『ジャーヘッド』をめぐる往復書簡編集採録 | |
「映画通信」:ケイケイさん ヤマ(管理人) |
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No.6218 「ジャーヘッド」 ケイケイ 2006/02/19 22:08 ヤマさん、こんばんは。『ジャーヘッド』観ましたよ。 戦争が第二次大戦、ベトナム、湾岸と、常に背中合わせにある国の戦争映画だと思いました。『華氏911』で、軍隊には恵まれない層の子弟たちが志願するのだって映してましたでしょう? あの刷り込みがあるから、もうグッと来ちゃって。今年一番好きな作品です。 メンデスはデビューの『アメリカン・ビューティー』に惚れこみました。次の『ロード・トゥ・パーディション』は、作品的には格調高く作ってるなぁと思いましたが、あんまり面白くなく、コンラッド・ホールの撮影の美しさくらいしか印象に残っていません。あっ、汚いジュード・ロウは良かったです(笑)。 『ジャーへッド』は、戦争を通じてアメリカの恵まれない層の若者を描いていると感じ、『アメリカン~』並に惚れこみました。どうも私は格調高いより、品がない方が好きみたいです(笑)。 No.6219 Re:「ジャーヘッド」 間借り人ヤマ(管理人)2006/02/19 23:27 ようこそ、ケイケイさん。僕も昨日、観てきましたよ。 >戦争が、常に背中合わせにある国の戦争映画だと思いました。 そうでしたねー。でもって、あれ89年の海兵隊ですよね。なのに、ベトナム戦争がらみで描かれていた軍隊と寸分違わない。まるでアメリカの無形伝統文化財って趣ですよね~(笑)。だのに、戦場は全く異なってました…。 この作品、まだ公開されてから日が経ってないので、以下の返信は、メールのほうに切り替えますね。僕は、語り出すとネタバレとかなんとかお構いなしになるので、河岸をかえるほうが無難な気がします(笑)。日誌なら開かないことで自分で守れるでしょうが、掲示板だとそうもいかないんで。いいでしょ?(笑) ---------------------------------------------------------------------- 送信日時: 2006年2月20日 0:04:00 件名:『ジャーヘッド』 ヤマ(管理人) ケイケイさん、こんばんは。 掲示板のレスに書いたように、以下は、メールのほうで返しますね。 (ケイケイさん) はい、よろしくお願いしまーす(^^)。 ヤマ(管理人) >軍隊には恵まれない層の子弟たちが志願するのだって映してましたでしょう? >あの刷り込みがあるから、もうグッと来ちゃって。 なるほどー。僕は、それよりも軍隊って全く以てクソだなって(苦笑)。ああいうとこに「最高の生き方がある。そう信じて、僕は戦場に向かった―」っていう形で駆り立てられ、クソ教練を受けさせられる彼らに嘆息をつきました(笑)。 (ケイケイさん) なるほどー(笑)。私は『華氏911』の刷り込みのおかげで、『ジャーヘッド』も湾岸戦争を通して、アメリカの若者の姿が描きたかったのかと感じました。 ヤマ(管理人) おそるべし『華氏911』!(笑) けど、そう観るのが最も真っ当な線での受け止め方だと思うよ。スオフ自身が自分の体験を綴った原作本によるものなんだし。 (ケイケイさん) 真っ当ですかねぇ。シューテツさんちの掲示板をロムすると、私のような者は少数派のような気がするんですが(笑)。 ヤマ(管理人) 真っ当さというのは、映画の作りに対してのものであって、多数派か少数派かで決まるものじゃないと思うし、また、シューテツさんちの来訪者たちがそもそも多数派だとはあまり思えない(笑)。 (ケイケイさん) 私の場合、スオフが自分の息子だったらじゃなく、私がスオフの母ならって感じですね。この微妙な違い、わかっていただけるかしら?(笑)。 ヤマ(管理人) うん、なんとなくわかります。スオフ(ジェイク・ギレンホール)に自分の息子を重ねるのは、仮定のうえでも距離がありすぎてピンと来ないけれど、スオフの母という仮定は、自分のことなので、もう少ししやすいってことでしょ。 (ケイケイさん) スオフやトロイや、その他の“内に色々な物を抱えて軍隊に志願した息子”を持ったなら、という感じです。うちのバカ息子どもは、絶対あんな辛いところ志願しませんから。