケイケイさん)
 治と連絡は取れるでしょうが、外出許可はどうやって取ったんでしょう? 休日の長時間の外出には、どこで誰と、何人で?と、届出があると思います。結局泊まらせてしまったことを詫びた治に、翔太が「今日の夕方五時までに帰らないとダメなんだ。だから泊まっても、もう時間が過ぎているから同じだよ」(時間はあやふや・でも夕方でした)と、布団の中で話していました。お菓子を買いに行くのに、届けは必要ないでしょうが、朝から夕方までなら、会う人が施設に届ける書類があると思います。治じゃ無理でしょう?

ヤマ(管理人)
 あの子は非常に聡明な子ですから、事前届自体はいかようにも書けたんじゃないですかね。例えば前もって、どういう場合に外出が認められるのかと問うておけば、それに合わせた届を出せばいいだけのことで、外出してしまえばこっちのもんですよね。まぁ、帰ったらお咎めを受けますが、それはもう作中でも彼自身が言ってたとおり、遅刻だろうが外泊だろうが、どっちにしても叱られるわけです。

(ケイケイさん)
 事前届けを書くのは、子供ではなく、面会を引き受ける大人のほうでは?

ヤマ(管理人)
 映画自体に外出届の話は出てきていなかったように思いますが、どういう形であったにせよ、夕方までの外出許可を得る手立てを、賢い祥太であれば、上手くやりおおせているような気がします。場合によっては、無断外出かもしれません。自分が「必要アリ」と判断すれば、それくらいのことはやりますよ、彼は。いずれにしても、治と祥太がコンタクトを取り得たのかに比べると、あまり重要なポイントではないような気がします。

(ケイケイさん)
 確かに。 私は安藤サクラの「私たちじゃ、もう無理なんだよ」と、断腸の思いの言葉には、とても感銘しましたから。あれは「母親」としての、彼女の成長ですよ。
 でもネットで読みましたが、是枝が本物の万引き家族が捕まったときの記事で、釣り道具だけが売られていなかったんですって。それは、父親が息子と釣りをしたくて売らなかったそう。いい話だと思ったんですって(笑)。不謹慎だとは思うとも書いていましたが。それで、この映画でそこを挿入したかったんだとか。
 まぁ監督の意思だからいいんですが、私はやっぱり、治や信代に祥太を会わせることには、違和感があります。ファンタジーだと思えばいいんでしょうが(笑)。ヤマさんが仰るように、祥太からコンタクトを取ったとしたら、それは懐かしいからじゃなくて、彼らに別れを告げるためなのでは? 私は祥太の賢さは、そういうふうに使って欲しいです。それなら、情と決別がない交ぜになった、余韻のあるラストに繋がりますから。

ヤマ(管理人)
 釣り竿の件ですが、売らずに残したというのはもちろんアリだと思うのですが、事件の露見後も押収されておらず、治と祥太が実際に釣りをすることができているのは、ヘンな気がします。

(ケイケイさん)
 うん、全然不自然です(笑)。監督は細部のリアリティには拘っていたけど、統合性は、ないがしろなんじゃないですか? 私はお話すればするほど、そういう気がします。

ヤマ(管理人)
 本物の万引き家族が捕まったときには、そうしてきちんと警察に押さえられているから、その話を知ることができているわけですからね。死体遺棄の件だけで、万引きによる生活維持のほうが一切バレていないというのは、やはり不自然な気がしますよ。ケーサツ、そこまで甘くはないだろうって、ね。

-------【信代たちが初枝と同居し始めた時期】-------

ヤマ(管理人)
 家出した初枝の夫が死ぬ前なのでしょうかね、やはり。国年のみで遺族年金の支給前からですよね。

(ケイケイさん)
 えーと私の説では、再婚の夫の死後です。国民年金だと思っているので、もう支給されています。
 年金の件も、ヤマさんも私もそれなりに知識はあるでしょう? それをつき合わせて、合わないということは、やっぱり描き方が雑なんですよ。年金と言えば、観客は納得すると思っているんなら、作りの手の怠慢です。

