『マルホランド・ドライブ』(Mulholland Drive)をめぐって
シネマの孤独」:スーダラさん
DAY FOR NIGHT」:Fさん
Across 211th Street」:Tiさん
TAOさん
ヤマ(管理人)


  *リンチの引出しに入っているもの

(スーダラ)
 お休みをいいことに早速拝見しました。

(間借り人、ヤマ)
 ようこそ、スーダラさん。ありがとうございます。
 いいですねー、お休みですかぁ。

(スーダラ)
 ヤマさんの日誌の「仕掛けとリンチ趣味を堪能する作品なのだろう。」というのは、前半部分はリンチ・ワールドを目一杯盛り込む為の自由度の高い設定だったということですよね。

(間借り人、ヤマ)
 そうです、そうです。あの妄想って誰が観てもベティ=ダイアンのものと言うよりゃ、リンチを感じますよね(笑)。
 日誌には綴りませんでしたが、その感じって、ちょっとフェリーニに通じてるなーなんてことも思ったのでした。

(スーダラ)
 ひとつひとつのエピソードがまるでショートフィルムのような切れ味で、僕は、そのあたりは「ストレイト・ストーリー」で見せてくれた、引出しの多さに支えられた余裕のようなものを感じました。

(間借り人、ヤマ)
 なるほどね。
 確かに何か余裕というか楽しんでるというか、そんな感じありましたよねー。

(スーダラ)
 「間抜けな殺し屋」の話なんて、まるでタランティーノかガイ・リッチーみたいでしたもんね。「ああ、こういうことも出来る人なのね。」と妙にホクホクしてしまいました。

(間借り人、ヤマ)
 「間抜けな殺し屋」の話は、あれがベティとリタの物語にどう繋がるのかなんてこと、結局わからずじまいでしたよ(笑)。
 僕は「ああ、こういうことも出来る人なのね。」というのではなく、なんか『ワイルド・アット・ハート』的なもの感じたんですけど、「妙にホクホクしてしまいました」ってのは、同じですね(笑)。

(スーダラ)
 惜しむらくは、僕が「サンセット大通り」未見だということでしょうか。

(間借り人、ヤマ)
 ワイルダーの追悼やなんやで、衛星かなんかではやってませんでした?

(映画館主・F)
 ヤマさん、こんばんわ。
 ちょっとここんとこバタバタしてる僕もこれだけは見たかった。ヤマさんの「マルホ」の評(笑)。

(間借り人、ヤマ)
 あら、嬉しいこと言って下さいますね。
 1回観で綴るの、ちょいと躊躇われるような作品ですよね(笑)。

(映画館主・F)
 果たしてどのように語っているかというと、何と「メメント」の監督の前作と並べて書いてあるではないか。僕、これ見てないんだよな〜、いいや読んじゃえ。

(間借り人、ヤマ)
 あらあら、重ねて嬉しいお言葉、恐縮しちゃうなー。

(映画館主・F)
 ネタバレになってなかったのに、まず安心。

(間借り人、ヤマ)
 Fさんのように『マルホランド・ドライブ』観てて、『フォロウィング』未見って方、多そうですしね。らしくもない配慮してますね、僕(笑)。

(映画館主・F)
 そして、「サンセット大通り」ですよねぇ、やっぱり。
 僕が「サンセット〜」テレビで見たのって中学の時ですから、もう全然覚えてないんですよ、これがまた(涙)。

(間借り人、ヤマ)
 あんなふうに手の込んだ仕掛けをしているとは思いませんでしたよ。反芻しているうちに面白さが増してきちゃいましたね(笑)。

(映画館主・F)
 で、改めてちゃんとしたお話として見ようとした自分の感想のヤボさ加減を思い知らされました(涙)。
 もう、そういうのって流行ってないんですよねぇ(笑)。

(間借り人、ヤマ)
 いや、野暮なのは僕のほうじゃないんですか、むしろ(笑)。
 まぁ、それはともかく、そうですよねー、ドラマを見せるというのではなく、映像音楽表現としてのイリュージョナルな感覚なり、趣味の共有というか、連帯というか、映画を通じて、そうしたものを狙ってるような作品が増えてきましたよね。
 そこで最優先されているのは、その感覚なり趣味であって、物語じゃないんですよね。

*キーワードは、哀しみと健全さ?

(映画館主・F)
 それでも、ヤマさんが「マルホ」にそこはかとなく漂っていた「情感」に言及されていたのは、僕にとって救いでした。

(間借り人、ヤマ)
 いやぁ、あれはホントに大したものですよね。感覚や趣味の表出に留まらず、その集合体が情感などという血の通いを果たしちゃうんだから。

(映画館主・F)
 そう、何とも言えない「哀しみ」があるんですよねぇ・・・。

(間借り人、ヤマ)
 ええ、そうですよね。そこのところが並々ならぬとこなんですよ。

(Ti)
 『マルホランド・ドライブ』、僕もダイアンの心理を考えると、どうしようもなく胸が締め付けられてしまいました。

(間借り人、ヤマ)
 そうですね。哀しみに彩られた静かで深い感情がいつの間にか刷り込こまれているんですよ。僕は、それはダイアンの心情への共鳴ではなく、また作り手リンチへの感情移入でもなく、あの映画自体の持つ感情が伝播してきたのではないかと思っています。
 何年か前に本を出していただいたことがあるのですが、そのときにアキ・カウリスマキの『真夜中の虹』を引き合いに、そんなことを綴ったのですが、それと似たようなことを今回リンチの作品に感じました。