もうちょっと人生悩んで欲しいですね、母としては(笑)。 この映画、最初は『フルメタル・ジャケット』の湾岸戦争版なのかと思ってましたが、彼らなりに反抗したり、上官がリー・アーメイほどひどくなかったので、やっぱりベトナムより進歩してるん違いますか?(笑)。私は、今回ジェイミー・フォックスに惚れました。『レイ』では上手いなぁと思ったけど、惚れこみはしませんでした。レイ・チャールズより、サイクスのほうが私には魅力があったという訳ですね。 ヤマ(管理人) サイクス(ジェイミー・フォックス)は、ケイケイさんが映画日記にも書いてるように上官として味もあったけど、それまでの訓練で出会った教官たちは、やっぱひどかったよ(笑)。 (ケイケイさん) でもすぐ引っ込みましたやん(笑)。サイクスはしごきもするし、騙し討ちもするけど、新兵たちに愛情がありましたよね。 「退屈なのはお前だけか?」や「礼はいらないから、生きて帰って来い。」とか。自分にもあった色々な葛藤を、スオフたちに見ていたと思います。 ヤマ(管理人) 自分の体験からも「生き残るためには何が必要か」ってことだよね。だからこそ、僕からすれば、ああいう訓練なり耐性を必要とする戦争ってものが「誰が誰のために始めるものなのか」ってとこで、やっぱり気分が悪いな~。 (ケイケイさん) デニス・へイスバードの上官はキャリア組ですよね? トロイ(ピーター・サースガード)の「キャリアは前線に出ている自分達の気持ちなんかわからないんだ。」みたいなセリフあったでしょう? 同じ黒人でもキャリアと叩き上げで分かれるなんて、これもベトナムより進歩じゃないですかね。 ヤマ(管理人) なるほど。まぁ全く同じではないよね、確かに。伝統芸や伝統文化にしても、いくら脈々と継承してても、厳密に“寸分違わぬ”ってわけじゃないしね。 (ケイケイさん) キャリアっていうのは虐めもしない代わりに、確かに兵士達に寄り添う気持ちもないみたいでした。 ヤマ(管理人) 古今東西、えてしてそういうものだよね。このへんは、人種や出身地といった条件よりも、社会的階層というもののほうに、より規定されやすいのが人間だからねー。特に権力というものが人に及ぼす悪しき影響って、実に普遍的だと思うよ。 (ケイケイさん) それと練習中に実弾を使って、本当に新兵が死んじゃうでしょう? 練習中は実弾を使わないと思ってたから、心底びっくりしました。実話だと知ってたんで。 ヤマ(管理人) あれは凄まじかったね。でも、事故ってことで処理ってな話なんだろうな~。 (ケイケイさん) 『スターシップ・トゥルーパーズ』にもそんなシーンがありましたけど、あれはSFだし、それ以外にもすごいシーン満載だったんで、それほど印象に残りませんでしたが、今回は強烈に残っています。あっ、私はお下劣なヴァーホーヴェンが大好きだったりします(笑)。以前に「子供とヴァーホーヴェンを観る」と、某掲示板に書いて、「見上げた母だ。」と、次々レス入ったことがあります(笑)。 ヤマ(管理人) あれは、刺激的な作品だったね。いろいろ考えさせられるし。だからこそ、僕は当時自分の持ってたラジオ番組のなかで、こういう映画こそが指定映画になるべきだと思うというような話をしたことがあるよ。PG指定にして、フォローができれば、むしろ有意義な問題意識を喚起できる娯楽作だと思うんだけど、フリーハンドで接すると考え違いを引き起こしかねない刺激にも満ちている作品だったように思うなー。 (ケイケイさん) 『氷の微笑』と『ショーガール』以外は息子達と観てます。 ヤマ(管理人) イロものはダメですか、やっぱ(笑)。 -------映画の中に出てきた『地獄の黙示録』と『ディア・ハンター』------- ヤマ(管理人) もう『愛と青春の旅立ち』のような軍隊は、映画でも描かれないんでしょうね。『ジャーヘッド』のなかで出てきたのは『地獄の黙示録』と『ディア・ハンター』でしたが、個人的には『愛と青春の旅立ち』を観て揶揄し嘲笑するほうが趣味でした(あは)。 (ケイケイさん) ワハハハハ!『フルメタル・ジャケット』を上官が観てるとか。あんまり虐めると、殺されるねんぞーとかね(笑)。 ヤマ(管理人) スオフが入隊したのは、こないだ談義してもらった『スタンドアップ』の年('89年)でもあるんやけど、『フルメタル・ジャケット』は、その年の二年前の作品('87年)ということになるよね。