-------【信代の台詞】-------

ヤマ(管理人)
 これは、普通にありがちな話であって、カネを出してもらってると、世話してるほうは、カネを出しているほうに対して、こういう思いを抱きがちのように思います。

(ケイケイさん)
 了解しました。仰るとおりですね。
 やっぱり、「秀作」という項目は、消したほうがいいかも?と思えてきました(笑)。

-------【最後に】-------

ヤマ(管理人)
 あと、ケイケイさんとお話しするなかで反芻していて思ったのですが、初枝がパチンコに興じている場面がありましたよね。しかも、あの初枝も“ちょろまかし”というか、出玉の万引きをしてました。僕は、あの場面は彼女の万引きを描いた場面だと思っていたのですが、もしかすると、幼い祥太を拾ってくる切っ掛けは初枝にあったのかも、と思い始めました。

(ケイケイさん)
 それはありですね。

ヤマ(管理人)
 パチンコ屋の駐車場で赤のヴィッツの車中でぐったりしている幼い祥太を最初に見つけたのは、彼女だったのではないか。動転して治に連絡を取ったら、祥太に見せていた例の車破りの手口でガラスを叩き壊して救い出したのではないか。だとすれば、かなり前から、かの“万引き家族”は疑似家族を営んでいたことになりますね。

(ケイケイさん)
 二年前どころか、相当前。よくばれなかったですね。

ヤマ(管理人)
 最初のはしは、まさしくケイケイさんが偶然出会った(多分パチンコ屋)、家のない治&信代と、家はあるけど金がない初枝と、利害が一致して暮らし始めたと書いておいでた三人暮らしからだった気がします。

(ケイケイさん)
 治が「お前も化粧すりゃ、まだまだいけるよ」と言ってましたから、この二人は、だいぶ前からの間柄なんでしょうね。治は前科持ちで、刑務所に入っていたろうから、いったいいつから一緒なんだろう?と、また謎が(笑)。

ヤマ(管理人)
 拙日誌には、万引き家族の生成自体が腑に落ちないと綴りましたが、ケイケイさんと談義を重ねてくるなかで、僕のほうは、かなり腑に落ちて来始めました(笑)。とても嬉しいです。どうもありがとうございます。

(ケイケイさん)
 どうもありがとうございます。私のほうは、お話すればするほど、釈然としなくなってきました(笑)。
 ちなみに名前に対する認識は、以下のような文章がありました。ノベライズやパンフで確かめられたみたいです。
 >https://www.club-typhoon.com/archives/24185259.html
 >http://blog.imalive7799.com/entry/Manbiki-Kazoku-201806
 こんなにミスリードが多く、ややこしくするのは、ミステリアスに作品の付加価値を上げるつもりだったんでしょうが、逆に下がっていますよ。私たちの読解力不足じゃなくて、作り手の責任です!

 初枝の年金は、生活保護をプラスしたものだと書いているのもありました。生保併用の金額がどれくらいか、わかりませんが、金額的に毎月11万ちょいは、いい線いってるかも。
 治と信代が、初枝の息子夫婦の名前というのは、腑に落ちます。私は仏壇の写真に囚われていましたが、信代が、「本当は爺さんなんか、いなかったりして」と言っていたので、仏壇は他人、もしくは身内だったのかも。
 民生委員がケースワーカーであったなら、生活保護は絶対でしょうが、民生委員は、独居老人を訪ねたりしますから、これで生活保護だと解れ、というのは乱暴だと思います。テーマは年金売りなのに、そうじゃないし(笑)。
 山崎努に一人息子共々捨てられて、女手一つで育てたなら、柴田姓も納得です。離婚後、結婚前の姓に戻るかそのままかは、自由ですから。別れたのは、やはり相当前で合っていると思います。緒形直人の母親とは、きちんと入籍していると思いますし、遺族年金説は、私はないと思います。

