『シェイプ・オブ・ウォーター』(The Shape Of Water)
監督 ギレルモ・デル・トロ

 言葉を知らない半魚人(ダグ・ジョーンズ)に示されたカードに記されていた「GLAD TO HAVE YOU AS A FRIEND」というものを、声は失っていても数々得ていたイライザ(サリー・ホーキンス)と、パワフルな権力を持ち、釜山で出会って以来13年にも及ぶ親交を今や元帥になっているホイト(ニック・サーシー)と結んではいても、只の一人の友人もいそうになかったストリックランド(マイケル・シャノン)という対照的な人物の“半魚人を挟んだ風変わりな物語”を観ながら、デル・トモのイメージ造形のセンスに感じ入っていた。

 それにしても、本作に登場した『砂漠の女王』['60]の異教徒どころか、『マックス、モン・アムール』['86]も及ばぬ異種間恋愛を“幻想的で且つ生々しいという離れ業”で描いて、実に見事だった。デル・トロ作品は、『デビルズ・バックボーン』ヘル・ボーイパンズ・ラビリンスパシフィック・リムと観てきているが、『パンズ・ラビリンス』に次いで本作が気に入った。個性的な顔立ちのイライザに対し、ストリックランドの台詞を待つまでもなく次第に色香を感じるようになったのは、その四十路とは思えない美しい裸身もさることながら、やはり“恋する女性は美しくなる”との普遍の真理によるものなのだろう。

 最後に「そうか、イライザが声を失っていたのは、水中での鰓呼吸を得るためだったのか!」と唖然としながら、「されば、ストリックランドもあんな可愛い子供たちや奥さんがいるのだから、声を失うことで取り戻し得られるものがあるということなんだろうな。」と納得した。救急車が呼ばれていたのは、そういうことなのだろう。

 タイムカードの番取りのみならず、いつもイライザの手助けをしていたゼルダを演じているオクタヴィア・スペンサーがヘルプ ~心がつなぐストーリー~のとき以上に印象深く、素敵だった。「付いてないように見えても、やっぱり男は油断できないねぇ」などと笑って返すような受け止め方は、スリー・ビルボードのウィロビー署長の台詞を想起させるような黒人とゲイを蔑視するパイ焼きスタンドの若者などには、決して理解も想像もできないものに違いない。水には決まった形がなく最も不定形で豊かであるように、恋愛にも決まった形などはないわけだ。




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by ヤマ

'18. 3.14. TOHOシネマズ4



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