よくぞアメリカ映画として、ああいうのを撮ったと感心したもんだった。さすがはキューブリック! でも、最後の救われなさは妙にキツかった覚えがあるな~。近頃とんと自信がなくなってるんだけど(苦笑)、確か、少女に殺されちゃうんだったよね? (ケイケイさん) 私はこの作品のヤマさんといっしょで、虐待みたいなしごきに引きまくって、あまり良い印象はない作品なんです。私もうろ覚えなんですが、マシュー・モディーンが撃った兵士が少女で、瀕死の少女兵士に懇願され、とどめを撃ったんじゃなかったですか? ヤマ(管理人) そう言われれば、そうだったような気がする。このほうがもっと救いがないから、きっとそっちだね。まぁ、こういう記憶においては、ケイケイさん信頼性高いから、きっとそっちが正解だと思うよ。 (ケイケイさん) モディーンは『メンフィス・ベル』は好きでした(また話が飛ぶ)。 ヤマ(管理人) これは未見作だなー。 それはともかく、『愛と青春の旅立ち』を引き合いにして揶揄し嘲笑する趣味よりも、『地獄の黙示録』のワルキューレに興奮し狂喜する姿を映し出すことや『鹿狩り』ビデオで妻狩りがされてるエピソードのほうが毒は痛烈ですねー(笑)。 (ケイケイさん) 『地獄の黙示録』ってすごいですよね。ワルキューレが鳴った途端、すぐわかりますもん。映像は覚えてなかったな(笑)。 ヤマ(管理人) 僕はね、四年前に『地獄の黙示録<特別完全版>』で観てたから、その落差と共に受ける音楽への特段の感銘というのは、ケイケイさんほどにはなかったけど、それにしたって、ワルキューレはもうあの作品の代名詞のような曲になってるよね。 (ケイケイさん) 『鹿狩り』のほうは、戦地にいる夫とすごい温度差ですよね。あんなの観たら、この待機の日々はいったいなんなんや?って、気が狂いますよ。 ヤマ(管理人) あれ、でも、仕返しだとか何とか言ってたから、夫の側にも前歴はあったのかもよ(笑)。それにしたって、他の大勢にも観られることを承知でってのが凄いね、あの奥さん(笑)。 (ケイケイさん) うん、言ってましたよね。でも自分の出演する裏ビデオもどきが、他の兵士に観られるのはわかってたわけでしょう? ヤマ(管理人) 再生機が個人持ちで与えられてるわけないよね(笑)。 (ケイケイさん) すごい仕返しですよね。旦那は浮気だけでもショックなのに、大恥ですもん。 ヤマ(管理人) 仕返しの気持ちが異様に強くなれば、女性ってえのは、あそこまでするものなのかねぇ(ギョ)。もちろん特異例だろうとは思うけど、アンビリーバボーってことでもないかい?(笑) (ケイケイさん) トロイの「観るな、あいつの女房だ」っていうまともな行動がすごく好感だったのに、彼の前科の詐称がわかり、暗転するでしょう? ビデオのパッケージが『ディア・ハンター』、スオフがビデオの妻に自分の彼女を重ねた気持ち、トロイの暗転との対比など、たかがビデオを観るというシーンに、よくこれだけ詰め込めたなと感心しました。 ヤマ(管理人) なるほど、なるほど。それはそうだね。やっぱ巧いんだよ。 (ケイケイさん) その辺のそつのなさが、お茶屋さんのいうところの、可愛げのなさかしら?(笑)。 ヤマ(管理人) 多分そういうことだろうと思うよ。 (ケイケイさん) お茶屋さんの「可愛げがない」、ツボで。お茶屋さん、疑問を指摘する時も愛があるしユーモアがあって、読んでいて楽しいです。 ヤマ(管理人) あのセンスの良さには、僕もいつも感心してるよ。 -------今、湾岸戦争を振り返る視点の持つ意味------- ヤマ(管理人) それにしても、半年近くかけて、最終的には59万人ですよ、59万人! 映画で順次クレジットされてた派兵数によれば(驚愕)。何にもない砂漠に送り込んで駐留させて、莫大な経費を投じて石油メジャーの利権を守りに出たわけですよね~、あのとき。そして、貧困層の若者に長らくしんどい思いをさせて恋人も妻も寝取られさせて、あげく一発の実戦射撃もする必要のない兵士が出てくるほどの大量派遣を力任せにやってたわけですよ。でもって、ほんの数日で戦勝を収め、帰還兵に内実の伴わない英雄視を煽り立て、機銃の肌触りと軍隊教練の記憶という、市民生活を送るうえでは決して必要ではなく、むしろ要らぬ痕跡というものを植え付けていたんだよねー。 (ケイケイさん) ここ大事ですよね。スオフの独白に込められてました。反戦はそんなに感じないと感想に書いたけど、全く感じてない訳ではありません。空しさやバカバカしさはもちろん感じてるんです。でも私は、あの青年達が愛しくて愛しくて。そういう少し離れた立ち位置ではなく、至近距離で観過ぎたと思います。 ヤマ(管理人) いや~、悪ガキってのはケイケイさんの泣き所なんやし、別にそれでええのんとちゃう?(笑) 悪ガキを突き放して観てたら、全然ケイケイさんらしくなくなるじゃない(あは)。 (ケイケイさん) 『パッチギ!』とか『岸和田少年愚連隊』とか(笑)。 この『ジャーヘッド』でも、レイプごっこのシーンが良かったとか、雨の中砂袋をかつがされて、「ワーハッハッハ!」とキレた笑い声が可愛かったなんて言ったら、良識映画ある映画ファンは眉をしかめますって(笑)。 ヤマ(管理人) 良識っていうのは、表に出てくるときはろくなもんじゃなく、奥なり内に窺がわれ、滲み出てくるときのみ美徳になるって代物だから、ほんとの良識派は、そんなことで眉をしかめたりはしないもんだ。むしろ、器の大きさに感心するんじゃないのかねぇ。 で、ケイケイさんのおっしゃるスオフの独白なんですが、それから触発されたものとしてね、僕はねー、この作品は「十年後のイラク本土攻撃があっさりと圧倒的な支持を得る土台作りは、このときなされていた」っていうことを訴えていた映画だったような気がするんだよね。例のスオフの手に植え付けられた要らぬ痕跡ってそういうことだったんじゃないのかなぁ。 (ケイケイさん) あぁ、そっかー。そこまでは気が回りませんでしたね。ありがとうございます。 アメリカでは、湾岸は唯一“正義のための戦争”ってことになってるんですよね? ヤマ(管理人) アメリカに限らず、戦争遂行者は、いつだって“正義のための戦争”だって言うよ(笑)。軍事介入ってそういうものだもん。映画では、この時点でも既に冷静に、「イラクに武器を与えたのは誰だ? 俺たちじゃないか!」と問い掛ける米兵がいたようすが描かれてたんだけど、それが事実だったのか、今の視点で振り返る以上、略すわけにいかないものだったのかは不明ながら、いずれにしても軍隊生活ってジャーヘッドにならなければ、とても務められるものではないよね。 (ケイケイさん) 政治的なことを口に出して、政府を批判する兵士に、トロイが「ここでは言うな。何も考えるな」って言うでしょう? 私はあそこ肯きました。そんな疑問を持ってたら、戦場ではすぐ殺されちゃうもん。 ヤマ(管理人) この「イラクに武器を与えたのは誰だ? 俺たちじゃないか!」と問い掛ける米兵がいたっていうエピソードについては、僕はスオフの実体験では、あそこまでの明言があったのか、やや疑問に感じてるんだよね。2003年に回顧録というか告白本として出版する際には、折り込んでおきたかったってことなんだろうなとか、もしかしたら、原作本にもなくて、映画化に際して加えられたのかもって思ったりしているんだけど、どうなんだろうね~。 (ケイケイさん) あー、これはヤマさん説が当たってると思う! ヤマさんすご~い! 確かにアメリカのこういう部分は、最近になってようやく明るみに出てきてますもんね。 ヤマ(管理人) 湾岸戦争当時も指摘されたりはしてたんだけど、そういう情報は、ああいう状況に身を置かなければならないような人々には最も届きにくい形でしか露出されてないとしたもんだからね~。 (ケイケイさん) 十年以上前の湾岸戦争を描いていても、今に通じる部分ってないとダメですもんね。 ヤマ(管理人) そう。だから、そういう意味での作為というのは、きっとあったように思うよ。で、そこらへんのそつのなさもまた、お茶屋さんの言う“可愛げのなさ”なんだろうね(笑)。 -------兵役のあるなしで異なる、軍隊に対して抱くリアリティ------- ヤマ(管理人) ジャーヘッドにならなければ、とても務められないと先には言ったけど、僕なんぞ根性なしだから、頭空っぽにしたって、あの軍隊文化には、とても付いていけるようには思えないんだけどね(たは)。 (ケイケイさん) 韓国では兵役を経験していないと、出世できないそうですよ。うちの息子達、兵役に当たる年でしょう? だから韓国へ旅行する時は、事前に「兵役免除」の申請をしなければならないんです。 