ヤマ(管理人)
 紹介してくれた記事、覗いてきましたよ。一回観の僕らと違って、かなり熱心に資料に当たっているようですね。名前について考察している解説には余り違和感もなく、成程と思いながら読みました。遠くにいる実子、想定外(聞き逃しかも)。」「遠くに息子がいるのか、居ないのかは、お話にあまり影響ないと僕は書きましたが、(小説版でははっきりセリフとして言っているらしい)初枝の「ありがとうございました」と繋げると確かに、そうではなくなりますね。本来の家族で失敗してしまった初枝が“疑似家族”に求めた想いというのが改めて思い返されます。されば、やはり祥太を柴田家の孫にしたのは、初枝が発端だろうという気がますます強くなりました。

 もう一つの記事のほうは、初枝の名前が初枝になったり初江になったり、信代と書き間違ってたり、とけっこう雑ながら、熱心に考察してて興味深く読みました。主な収入源は、初江が定期的に受給する老齢年金と初江のクリーニング工場でのパート代、そしてたまに治がこなす危険な日雇い建設業の仕事だけだった。収入が足りない分は、治と祥太が必要最低限な分、日々万引きを繰り返し、なんとか生活を成り立たせていたのだったとのことですが、根本的に「なんとか生活を成り立たせていた」んじゃない気がします。むろん裕福ではありませんが、汲々とまではしてなかったんじゃないでしょうかね。

 僕の解釈では、最近になって初枝の受給額も増えた(遺族年金が加わった)ことから、治の失業や信代の失職でも直ちに困るには至らず、相変わらずのせこい万引き稼業で繋げるくらいの境遇ってことですよ。夏になると、治は工事現場で怪我をして、働けなくなった。労災も下りず、万引きすら満足にできない体になった。信代もまた、クリーニング工場を解雇された。いよいよ経済的に困窮した彼らだったが、縁側で花火大会を楽しんだり、ささやかな日帰り小旅行で海水浴を楽しんだり、彼らには貧しい中でも笑顔が絶えなかった。のは、何故なのかってことになろうかと思います。

 これをカヴァーしていたのが、僕は遺族年金、ケイケイさんは生活保護ということになろうかと思いますが、生活保護は偽名で受給できるとは思えませんし、そもそも制度的にもダブルで得られるものではありません。こちらにも書いているように「損も得もなくて、世帯収入は変わらないということ」です。

 この方も「初江の死亡届を出さない限り、約11万円の年金受給が続く」と書いてますが、年金受給額=約11万円とも限らないと僕は思うに至りましたが、映画での描き方はそう受け取らせるようなものだった気がします。

 この記事での「疑問点3:初江が亜紀の実家を訪問していた理由とは?」にちょっと注目したのですが、あまり大したことは書かれてませんでした。この方も「初江が訪問していたのは、初江と離婚した元夫が別の女性と結婚して、その間にできた息子夫婦が住む家でした。」と書いてますが、それなら、随分と前に家を出たっきりで再婚もした夫の死をどうやって初枝が知ることになったかを考えれば、腑に落ちないこと、このうえない気がします。

 遺族年金とも繋がりますが、やはり籍が残っていて、相続問題が発生したからだと考えるのが最も自然な気がしてなりません。どうして敢えてそこを避けたがるのかが不可解なんですよ。まとまったところで亜紀に還元するつもりだったのかもというのは僕の見解とも一致しているんですけどね。

(ケイケイさん)
 ヤマさんが遺族年金に拘っているのは、「柴田」姓だからですよね? だったら、初枝は再婚せずに、女手一つで息子を育てた説はどうですか? だったら、「柴田」姓を、そのまま名乗るのは不思議じゃないです。私の知人で離婚した人は、旧姓に戻る人のほうが少ないです。

ヤマ(管理人)
 離婚しても旧姓に戻らない人が多いのは、知ってます。特に仕事を持っている人には、その傾向が強いですよね。

(ケイケイさん)
 ヤマさんご紹介のサイトは、主に厚生年金では? 国民年金は満額で月7万くらいなので、生保の受給額より少ないです。足りない分申請して、生保受給額と同じにしている人は、何人か知っています。それか、普通に年金だけですね。私は何故ヤマさんが、こんなにも遺族年金の形に拘るのかが、わかりません。少々疲れてきました。