(Ti)
 『フォロウィング』は未見なのですが、凝った仕掛けが観客を驚かせるだけじゃなくて登場人物の哀しみをより深く伝えるという点でも生かされていたのは、『メメント』も同じだったように思います。

(間借り人、ヤマ)
 僕は、そこのところがリンチとノーランの大きな違いと受け取っていたので、『メメント』で彼がそこに到っているのなら、これはもうメチャメチャ楽しみですね。

(映画館主・F)
 ヤマさん、またお邪魔します。「マルホ」話で。
 そうなんです。「哀しみ」なんですよ。僕はあの映画を見て、いろいろな人の満たされない夢、空しく消え去った夢って、極まってくとこうなるみたいな、そんな感じに見ちゃったんですよね(笑)。

(間借り人、ヤマ)
 そうですねー。Fさんのこの書きぶりにも窺えるように、登場人物への感情移入というのとは、少し違ったニュアンスなんですよねぇ。

(映画館主・F)
 そうなると最近じゃ「ピアニスト」も同じに見えてしまうんです。

(間借り人、ヤマ)
 これ、すごく楽しみにしてるんですよ。
 ハネケは、『セブンス・コンチネント』を観て以来、えらく気になってます。

(映画館主・F)
 ま、それはさておき。リンチの訳わかんないスタイルはそれとして味わうべきなんでしょうが、僕は文科系としてそれは出来ない(笑)。
 だから、どうしてもそんな「意味」を見い出してしまうんですが、

(間借り人、ヤマ)
 それは僕も大いにそういう傾向ではあるんですけどね(笑)。

(映画館主・F)
 そんな「哀しみ」ってリンチが元々持っていた資質なんじゃないかと思ったりします。

(間借り人、ヤマ)
 なるほど。

(映画館主・F)
 「ストレイト・ストーリー」も、リンチ様変りじゃなくって、そんな「哀しみ」が全面表出したんじゃないかと思ったりして。

(間借り人、ヤマ)
 初期の頃から一貫していると言えば、一貫してますよね。常に何らかの影が射してますもんね。

(TAO)
 ヤマさん、Fさん、こんにちは。
 リンチとフェリーニはほんと共通点多いですね。

(間借り人、ヤマ)
 ようこそ、TAOさん。
 ね、そうですよね。ご賛同いただけて嬉しいなー。

(TAO)
 フリークス的な存在へのシンパシーとか、幼児的エロスへの執着とか。
 そして、作品のあらゆるところに、リンチ印とかフェリーニ印がついてるとこなんか。

(間借り人、ヤマ)
 そうそう、そうそう、まさにそうなんですよ。

(TAO)
 そのくせ壊れてないですね。二人とも。イメージとは裏腹に、リンチにはいつも健全さを感じます(笑)。

(間借り人、ヤマ)
 これは僕も全くの同感で、自分のリンチ観のキーワードなんですよね。

(映画館主・F)
 同じく訳わかんなさ、一見のグロさで知られるデビッド・クローネンバーグもそういう「哀しみ」のある人だと思ったりもしているんですよ。

(TAO)
 あ、私もそう思います。初期の作品はとくにそうでした。
 でも、途中から、ただの病気かもと思えてきちゃって(笑)。
 観客や評論家に媚びるところがないのは、清々しいですけどね。

(間借り人、ヤマ)
 へぇ〜、そうなんですか、哀しみの人ですか。
 これは僕には思いがけなかったですね。「壊れた」ってなイメージは昔から持ってるんですけどね。リンチのような情緒的なものは感じないんですよ、僕。

(映画館主・F)
 だから、僕は「イグジステンス」はイマイチだったんでしょうね。「哀しみ」不足だと感じて(笑)。

(間借り人、ヤマ)
 まー、ゲームの話ですからね(笑)。

(TAO)
 でも、哀しみの深さなら、アトム・エゴヤンのほうが格段に好きです。

(間借り人、ヤマ)
 『スウィート・ヒアアフター』しか観てないんですよね。『エキゾチカ』でしたっけ、ビザールがどうのっての、あれ、未だに気になり続け(笑)。

(TAO)
 ところでお二人の話をきいたら、「ピアニスト」がむしょうに見たくなりました。おおむね女性には評判悪いんでずっと迷ってたんですけど。

(間借り人、ヤマ)
 それって、オヤヂさんの御懸念には及ばないのでは?(笑) なんて、失礼しました(詫)。
 今とっても観たいと思っているのは、僕もこの『ピアニスト』と『フォロウィング』で知ったノーランの『メメント』なんです。


by ヤマ

掲示板『間借り人の部屋に、ようこそ』より



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