ヤマ(管理人) そういうのもあって、よけいに、あの青年達が愛しかったんでしょうね(笑)。 (ケイケイさん) そうですね。100%軍隊に関係ないか、もしかしての部分があるとないとは大違いですから。 青学大の入試問題に、「朝鮮戦争は終結した。」って出てたんですって。受験生の指摘でわかったんですって。それくらい日本の人には関係ないことなのかも。 ヤマ(管理人) うーっむ、大学入試でか~(慨嘆)。日本人は、単一民族だってな発言を公人がするのと同様に、情けない話だね。でも、その受験生は、なかなか大したもんだねー。 (ケイケイさん) 兵役免除の手続きは現地でも出来るんですが、ややこしいらしいです。出世にも影響するんだから、もちろん志願して兵役を受けてもいいんですよ。韓国もすごいみたいです。前にテレビで観たら、お母さんが一斉に面会に来る日なんですよ。韓国人は喜怒哀楽が激しいから、演習見ながらお母さんはみんな、「アイゴ~~~!!」って会う前から号泣してんの。息子達は息子達で、お母さんと抱き合って「オンマー!!」って絶叫するんですよ。ええ年の息子が(笑)。それ観て主人が、「うちの息子らも行かせ」って言ってました(笑)。根性つくからって。 ヤマ(管理人) その代わり、スオフの手に残った感触というのも「つく」んだけど、それでも?(笑) (ケイケイさん) 実地に前線に出る可能性は薄いので、根性だけ残ってくれないかという、親の願望ですね(笑)。 ヤマ(管理人) スオフにしたって、前線に出たって実践射撃をしないでも残ってるわけでしょ。そういういいとこ取りは、やっぱ無理だと思うよ。別な形で根性を養うしかないよ(笑)。 なかなかいいとこ取りというのは、できないもので、『愛と青春の旅だち』の原題のように「士官であり且つ紳士」ってのを養成してくれるとは限らないよ?(笑) (ケイケイさん) そうですよね。陰の部分だけが残る可能性も大ですもん。 -------作品としての好悪------- ヤマ(管理人) >今年一番好きな作品です。 そーですねー、僕は好きか嫌いかと問われれば、あまり好きじゃないけど、観逃したくない作品の一つであることは、間違いないね。とりわけアメリカの軍隊文化が無形文化財並みに継承されていることがよ~く判りましたし(笑)。新世紀になっても今なおこの伝統は生きていることだろうな(とほ)。 (ケイケイさん) 観た後、すごく涙が出たんですよ。観ている時は胸に染みる場面があっても、涙は出なかったんです。例えばトロイの「撃たせてくれ!」や棺の中でも丸刈りだったところとか、スオフが脅した相手に涙ぐみながら謝るところや、サイクスがスオフに自分のことを語る場面とか。汚い場面や卑猥な場面も多かったけど、油田の炎上や馬とか。詩的で静かな場面の挿入が演出的に効いてたと思います。 で、エンディングでわーーっと。結局私は「アイゴ~~!」のお母さんたちと同じなんですよ。社会派問題作も極私的に観てしまうというお粗末です(笑)。 ヤマ(管理人) いやいや、ついあの青年たちの母親の身になって思うというのは、もしそれを男の僕らがすると、倒錯してるか、偽りの衣を装っているかってことにしかならないけど、ケイケイさんの場合は、何ら不自然じゃないよ。そうなれば、思いっきり感情移入しちゃうってのは、何のお粗末でもないでしょう? むしろ、もっともなことだという気がするよ。 (ケイケイさん) ありがとうございます。感想文読んで回ったら、皆さんピンポイントを押さえて、すごいんですよ。私なんか誰も殺さなくて、無事にみんな帰国してホッとしたのに(笑)。 ヤマ(管理人) 母たるものの心境なれば、まさしくそうでしょ、先ずは。それにケイケイさんだって映画日記に書いてあるようにホッとしてただけじゃないわけで。 (ケイケイさん) でも帰国から後の彼らの葛藤は、母親では支えてあげることは出来ないですね。彼女か奥さんか、自分自身で切り抜けるしかないです。母親の仕事ではないです。そう思うと哀しいわ(笑)。 ヤマ(管理人) 宿命ですってば(笑)。 (ケイケイさん) トロイは自殺じゃないかと書いてらした方もいたんですが、私も坊主頭のままから考えて、そうかなぁと思いました。