 緒形直人は、山崎努と別の女性との間に出来た子であるというのは、一致していますよね? 50年近く、日陰の身で置いておくほうが、無理がありませんか? 仏壇に位牌もあって、正当な奥さんと息子ですよ。例え50年前の事であっても、今の自分の暮らしと向うの暮らしは、雲泥の差。もし、自分があのまま妻であったなら、あの瀟洒な家に住んでいたかも?と初枝が思うのは、私は理解出来ます。

ヤマ(管理人)
 そういう観方もあるのかもしれませんが、僕は違ってます。【亜紀の父親(緒方直人)の実父および初枝の再婚問題】のところのコメントに書いた僕にはそうは見えませんでした。おそらく亜紀からも聞いているであろう家の中の状況からは、むしろ作りものの“万引き家族”のほうが、ずっと温かいという自負があったでしょうし、ケイケイさんが元々の映画日記にもお書きのように、そんなに貧しくもなさそうでした。という思いは変わっておりません。

(ケイケイさん)
 緒形直人とわが息子を比べて、出来の良い緒形直人を見て、僻みたくもなるでしょう。「柴田家」参りは、初枝の怨念や悲しさが混じってたものだと思います。女は例え50年でも80年でも、生きている限り、夫にされた事は忘れません。相手は許せても、された事は、ずっと覚えているもんです。

ヤマ(管理人)
 それでもって「柴田家」参りなんですか? 僕は女じゃないからですかね、気が知れません。そんな思いを今なお残しているんなら、なおさら行かないんじゃないですか、瀟洒な柴田家など。

(ケイケイさん)
 今が幸せなら行きません。今の楽しさは、初枝は仮初だと自覚していると思います。お参り=嫌がらせ、です。妻の森口瑤子は、「何でお父さんの前の奥さんまで家に上げるの?」と、夫を非難していましたよね。あの夫婦は、初枝に来られるのは迷惑なんです。
 ですので、感謝なんか、ありえません(断言)。だいたい感謝していたら、亜紀をこっそり匿いますか? 風俗で働く話を、ああそうかいと聞き流しますか? 大事にはしていたと思います。上に書いたように、夫や父親・母親から、「俺の人生にお前は要らない」と言われた者同士として。そう思わせた相手が、血の繋がった親子なのが、初枝と亜紀の絆を強くしたと思います。傷口を舐めあうような間柄だから、愛も絆も本物であっても、歪なんだと思います。

ヤマ(管理人)
 僕は、いささか甘いのかもしれませんが、ずっと前に出て行った夫だけど、思わぬ形で遺してくれたものに初枝は素朴に感謝していたと観ているわけですから、正反対ですね(笑)。「柴田家」参りのおカネの件にしても、ちょっと整理しますね。まず私の認識ですとのケイケイさんのコメントにお金目当てもある、と書きましたが、恨みや僻みの代償としての、お金だったと思います。だから使わずに、取っておいたんじゃないかなぁ。淡々と演じていましたが、腹にはいっぱい詰め込んでいた女性ですよ、初枝は。とありますが、僕は拙日誌にも記したように、血の繋がらない孫娘の亜紀のためにしていたことだと解していますもんね。
 男は、やっぱアマイのよ(笑)。で、作り手は男だから、きっと同じようにアマイと思いますよ。

(ケイケイさん)
 釣りのシーンを入れたがったりね。
 遺族年金という事は、籍は抜いていなかったという事でしょう? だったら、初枝は「柴田家」参りは、しません。最終的に妻であったなら、参る必要がないからです。初枝が緒形直人の母親に勝ったんですから。

ヤマ(管理人)
 【最後に】のところのコメントに拙日誌には、万引き家族の生成自体が腑に落ちないと綴りましたが、ケイケイさんと談義を重ねてくるなかで、僕のほうは、かなり腑に落ちて来始めました(笑)。とても嬉しいです。どうもありがとうございます。とした辺りで収束かなと思っていたのですが、そこに2つの記事を紹介いただいたので、この話になっているように思います。