あの時トロイとスオフが撃っていたら、彼は死ななかったでしょうか? ヤマ(管理人) ふ~ん、自殺というのは、僕は思いがけなかったけど、そういうふうに受け止めると一段と彼らの悲劇というか哀れが際立つし、彼らをそこに向かわせた社会システムへの憤りがいや増してくるよね。 で、ケイケイさんは、サム・メンデス作品としては、 >『アメリカン・ビューティー』に惚れこみました。 >『ロード・トゥ・パーディション』は、あんまり面白くなく ということなんですが、僕は両作ともに気に入ってて、二つとも日誌を綴ってるんだけれど、『ジャーヘッド』については、もうこの往復書簡で代えようかな~という感じです(笑)。 (ケイケイさん) 光栄ですけど、私はヤマさんはこの作品は絶対日誌を書くと踏んでたんですが(笑)。 ヤマ(管理人) うーん、書いてもよかったんだけど、もう往復書簡の談義でほとんど吐き出しちゃったし…(たは)。 ところで、ケイケイさんが「どうも私は格調高いより、品がないほうが好きみたいです(笑)。」と拙掲示板に書き込んでくれてたんで、僕はどっちかなぁって考えてみたんやけど、つい最近観たオルミの『ジョヴァンニ』が、その格調の高さだけはしっかと感じながら、作品的にはピンと来なかったから、僕も格調派というわけじゃあないみたいやけど、『ジャーヘッド』も好きじゃないしなぁ(笑)。 (ケイケイさん) 『ジョヴァンニ』って、ジョバンニ・リビシーが出てたのですよね? ヤマ(管理人) さー、どうだっけ?(たは) (ケイケイさん) そんな、可哀相な(笑)。彼良いですよ。母性本能はくすぐるし、純粋そうだし。 ヤマ(管理人) 母性に訴えられても僕はね~(笑)。 (ケイケイさん) 大阪はすぐ終わっちゃった。ヌーヴォだったかな? 彼とケイト・ブランシェットが出ていた『ヘブン』、格調高かったですね。この作品は良かったんですよ。とにかく美しくて崇高で。 ヤマ(管理人) おぉ~、あれは実に大した作品だったね。日誌にも綴ったけど。 (ケイケイさん) トム・ティクバ、新作作ってるらしいですよ。 ヤマ(管理人) ほほぅ。 (ケイケイさん) 今回はベテランのダスティン・ホフマンやアラン・リックマンが出てるらしいです。娯楽色が強そうですね。 ヤマ(管理人) それはまた一段と楽しみだなー。 (ケイケイさん) 結局映画なんて好きな人と同じですね。好きになったのに理由なんかないってヤツ(笑)。 ヤマ(管理人) はいはい、そのとおり!(笑)ご明察で~す。 (ケイケイさん) ではでは。 *参照テクスト:『ジャーヘッド』をめぐる掲示板編集採録 *推薦テクスト:「K UMON OS 」より 対談:今風戦争映画「ジャー・ヘッド」の深み(1)~(3) 第一章:傑作なのに違和感が生じた訳 第二章:先人キューブリック作品の先見性と作風とその比較 第三章:新しい感覚の“戦争映画”から導き出されたもの http://blog.goo.ne.jp/vzv02120yamane/e/2ed8269a3ad96c31965384cf66f70167 http://blog.goo.ne.jp/vzv02120yamane/e/da11276b27f9dceec8bb8c9f762e92ed http://blog.goo.ne.jp/vzv02120yamane/e/421fbad7ea68d0145250310cb901e842 推薦テクスト:「チネチッタ高知」より http://cc-kochi.xii.jp/jouei01/0602_1.html 推薦テクスト: 「マダム・DEEPのシネマサロン」より http://madamdeep.fc2web.com/Jarhead.htm 推薦テクスト:「映画通信」より http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=10442&pg=20060217 推薦テクスト:「マルさんmixi日記」より https://mixi.jp/view_diary.pl?id=86748963&owner_id=1280689 |
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by ヤマ(編集採録) '06. 2.18. TOHOシネマズ1 |
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