 緒形直人は、山崎努と別の女性との間に出来た子であるというのは、一致していますよね?とのことですが、ここが元から今に至るまでの一番の不一致点ですよ。最初のほうのコメントに亜紀の父親は、連れ子だから、あのような形になると書き、では、僕もケイケイさんに倣って…と僕の受け取りを整理した時も亜紀の父親(緒形直人)→山崎努が身を寄せた女の連れ子。と書いてます。一致しているのは初枝とは血縁関係なし。両親の結婚の経緯で、初枝に負い目あり。の部分です。
 前記の【亜紀の父親(緒方直人)の実父および初枝の再婚問題】のところでケイケイさんがもう一度整理しますね。とのことで山崎努と初枝は、山崎の不倫が元で離婚。その後、山崎と不倫相手の間に、緒形直人誕生。と書いたことにこれには、やはり強い違和感が僕にはあります。…緒形直人の年から考えて50年くらい前のことになるんですよね。でもって、亡くなったのは比較的最近なわけでしょ? しかも初枝は再婚もしてたってなると、やっぱヘンじゃありませんか?と書いているとおりです。

 で、僕が遺族年金に拘っているのは、初枝が柴田姓を名乗っているからではありませんよ。この談義を始める前から、普通にそう思っていたのは、最初のほうのコメントにこれは、初枝が「遺してくれた」というようなことを言ってた気がします。国民年金だったとしたら、誰が初枝の掛け金を払っていたのでしょうね。と書いてあることから生じているものです。ずっと前に出て行った夫だけど、思わぬ形で遺してくれたものに初枝は素朴に感謝していたのだろうと僕は思っていたわけです。

 その後、談義を重ねて年金のとこを深堀りしたり、万引き家族たる柴田家の状況を反芻するだに、国民年金だけとか生活保護支給額止まりだとかは、ますます思えなくなると同時に、随分前に出て行った(であろう)夫の家との音信があるのは何故かということについて、相続問題が生じたからかもしれないと気づくに至り、やっぱ遺族年金に違いあるまいと元々の思いを強化してもらったように感じていました。

 それに生活保護だと、初枝は資産調査をされるから少しの上乗せのために家を捨てる気もなかろうし、治たちは偽名で貰えないし、どうにも釈然としないということもあります。

 僕が遺族年金だと解しているのは上記のようなことからですが、かなり説明したつもりなので、それでも「何故ヤマさんが、こんなにも遺族年金の形に拘るのかが、わかりません。」となると、もう年金の話はよしましょう。ケイケイさんも少々疲れてきたとのことですし。

(ケイケイさん)
 やっぱり是枝はイマイチだわ。私はヤマさんとお話していて、段々この作品が嫌いになってきました(笑)。

ヤマ(管理人)
 僕と話していて、段々この作品が嫌いになってきたとはまことに心苦しいですが、僕のほうは、不審に思った事々のかなりの部分に自分なりの折り合いが付けられるようになって助かりました(笑)。自分ひとりの反芻ではとても叶わなかったように思います(礼)。
 もっとも、その折り合いがついたからと言っても、まだ不審点は残っていますし、何よりも、映画を観ているときに覚えた“ヘンな感じ”そのものは、設定かれこれの事情推定に折り合いがついたからといって解消されるものではないし、僕のなかでは、やっぱり未だ「終始つきまとう違和感が拭えなかった」作品に変わりありません。再見すれば、また印象が違ってくる可能性もなくはありませんが、それはまたの機会に置いておこうと思います。
 ともあれ、いろいろ触発してくださり、ありがとうございました。

(ケイケイさん)
 今回は枝葉の疑問の議論に終始して、肝心の部分のお話が出来なかったのが残念です。それでも、ヤマさんの鑑賞のお役に立てたのなら、恐悦至極に存じます(笑)。
 この作品ね、解りづらいでしょう? 話すとますます解りづらくなる(笑)。直近で観て、今感想アップしましたが『空飛ぶタイヤ』で、これが解りやすくて元気が貰えて、そこそこ深みもあるという、私的には娯楽作の一級品でして。
 是枝より本木だぜ~、という気分だったんですね(笑)。ずるずる当初より自分の中で評価が落ちていきました。やっぱり是枝(笑)。私は『三度目の殺人』が、是枝では一番ですね。いつもは鼻につく思わせぶりも、良かったです。

ヤマ(管理人)
 確かに解りづらい作品でしたね(笑)。肝心の部分のお話が出来なかったのが残念とのことですが、お話しいただけるんなら伺いたいです、どの部分ですか。
 空飛ぶタイヤは、今晩にでも行こうかと思っていたのですが、ついつい出そびれてしまいました。近いうちにと思ってます。

(ケイケイさん)
 治や信代が、何故あのような生き様になったのか?ですね。前科者だし、賢いとも言えない二人に、純粋なものも感じました。私はひょっとして、知的障害のボーダーなのかなと思ったんです。特に治。「万引きしか、教えるものがなかったから」という台詞の痛ましさは、だからなのかと。
 引用のリンク先で、治も虐待にあった設定だと書いていましたね。虐待に遭った子は、脳が萎縮してしまうと聞きますね、当たらずとも遠からずかも。まぁ監督には想定外でしょうが(笑)。
 信代もバカですが、好きです。市場で「お母さん」と声をかけて貰ったときの、飛び切りの笑顔は、本当に良かった。底辺の女が醸し出す、母性とエロスのブレンド感が絶妙でした。この両方併せ持つのは、意外と難しいです。
 初枝と亜紀には、正直あんまり興味はないです。子供たちも。もちろん痛ましいのですが、今回はあんまり子供たちに肩入れできませんした。『フロリダ・プロジェクト』とは、大違いでした。何故だろう?
 私には、作為的なものが過ぎたからかもしれません。

ヤマ(管理人)
 「作為的なものが過ぎる」というのは、是枝作品の抱えるアキレス腱ですね。功を奏すると非常に含蓄のある奥行きの深さを感じさせますが、鼻についてしまうと技巧的な作り物感が強くなって、あざとい感じがしてきますね。

(ケイケイさん)
 是枝作品は、当初良くても段々自分のなかで、評価が落ちていくのは、正にお書きの理由です。作為的なものを感じ始めたら、もういけない。今回なら、祥太の万引きするときの決めポーズですね。あれであの子への興味が、ぐっと低体温になりました。
 リアルなように見えますが、貧困描きなのか、擬似家族の絆なのか、どっちつかずですね。結局上から見て描いているんですよ、この人たちを。寄り添っていない。同じ貧困を描くなら、私は猥雑な悲喜劇の焼肉ドラゴンが断然良かったです。今では安藤サクラが素晴らしかったしか、残っていません(笑)。

ヤマ(管理人)
 治については、僕は何となくそして父になるのキャラをなぞってる感があって、あまり興味を覚えませんでしたよ(たは)。やはり信代を演じた安藤サクラのもんでしょうね。サイダーハウスルールでのシャーリーズ・セロンの瑞々しい背面ヌードには敵わずとも、しっかり脂の乗った背面ヌードが逞しい生命感とともに、男と女』の拙日誌に綴ってミノさんから突っ込まれた“経産婦ならではの色香”があって大いに惹かれました。信代は経産婦ではありませんが、このあたりの感じがケイケイさんのいう「母性とエロスのブレンド感が絶妙」に繋がっているように思います。

(ケイケイさん)
 経産婦は色っぽいは、当たっていますね。高岡早紀も、母性とエロスのブレンドが絶妙だしね。

ヤマ(管理人)
 高岡早紀、好きだったのに、久しく観てません。何ていうんですか、その映画。

(ケイケイさん)
 いやいや、どの映画というのじゃなく、高岡早紀も、そんなムードの人だという意味です。
by ヤマ

ケイケイさんmixiコメント2018年06月22日 01:15 ~2018年07月06日 23:26



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